Twitterで軽く呟いたものが予想以上に広まってしまい、個々のツイートだけでは趣旨が伝わらないような場面が見受けられたので、長文記事にしました。
初めに断っておきますが、この記事は路線愛称の是非を問うものではありません。私だって納得できない路線愛称はあります。たとえば「万葉まほろば線」や「桃太郎線」など、その都道府県のどこを走っているか分からない路線名です。
でも、どんな路線名を付けるかなんてその会社の自由なんです。なので「そもそも東海道線にJR京都線という名前をつけたJR西日本が悪い」なんてお門違いな意見は却下します。
また併せて断っておきますが、私はJR東海のことを全体でマイナスに捉えているわけではありません。東海道新幹線という兆単位で黒字が出せるドル箱を生かし、まさに理想の鉄道会社経営を行なっていると言えます。
しかし運営が上手くても、案内面に不備があるかどうかは別問題です。
この記事は、すでにメジャーではない名称を案内放送に使い続けるJR東海の姿勢に疑問を投げかける記事です。気に入らない方はここでブラウザバックしてください。
では本題に入ります。
愛称を徹底する西日本、元々の路線名に固執する東海
東海道新幹線で新大阪駅に着くときに流れるアナウンスに注目してください。
実はJR西日本か東海、どちらから来た列車かによって、乗り換え先として案内される路線が違うんです。
JR西日本が作成した、東京方面行きの列車で流れる新大阪到着時の放送だと「JR京都線、JR神戸線」が、
JR東海が作成した、博多方面行きの列車で流れる新大阪到着時の放送だと「東海道線」が、乗り換え路線として案内されます。
JR神戸線、JR京都線といった路線名は、JR西日本が案内の際に用いる東海道線の愛称です。
正式には東京〜神戸間が東海道線、神戸〜下関間が山陽線となっているところ、JR西日本では並走する私鉄路線と関連づけて、米原(*)〜京都間を琵琶湖線、京都〜大阪間をJR京都線、大阪〜姫路間をJR神戸線と独自に名付けて案内を行っています。
*正確には、米原から北へそれて3駅先の長浜まで琵琶湖線となっています。
JR東海は、正式な路線名は変わらないので「東海道線」「山陰線」といった呼称を使い続け、JR西日本は自社が推す路線愛称を前面に出して案内しているというわけです。
全然違う路線が案内されているようにみえて、それら路線名が指し示す路線は全く同じ。これってややこしいですよね。
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では東海道新幹線から降りて、京都駅や新大阪駅の在来線ホームに入って旅客が見る案内サイン類を見てみましょう。
「JR京都線」
正式には東海道線です。
「琵琶湖線」
こちらも正式には東海道線です。
「嵯峨野(山陰)線」
正式には山陰線ですが、園部までの区間は嵯峨野線という愛称が付けられています。
これらの画像の通り、徹底的に路線愛称で案内が行われているのです。
この実情を踏まえて、私がJR西日本が定めた愛称を使用しない東海の姿勢を疑問に思う理由は、次の2つです。
a) すでに愛称が浸透しきっている
JR西日本は長いところで30年来、このJR京都線、JR神戸線、琵琶湖線といった独自の愛称を使い続けてきました。
すでに定期的な利用者には定着しきっており、「JR京都線ってどこ?」と聞けば、大体どの区間の話をしているかが伝わるはずです。
逆に「東海道線ってどこ?」と聞いた方がどこか分からないほど。それくらい旧来の東海道線や山陽線といった名称は、関西のJR線ではほぼ死語になっているのです。
*今回はあくまで案内の話なので、「聞いてどこかわかるかどうか」が重要です。自発的に「○○から△△がJR京都線」と言えるかどうかは関係ありません。書かなくてもわかるかと思いますが、論点を整理するために一応注釈を加えておきます。
これは路線愛称ゴリ押しで、正式名称の使用を一斉に取りやめたJR西日本の強行的な取組の賜物でもありますが、これについては主旨と逸れるので省きますね。
ちなみに正式名称の路線名が載っている案内がないか軽く探してみたところ、改札外にある運賃表くらいしか見当たりませんでした。
