名古屋駅在来線 自動放送概要(2020, 12)

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今回は名古屋駅在来線ホームの自動放送について取り上げます。

 

JR東海の在来線において最大規模の駅。詳細な案内を行う英語放送が導入されているのも、JR東海の在来線ではこの駅限定です。

 

しかし最大規模の駅だからといって、色気は皆無。発車を知らせるのは無機質なベル音で、発車メロディはありません。接近メロディももちろんなし。放送の前に流れるチャイム音は、音響装置メーカーTOA社の汎用ジングルであるなど、JR東海の保守的な考えが前面に出た放送となっています。

 

 

 

放送のタイミングと放送文のテンプレート

列車案内→停車駅→伊勢鉄道線を経由する旨の案内→号車案内

の順に案内されます。該当しない案内は適宜カットされます。

 

接近予告放送

【列車案内】次にn番線から発車します列車は、hh時mm分発、(種別・列車名)(行き先)行きです。

【停車駅】後述

この列車は、(駅名)に臨時停車します。

伊勢鉄道線経由の案内】後述

【号車案内】自由席は◯号車です。指定席は◯号車です。グリーン車は◯号車です。

この列車の前◯両は/a号車からb号車は(行き先)行き、後ろ◯両は/c号車からd号車は(途中駅)止まりです。

この列車には、車内販売がございません。予めホームでお買い求めの上、ご乗車ください。

【ライナー】この列車には、乗車券の他に、乗車整理券が必要です。

 

【列車案内】The next departure from track number n will be the hh:mm a.m. / p.m.(種別・列車名)bound for(行き先).

【停車駅】後述

This train will make an extra stop at(駅名).

伊勢鉄道線経由の案内】後述

【車内設備】Car number(s) ◯ is/are for passengers without seat reservations. Car number(s) ◯ is/are the Green Car(s).

The first ◯ cars of this train/Car numbers a through b are bound for(行き先). The last ◯ cars of this train/Car numbers c through d are bound for(行き先). 

Food service is not provided on this train. A kiosk is located on the platform.

 

*without ... ~なしの

*reservation ... 指定

*kiosk ... 売店

*provide ... 提供する。ここでは否定の受け身で「提供されない」

 

ライナー列車に対してのみ、乗車整理券が必要である旨の案内が日本語放送で流れます。

 

停車駅案内

各駅に停まる場合

この列車は、各駅に停車します。

This train will stop at all stations.

 

普通列車でも必ず停車駅案内を流します。

 

各駅に停まる区間がない優等列車の場合

この列車は、A, B, C,(終点駅)の順に停車します。

This train will stop at A, B, C, and(終点駅).

 

各駅に停まる区間がある優等種別の場合

この列車は、A, B, Cの順に停車し、Cからは各駅に停車します。

This train will stop at A, B, and C, and will stop at all stations after C.

 

愛環直通の普通

この列車は、中央本線 高蔵寺までの各駅に停車したのち高蔵寺からは愛知環状鉄道線に入ります。

This train will stop at all stations until Kozoji on the Chuo Line and enter the Aichi Kanjo-Tetsudo Line after Kozoji.

 

武豊線直通の区間快速

この列車は、金山、共和、大府の順に停車し、大府からは武豊線に入ります。

This train will stop at Kanayama, Kyowa, Obu and enter the Taketoyo Line after Obu.

 

伊勢鉄道線の案内

この電車は途中、四日市から津までの間、一部JR線とは別の、伊勢鉄道線を通ります。一部の企画乗車券で四日市から先ご乗車の際には、車内にて精算が必要です。

 

This train will travel on the Ise-Tetsudo Line between Yokkaichi and Tsu which is not a part of JR line. Therefore, some passengers traveling beyond Yokkaichi may be required to purchase extra tickets onboard.

