南海 岸里玉出駅の駅名連呼の謎と考察

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南海岸里玉出駅南海線高野線汐見橋線の乗換駅です。

 

路線図上ではこの駅が南海線高野線との分岐駅です。南海線は南北に直進しているのに対し、高野線はこの駅で進路を大きく変えるため、両線のホームはかなり離れています。

当駅には各駅停車しか停まらず乗換には不便なため、両線を乗り継ぐ場合には天下茶屋駅で乗り換えるのがふつうであり、乗換駅としての機能はほぼ失っています。

 

そういうわけで、3路線乗り入れる都合でホーム数が少し多いという点以外は、利用者もまばらなふつうの住宅街の駅です。

 

でもこの駅にはかつて、南海電車では一点物の駅放送が存在しました。

 

岸里玉出駅のレアもの駅放送

各駅停車しか停まらないので、当駅には簡易放送しか導入されていません。その自動放送というのが、いまだに「白線」の内側へ下がるように促す旧式の放送設備だったりして、レトロな駅舎となかなかマッチしているんですね。

南海電車ではバリアフリー化にあわせて、放送を「白線」から「黄色い点字タイル」と言う文言に順次更新しています。なので、「白線」の内側に下がるように促す放送が残っている点は、貴重といえば、 貴重です。

 

ただ、「白線」と言う表現が残っている程度だけだと別に紹介する必要はありません。問題は接近放送のあと。

実は高野線ホームと汐見橋線ホームのみ、列車が到着した際に次のような放送が流れていました。

 

 

岸里玉出岸里玉出でございます。西天下茶屋・木津川・汐見橋方面はお乗り換えください。

 

岸里玉出岸里玉出でございます。南海線と、高野線りんかんサンライン」はお乗り換えください。

 

 

そう、駅名連呼。これがめっちゃレアなんです。

 

到着時の駅名連呼を積極的に流す会社は、関西私鉄だと近鉄くらいなものです。阪神・阪急の2社は一駅にたりとも駅名連呼を導入していませんし、京阪はびわ湖浜大津駅のみに留まっています。

 

そして南海電車。南海の駅では、JR西日本が管理している関西空港駅と、ここ天下茶屋駅の2駅にしか駅名連呼が導入されていません。

 

南海電車の駅放送で駅名連呼が行われるのはこの駅が唯一だったわけです。

 

 

さらに珍しさを底上げしているのが、「りんかんサンライン」という文言です。「りんかんサンライン」とは、南海電車高野線につけた路線愛称です。

 

高野線」というより短く、すでに定着した短い路線名があるのに、あえて長くした路線愛称は全くと言っていいほど広まりませんでした。ついに南海電車自体が使用を取りやめる結果に落ち着いた、いわば南海電車黒歴史の一つです。

 

こんな放送がつい最近まで、少なくとも2020年までは残っていたんですね。

 

 

残念ながら、この駅名連呼は2021年5月に確認したところ、高野線ホームでは完全に削除されていました。

 

また汐見橋線ホームでは、5月以降も流れてはいるものの次のように案内文が変更されています。

 

 

岸里玉出岸里玉出でございます。南海線高野線はお乗り換えください。

 

 

全く定着しなかった路線愛称を削除して簡潔な案内に変わりました。

 

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すでに2例中の1例が消えてしまったわけですが、この駅名連呼と乗換案内には少し謎があります。

 

汐見橋線ホームでは現在でも流れており、高野線ホームでも数か月前まで流れていました。では南海線ホームはどうかと言うと、実は駅名連呼も乗り換え案内も導入されていないのです

 

導入されたホームの謎 ―― 仲間外れの南海線

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ここで、かつて流れていた高野線汐見橋線の駅名連呼をもう一度みてみます。

 

 

岸里玉出岸里玉出でございます。西天下茶屋・木津川・汐見橋方面はお乗り換えください。

 

岸里玉出岸里玉出でございます。南海線と、高野線りんかんサンライン」はお乗り換えください。

 

 

高野線ホームの駅名連呼と乗換案内は、上りのなんば行き到着時も、下り到着時も同じ文言でした。

 

高野線ホームの乗換案内では、南海線への乗り換えが案内されていないのです。

 

 

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高野線の各駅停車から停まらない駅から乗車し、南海線の普通車に乗り換えて住ノ江や堺に行く場合は、天下茶屋乗り換えではなく当駅で乗り換えた方が早く着きます。

 

ならば当駅で南海線への乗り換え案内が行われても不思議ではありません。でも、実際問題として案内されていたのは、高野線から汐見橋線方面の案内だけでした。

 

「なぜ汐見橋方面しか案内されていなかったのか」を、では「なぜ汐見橋方面への乗換だけは案内していたのか」と考えると、謎の答えが見えてきそうです。

 

 

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これは岸里玉出駅の航空写真です。上から見るとよくわかりますが、高野線汐見橋線は一直線に結ばれていることが分かります。さらに汐見橋線の線路が「南海高野線」と表記されています。

 

この高野線という表記は、Google Mapだけではなく

 

 

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南海電車の公式ホームページでも確認できます。

運行情報のページでは、岸里玉出汐見橋間も高野線と同じ緑色で表記、さらに「高野線汐見橋方面」という表記がなされており、「汐見橋線」という表記は一切見られません。

 

実は汐見橋線」と呼ばれている岸里玉出汐見橋間の線路は、高野線の一部なのです。南海線高野線はもともと別会社がそれぞれに作った路線であり、高野線の電車は汐見橋駅から全列車が発着していました。

 

両社が合併して高野線が南海の路線になったのち、高野線の電車は、より利用者が多いなんば駅に乗り入れを開始しました。この際に、高野線汐見橋方面をつないでいた線路は完全に切り離され、岸里玉出汐見橋間は高野線の一部ながら独立した区間となったという経緯があります。

 

 

岸里玉出駅の駅名連呼は、もともと高野線であった汐見橋方面への乗換案内だけを行っていたという事実。

 

こじつけかもしれませんが、高野線が切り離された折に、高野線の本来のターミナル駅であった汐見橋方面へ乗り換える旅客向けに導入された放送が、つい最近までずっと継承されてきていたとしたら…なんともエモい放送ですよね。真偽はわかりませんけど。

 

 

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