高安駅の旧型放送


大阪線高安駅には近鉄の旧型放送をたどるうえで非常に資料として価値が高い放送が残されています。

この記事では高安駅の放送がいかに特殊であるか、そしていかにおもしろいかをまとめておきます。

■基本的な放送の情報

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かなり年季が入った旧型放送です。流れるのは接近放送と出発放送のみで、駅名連呼はありません。

上り、大阪上本町行きホームでは女声が、下りでは男声が流れます。


元来この駅では通過メロディは上下とも回数が6回で固定されていましたが、2018年の「大和朝倉行き」追加に伴う放送変更の際に、通過しきるまで流れるように変更されています。

大阪線大阪側の区間で唯一の案内復唱残存駅

近鉄の旧型放送の醍醐味といえば案内復唱!
藤井寺行き各駅停車、藤井寺行きの各駅停車」といった具合に、行き先と種別を2回流す(=復唱する)ものです。

名古屋輸送統括の管理駅では今も主流の案内方式ですが、大阪輸送統括では基本的に廃止する方向で更新が行われています。(ただし特急の接近時には案内復唱を行います)


高安駅では種別を流す列車で案内復唱を行います。ですので下りでは準急接近時にしか流れません。

区間準急設定以前は下りの各駅停車も
「国分行き各駅停車、国分行きの各駅停車」
のように案内復唱が行われていたようですが、区間準急設定と同時に「優等種別が各停になる区間では種別を割愛する」、の条件に当てはまってしまい種別を簡略する形に変更され、同時に消滅しました。


上りではもちろん
大阪上本町行き準急、上本町行きの準急がまいります」
大阪上本町」の冠称にも対応しています。


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ただし上りでも区間準急接近時は案内復唱を行いません。これは高安が「唯一の案内復唱残存駅」だからです。

案内復唱を行うには放送パーツが当然余分に必要になってきます。
流す順に

①「大阪上本町行き」 ←助詞なし
②「区間準急」    ←助詞なし
③「上本町行きの」  ←冠称省略、助詞あり
④「区間準急が」   ←助詞あり

この4パーツが必要です。

うち②と③は案内復唱がない駅では必要がないパーツであるため、あえて高安のためだけに録るのははばかられたのか収録は見送られました。


ところが今年のダイヤ変更で追加された大和朝倉行き準急では
「大和朝倉行き準急、朝倉行きの準急」
と、律儀に高安でしか使わないであろう「朝倉行きの」のパーツが用意され案内復唱が残りました。

旧放送である間はぜひとも復唱を残しておいてほしいところですね…(*´ω`*)

■両数は後から流すもの

高安駅の放送では両数を後から流す形をとっています。

「2番のりばに~まいります。
 危険ですから~。
 この電車は途中~。
 電車は6両編成でまいります」

これもかつては主流だった案内方法でした。

他の駅では現行の放送に合わせて「~が○両編成でまいります」の形に直されましたが、高安駅では最後に流した方が増解結がわかりやすいだろうと判断されたのか、両数の放送が最後に流れるままになっています。

「電車は6両編成でまいります。この駅で後ろの2両を切り離します」
たしかにこれをまとめて最後に流す方がわかりやすそうです。

■のりばと番線の違い

駅の案内放送でのりば番号を案内する際の言い回しとして「○番のりば」、「○番線」、「○番ホーム」など様々な言い方がありますが、高安駅では「○番のりば」と「○番線」を併用しています。

決してパーツを追加していく過程で不揃いになったわけではなく、停車するか通過するかで「のりば」と「番線」が変わります。停車する電車では「○番のりば」、通過する場合は「○番線」を用いています。


こちらも同様に他駅でも行われていたようですが、言い回しを変えたところで特に放送が分かりやすくなるなどの効果がないことから新型放送には引き継がれませんでした。

ただし旧型放送リスペクト熱が高すぎる名古屋輸送統括では、なぜか現行の放送でも停車と通過で「のりば」、「番線」を使い分けています。

■冠称は略す?略さない?

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高安駅の放送は2016年に収録して以来、2年ぶりの投稿となりましたが、この2年間で放送がマイナーチェンジを遂げていました。

1つ目は「基本的な放送の情報」でもご紹介した通過メロディの流れる回数の変更について。
2つ目が下り準急の停車駅案内です。

2016年当時は「国分と国分から名張までの各駅」とガッツリ冠称を割愛した停車駅案内でしたが、大和朝倉行きの追加と同時に河内国分と河内国分から名張までの各駅」に改められました。

今回の放送更新はさすが熱が入っている!…と思いきや、なぜか上り準急、区間準急の停車駅案内はいまだ「山本、八尾、布施、鶴橋に停まります」のままとなっていました。

いつになったら「河内山本」に変わるのかも見守っていきたいですね。…放送の寿命を考えると最後まで変わらない可能性もありますが(;´・ω・)

■流れる条件が厳しい先着案内

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高安駅の放送は先着案内も流すことができます。

上りでは各駅停車接近時に流れ、接近中の各駅停車か後発の区間準急、準急のどちらが布施以遠に先着するかが流れます。(高安で緩急接続を行う電車では流れません)


ただ下りがなかなか曲者で、流れる条件が少し厳しくなっています。

①終点までほかのどの列車とも緩急接続を行わない。
五位堂や河内国分で急行、快速急行と連絡する場合は先着案内が流れません。また高安駅の放送は接続案内に対応していないため、急行に連絡するかどうかも流されません。

この条件でもなかなか厳しいところですが、

②各駅停車・区間準急である。
それでいて準急以外の種別でないと流れません。

準急は河内国分まで通過運転を行うため終点まで先着する電車も多くあります。しかし準急は最速達種別とみなされているためか、たとえ終点まで先着でも先着案内は流れません。

かつ、

河内国分行きでは流れない。
当駅を出てから河内国分まで一切退避設備がない=出発した順に到着することから、河内国分行きではたとえ終点まで先着だったとしても先着案内は流れません。


ですので先着案内も狙おうとすると早朝から8時ごろにかけての普通、区間準急を狙う必要があります。

収録される際はご参考になさってください。





以上、高安駅の放送の特徴をまとめておきました。

ここまで書いておいて何ですが、高安の放送は決して変わっているのではなく「導入された当時の放送がそのまま残ってしまった結果、現在の放送と比べたときに浮いているだけ」だということをご承知くださいませ。

そして本文中で何度も記述した通り、この旧型放送をそのまま発展させた放送が名古屋輸送統括の現行放送になります。

個人的には案内復唱こそが近鉄の放送では最大の特徴だと思っていますので、大阪輸送統括側でもぜひ同じような進化をたどってほしかったところですね。


それでは~。
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