 

伊勢鉄道線を経由する旨の案内は、特急「南紀」、快速「みえ」に付帯します。ただし、途中駅切り離しがある等の特殊な条件が重なると、この案内が削除されるようです。

 

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接近予告放送が流れる要件は2つあります。

 

・出発時刻の10分前を過ぎている(10分前から3分間隔で放送。先行列車との間隔が10分未満の場合は、発車したタイミングを基準に3分毎)

その路線の先発列車である

 

この「先発である」というのがミソで、出発まで10分を切っていても、別ののりばから出発する同一方面の列車があれば、先の電車が出発(*下記注釈)するまで接近予告放送は流れません。

 

 

特急でも、出発時刻の10分前を越え、かつ先発列車となった場合には接近予告放送が流れます。ただ特急は20分以上前に入線する列車が多く、ほとんど当てはまる列車はないため、流れればラッキーかも。

 

*注釈

先発列車が「出発した」とシステム上みなされるのは、出発放送が扱われたタイミングになります。

このため、先発列車が別ののりばから発車し、かつ先発列車の発車が当該列車の出発まで10分を切っているような場合には、先発列車の出発放送が流れると同時に接近予告放送が流れ始めます。

 

別のりば予告放送について

hh時mm分発、(種別)(行き先)行きは、n番線から発車します。このホームから階段などをご利用になり、n番線へお越しください。

 

The(種別)bound for(行き先)at hh:mm a.m./p.m. will depart from track number n. Please move to platform number n.

 

通常とは異なるホームから発車する電車に対しては、別のホームから発車することを促す放送が流れます。

 

確認できたのは次の場合です。

 

・3番線から出発する東海道線上り→2番線側で放送(4番線発の列車は不明)

・11番線から出発する関西線→12番線側で放送

 

けっこう頻繁に流れていそうに見えますよね。現在、中央新幹線開業工事で1番線が閉鎖されている都合で、東海道線上りの普通は3番のりばから発車するようになっており、チャンスは多そうにみえます。

ただ、実際に別のりば予告放送が流れる列車はかなり少ないです。流れる条件がシビアすぎます。

 

本来、ある方面に向かう電車が発車するホームを「ホームA」、当該の列車が発車するホームを「ホームB」とすると、別のりば予告放送は、ホームBで接近予告放送が流れる条件を満たした場合にのみ、ホームAで流れるようになっています。

 

先に述べた通り、接近予告放送はある方面の先発列車でないと流れないので、東海道線上りの普通が快速の退避を行う場合で、普通側が通常と異なるホームから出発するときは、別のりば予告放送は流れません。

逆に快速側が3番のりばから追い越すような場合(ラッシュ時等限定的)には、先発列車が異なるホームから出発することになるため、別のりば予告は流れます。

 

なお別のりば予告は、被る放送さえなければ、列車が在線していようが関係なく流れます。

 

接近放送

まもなくn番線に、(種別・列車名)(行き先)行きがまいります。黄色い点字ブロックまでお下がりください。

【停車駅】前述

この列車は、(駅名)に臨時停車します。

伊勢鉄道線経由の案内】前述

【号車案内】自由席は◯号車です。指定席は◯号車です。グリーン車は◯号車です。

この列車の前◯両は/a号車からb号車は(行き先)行き、後ろ◯両は/c号車からd号車は(途中駅)止まりです。

この列車には、車内販売がございません。予めホームでお買い求めの上、ご乗車ください。

【ライナー】この列車には、乗車券の他に、乗車整理券が必要です。

 

(種別・列車名)bound for(行き先)will soon arrive at track number n. Please stand behind the yellow line.

【停車駅】前述

 

場内信号?通過時に流れ始めます。岐阜方の本線から入線する場合には、到着よりもかなり早くから流れ始めますので要注意。

 

接近放送では、日本語パートは接近予告放送と同じ内容をぜんぶ流すのに対し、英語パートでは種別、行き先と停車駅しか案内しません。そのほかの内容はカットされます。

 

名古屋止まり(当駅折り返し列車)の接近放送

名古屋止まりの電車では、次のように特別な案内が流れます。

 

まもなくn番線に、当駅止まりの列車(種別・列車名)号が到着します。黄色い点字ブロックまでお下がりください。

この列車にはご乗車になれませんので、ご注意ください。

 

愛称なしの列車→ The next arrival to platform n is a train terminating at this station. Please stand behind the yellow line.