ただTLで見た情報によると、駅構内に掲出されている周辺地図にも正式な路線名が記載されているケースがあるようです。
b) 路線名を知らない人に対しても、愛称で案内するための設備(案内サイン類)が整っている
JR西日本の駅構内で撮影した案内サイン類を少し抜き出してみました。これからも分かる通り、路線愛称が至るところに採用されており、「東海道線」などといった正式名称で案内することによって、逆に誤解が生じる状態になってしまっています。
そらこの愛称が制定されてから30年以上も使用しているわけですからね。すでに案内サイン類は一巡し、愛称が書かれた案内板すら更新対象となるくらい年月が経っています。
JR東海がいくら正式名称にこだわろうとも、実際にその路線を運営しているJR西日本は「その路線名だと分かりにくい」と判断し、分かりやすい案内ができるように取り組んできました。
その期間もちょっとやそっとではなく、なんと30年余りですよ。30年かけて愛称を普及させ、いま本来の名前が通じない世代すら出てきているんです。
移行期間であり、まだ正式名称の方がメジャーだというならそれを案内に用いるのもうなづけますが、すでに定期利用者には浸透していて、かつ案内サイン類も更新が済んでいる。そんな実情に合わせないのはまさにナンセンスであると言えます。
この2点が、私が愛称を使わないJR東海の姿勢に疑問を抱いた大きな理由です。
それでも正式な路線名を用いる必要があると論じる方へ、こちらから質問があります。
すでに現地(関西)では使われていない路線名を案内する意味は?
駅の放送も、車掌さんの案内も、案内サイン類もみんな、みーんな愛称中心の表記に変わって30年経つんです。
そんな地域に位置する駅に到着するときに、わざわざ使われていない路線名を案内しなければならない(もしくはそのような呼称を用いた方が効果的である)場面って、はたしてどういうシチュエーションなのかが私にはわかりません。
東海道線と案内して、東京や名古屋と繋がっている路線だと案内する必要が……たとえば「2番のりばから出る東海道線の野洲行きに乗って」のような案内は……はたして大阪や京都に到着する時に必要でしょうか。
断じて否。路線愛称の方がメジャーであり、しっかり案内サイン類も整っているのなら、そちらに改めるのが普通ではないでしょうか。他社の方ですでに整備されている案内体系があるのなら、それに合わせて「琵琶湖線の野洲行きに乗って」と案内する方が親切であるのは当然です。
そして「JR西日本が勝手に定めた路線愛称なんだから、それに東海が従う義理はない」という意見をくださった大勢の方へ。
まず最初に書いた通り、米原以西の区間はJR東海が管理しているのではないのです。管理しているJR西日本が正式名称での案内を取りやめ、愛称として別の路線名をそう定めたのであれば、それが絶対なのです。
そして、もう多くは語りませんが、他社が勝手に決めたから自分には関係ないって小学生じゃないんですから、もっと大人な意見を持ってください。
案内放送・表示の話なんですよ。多くの人に分かりやすく伝えるための案内放送ですよ。そして案内する乗り換え路線は、自社の路線ではなく他社線ですよ。
なんで他社のテリトリーを案内するのに、他社の事情や現地の状況に合わせないんです?
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以上がいち関西人として、JR東海が頑なに路線愛称を用いないのに不信感を覚え、この記事を執筆した理由です。
まとめると、
・すでに「東海道線」「山陽線」といった正式な路線名はもはやメジャーとは言えない
・案内サイン類も30年以上かけて更新が済んでおり、駅構内でも正式名称を見かけることはない
・JR東海は、自社ではなく他社の路線名を案内しているのだから、他社の都合に合わせるのは当然
です。論点が合っている異論はどんどん受け付けます。コメントに寄せてください。多ければぜひ返信させていただきます。
追記。
ここまで書き終えて投稿したところ、次のような情報をコメントでいただきました。
「JR西日本も、博多到着時の放送で福北ゆたか線を篠栗線と、実態に合わない正式名称で案内していますよ」
おいこら、JR西日本。なんでそこだけ手を抜いたんや。そこは徹底せんかい。