近鉄の4列車乗り継ぎ・5列車乗り継ぎ特急券

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近鉄では特急同士を乗り継いで移動する場合、特急料金を通しで計算するという特例があります。特急1本で移動しても、途中で何回乗り換えても、距離が一緒なら料金が変わらないという仕組みです。

 

今回はこの制度を応用した、ちょっと変わったきっぷの発券方法をご紹介しますね。

 

乗り継ぎ制度のルール

たとえば。大阪難波から吉野まで特急で移動するとします。

 

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すると大和八木・橿原神宮前の計2回、乗り換えが発生するんです。2回別の特急に乗車するということは、本来であれば乗り換えるたびに初乗り料金520円が発生します。ということは

大阪難波→大和八木 520円
・大和八木→橿原神宮前 520円 *わずか3駅間です
橿原神宮前→吉野 520円

計1,560円

 

ちょっとお高いですよね。特急はためらってしまいます。

 

しかし近鉄では乗り継ぎの特例があるおかげで、これを1枚のきっぷで発券すると、区間の特急料金を通しで計算してくれます。1本の列車で行く場合と同額になり、初乗り料金は1回しか適用されません。

 

なので、

大阪難波→大和八木
・大和八木→橿原神宮前
橿原神宮前→吉野

通しで計920円

 

なんと640円も安くなります。

 

ただし、途中駅での乗り継ぎは30分以内である必要があります。30分以上かかる場合は通しではなく、区切って料金が請求されます。

また、経路が一筆書きである必要があります。大和八木~橿原神宮前間など特急が少ない区間を通る場合は、途中で区間が途切れず、かつ乗り継ぎを30分以内に済ませる必要があるという2点に留意してうまく乗り継ぎを計算する必要がありますから、注意しましょう。

 

ちなみにこれは最短経路で無くても適用され、最短経路でない場合は、実際に乗車する距離で料金が計算されます。たとえば大和高田→鶴橋→大和西大寺→大和八木と移動する場合は、特急料金は経路通りの距離で計算されます。

また乗車時間が最短で無くても構いません。大和八木⇔名古屋間を移動する場合、直通の特急に乗れば1本で早く移動できるところ、時間があるから遅くても伊勢中川乗り換えで移動する、ということも可能です。

 

これらを踏まえたうえで次の画像を見てください。

 

 

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Yahoo!の乗換案内などで、いったん経路検索した後、わざと時間をずらして途中駅での乗り継ぎが30分以上になるように再検索(*最初から案内されるわけではない)をかけたところ、料金が920円と表示されますが、これは誤りです。

大和八木での乗換時分が30分を超えているため、この場合は八木で区切って2枚の特急券が発券され、初乗り料金も2回適用されることになりますから、注意しましょう。

 

制度の応用

この制度を応用すると、こういうこともできるんです。

 

 

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3乗り継ぎ・4列車同時発券です。南大阪線吉野線名古屋線間をうまくのりつげばこれが実行できます。

 

ちなみにこれ、八木で名古屋行き特急(09:04発→名古屋10:49着)に乗り換えれば3列車乗り継ぎで済むところを、わざわざ賢島行き特急に乗って乗り換え回数を増やしています。このように、わざと遅い列車を選択しても、実際の移動距離が変わらなければ通しで計算してもらえるのは、乗り鉄にとってはうれしいですね。

 

 

ちなみにこの特急券を買おうとしたら、たぶん駅員さんがご丁寧に

「……名古屋行かれるんでしたら、鶴橋から乗られた方が早いですけど」

 

とご提案下さるので、そこは自身の収集欲を今一度奮い立たせて

「趣味で4列車乗り継ぎの特急券が欲しいんです」

 

と言いましょう。駅員さんの顔が曇る代わりに、この特急券が手に入ります。

 

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ちなみに乗換駅を図で表すとこうなります。おそらく一番ハードルの低い4列車乗り継ぎがこのルートです。本数が少なくてよければ「奈良⇔西大寺⇔八木⇔伊勢中川⇔名古屋」なんかも可能ですね。

 

…で、このきっぷをよく見てほしいんです。

 

 

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ここ、空いてません?

もう1列車くらい入りそうじゃないですか??

 

でも残念ながら、最短経路の乗り継ぎでないと特殊補充券で発券されるので、磁気券で発券するためには最短距離の乗り継ぎでないといけないのです。最短経路で考えたときに、通常ダイヤでは4乗り継ぎ・5列車同時発券ができるような経路って存在しません。

 

ただし。年に数回だけ発券できるチャンスがあるんですよ。…いや、実際には「あった」が正しいでしょうか。

 

 

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普段は特急が設定されていない湯の山線に臨時特急が設定されると話が変わってくるんです。

 

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あべの橋から行くと、

あべの橋 ―(吉野行き特急)→ 橿原神宮前
橿原神宮前 ―(京都行き特急)→ 大和八木
大和八木 ―(賢島行き特急)→ 伊勢中川
伊勢中川 ―(名古屋行き特急)→ 四日市
四日市 ―(臨時特急)→ 湯の山温泉

正真正銘、最短経路で5列車乗り継ぎが可能なんです。

 

心を躍らせて学校帰りに立ち寄った大阪阿部野橋駅特急券売り場。指定してほしい列車のメモ書きを窓口の駅員さんに渡すと、「あ、こいつは厄介だ」と何かを察したような顔をしていったん奥に行かれたかと思うと戻って来て

 

「少々お待ちくださいね」

 

何やら電話と画面と電卓を行き来しながら待つこと約30分。いただけたきっぷがこちらでした。

 

 

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違うベクトルで珍しい切符が出てきてしまいました。特殊補充券というやつですね。

 

駅員さんの話によると、5列車乗り継ぎは機械では出せないとのこと。また、4列車乗り継ぎのきっぷで空いている1行分は、企画券などの注意書きを印字するために空いているようでした。

 

 

……1,610円払って、詰めっ詰めに文字が入った紙切れ一枚が欲しかっただけなんです。機械をちゃちゃっといじれば発券できると思ってたんです。

30分かけて発券してくださり、しかもかなり快く対応してくださった駅員さんにはちょっと申し訳なかったです。ありがとうございました。

 

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ということでまとめ。乗り継ぎの特急券を機械で出してほしければ最短経路で、かつ4列車までにすること。オススメは南大阪線吉野線名古屋線の経路です。

この条件からずれると手書き補充券での発券になるので、駅員さんの手を煩わせてしまいます。この2点にだけ注意して、楽しい近鉄特急の旅を。

 

それではー。

 

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