 

列車名有の場合→ The train terminating at this station,(種別・列車名), will will soon arrive at track number n. Please stand behind the yellow line. Please do not board this train.

 

*terminate ... (運転を)終える

 

まもなくn番線に、当駅止まりの列車(種別・列車名)号が到着します。黄色い点字ブロックまでお下がりください。

この列車は折り返し、(種別・列車名)(行き先)行きになります。

この列車は到着後、清掃作業を行います。作業終了までしばらくお待ちください。

 

愛称なしの列車→ A train terminating at this station will will soon arrive at track number n. Please stand behind the yellow line.

列車名有の場合→ The train terminating at this station,(種別・列車名), will will soon arrive at track number n. Please stand behind the yellow line.

This train will newly depart for(行き先)as(種別・列車名). 

This train will undergo cabin cleaning after arrival. Passengers waiting to board this train, please wait until cabin cleaning has finished.

 

*undergo ... ~を受ける、経験する

*cabin ... 客室

 

特急もしくはホームライナー到着時には、日英とも“当駅止まりの列車”のあとに列車名が案内されます。注目すべきは英語放送。列車愛称がある列車の接近時には、冠詞が"a"から"the"に変わります

 

aとtheの区別については↓の記事を参照ください。

名古屋止まりの列車は複数あれど、同じ列車名の列車は「この世に1つしかない」ため、aではなくtheが使用されて正しい場面です。さすがJR東海さん、腕がいいです。

 

yatatetsu.hatenablog.com

 

折り返しの案内も、英語放送が非常に特徴的です。「折り返し(行き先)行き(種別)となります」と直訳するわけではなく、「(行き先)へ向けて(種別)として新しく出発します」と意訳しています

折り返しのニュアンスを含んで訳すのであれば、これが模範解答かもしれません。

 

到着放送

ありません。駅員さんの肉声放送です。

 

停車中放送

n番線の列車は、hh時mm分発、(種別・列車名)(行き先)行きです。

【停車駅】後述

この列車は、(駅名)に臨時停車します。

伊勢鉄道線経由の案内】後述

【号車案内】自由席は◯号車です。指定席は◯号車です。グリーン車は◯号車です。

この列車の前◯両は/a号車からb号車は(行き先)行き、後ろ◯両は/c号車からd号車は(途中駅)止まりです。

この列車には、車内販売がございません。予めホームでお買い求めの上、ご乗車ください。

【ライナー】この列車には、乗車券の他に、乗車整理券が必要です。

 

The train at track number n is a/the(種別・列車名)bound for(行き先)departing at hh:mm a.m. / p.m.

【停車駅】後述

This train will make an extra stop at(駅名).

伊勢鉄道線経由の案内】後述

【車内設備】Car number(s) ◯ is/are for passengers without seat reservations. Car number(s) ◯ is/are the Green Car(s).

The first ◯ cars of this train/Car numbers a through b are bound for(行き先). The last ◯ cars of this train/Car numbers c through d are bound for(行き先). 

Food service is not provided on this train. A kiosk is located on the platform.

 

aとtheの区別は先ほどと同じで、列車愛称があれば"the Limited Express", "the Rapid Mie"のようにtheが、なければaで案内されます。

 

愛環直通の電車は高蔵寺で後部編成の締め切りを行うため、停車駅案内のあとに次の文言が追加されます。

 

高蔵寺より先をご利用のお客様は、前寄り4両にご乗車ください。

Passengers traveling beyond Kozoji, please board the first 4 cars of the train.

 

 

放送が流れるタイミングについて。

 

長時間停車(10分以上)する場合は、発車10分前と5分前の計2回、

10分未満の場合は、到着1分後から5分間隔で流れるようです。

 

ただし発車までの時間が短い場合には、まったく流れないなど回数が調整されます。

 

流れる付帯案内は予告放送と同様です。

 

非営業列車の場合

名古屋止まり(当駅で営業を終えて名古屋駅の留置線に入る)か、そうではないかで放送が変わります。

 

 

n番線の電車は、車庫に入ります。この列車にはご乗車できませんので、ご注意ください。

 

The train as track number n will be taking out of service. Please do not board this train.

 

*be taken out of service ... (急きょ)営業から外れる、(急きょ)運転を中止する

どちらかと言えば「急きょ運転を取りやめる」場合に適した表現であるようです。

 

 

2番線の列車は回送列車です。この列車にはご乗車できませんので、ご注意ください。

 

The train at track number 2 is an out-of-service train.

 

出発放送

(ベル音3秒) n番線から、列車が発車します。ご注意ください。

▲通常

 

(ベル音3秒) n番線から、回送列車が発車します。ご注意ください。

▲回送発車時および、当駅止まりの電車のうち本線に回送する列車の発車時

 

(ベル音3秒) n番線の電車は、車庫に入ります。この列車にはご乗車できませんので、ご注意ください。

▲当駅止まりの電車のうち、名古屋駅の留置線に引き上げる列車の発車時

 

駅員のボタン操作で流れます。

肉声で「◯番線の電車は、n時n分発、(種別)(行き先)行きです。まもなく発車します」など一言置いてから扱われるので、これを目安に録音を始めましょう。

 

駅放送の特徴

ATOS英語放送の元

名古屋駅の放送は、次のようにATOS放送とかなり似通っているところがあります。

 

1.接近放送では出発時刻を案内しない

接近予告放送や停車中放送では出発時刻を案内しますが、接近放送では触れません。

 

2.途中で切り離す車両は「〇〇止まり」

「前6両は多治見行き、後ろ2両は神領止まりです」

「この電車の前5両は籠原止まりとなります」

途中駅で切り離す車両の案内では、「〇〇止まり」という表現を使います。

 

3.英語放送の入りが同じ

接近予告放送の英語パートはどちらも "The next departure from track number n will be ..."(次のn番線からの発車は…)という文言から放送が始まります。

 

4.英語放送において、出発時刻を12時間制で案内する

たとえば22時15分発は "(departing at) twenty-two fifteen" ではなく、"(departing at) ten fifteen p.m." と案内します。

交通機関の時刻の案内は、アメリカ英語では12時間制、イギリス英語は24時間制。

 

5.英語放送において、接近予告放送と停車中放送で、出発時刻の表現が変わる

たとえば「10時30分発の普通・岡崎行き」の場合、接近予告放送では出発時刻を、"The 10:30 a.m. local train bound for Okazaki"のように冒頭に、停車中放送では"the local train bound for Okazaki departing at 10:30 a.m."のように最後に流すのですが、これもATOS英語放送が同じ文面を採用しています。

 

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英語放送については、名古屋駅の放送更新が2012年、宇都宮改良型(海浜幕張型)ATOS放送が2018年導入となっていますので、JR東日本名古屋駅の放送を参考に制作した、もしくは後から同じ翻訳会社に依頼したとみて間違いなさそうです。

 

人の手ありきの自動放送

名古屋駅の自動放送は駅員の補助ありきで設計されています。

到着放送は流れませんし、出発放送は駅員扱い。遅れの案内放送(遅れ時分の案内)、先着案内等も一切行われません。

 

というのも、名古屋駅では始発から終電まで、各のりばに立番が配属されています。

となると気になるのは肉声被りですが、基本的に肉声放送は自動放送の補助目的でしか行われず、かつ島式ホームでものりばごとに放送は分離されていますので、肉声が自動放送に被ることはほぼなく安心して録音に望めます。

 

両数に一切触れない放送

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名古屋駅の自動放送は、列車の両数には一切触れません。乗車位置についてもです。

これは、名古屋駅では乗車位置ごとに乗車位置表示機が整備されており、わざわざ放送で案内する必要がないためです。

 

また中央線や関西線の一部列車は、当駅で連結・切り離しを行いますが、これについても自動放送は一切触れません。ただし途中駅での切り離しについてはしっかり案内します。

 

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以上、名古屋駅の放送についてまとめました。なかなか興味深い放送が多くて楽しかったです。特に英語放送が充実していたのは、多言語案内ファンとしてはうれしいところでした。

 

ムーンライトながらや、季節臨時列車が多数運転されている時期に再訪したいですね。

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