近鉄の駅放送では、自社線もしくは子会社路線と乗り換えが可能な駅では、駅名連呼のあとに続けて乗換案内が流れます。たとえばこんな具合です。
▼生駒駅の例
「生駒、生駒です。本町、大阪港、学研奈良登美ヶ丘、宝山寺、生駒山上、王寺、信貴山方面はお乗り換えです」
▼大和八木駅の例
「大和八木、八木です。お忘れ物の無いようご注意ください。橿原神宮前方面は、中央のA階段を下りて5番のりば、天理、奈良方面は、後ろのB階段を下りて6番のりばの電車にお乗り換えください」
乗り換え列車まで案内できる高性能な乗り換え案内を実装している例もあります。
▼伊勢中川駅の例
「伊勢中川、中川です。ご乗車ありがとうございました。津、四日市、名古屋方面と、松阪、伊勢市、宇治山田方面はお乗り換えください。五十鈴川行き急行は3番のりばへ、名古屋行き急行ご利用のお客様は、4番のりばへお回りください」
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今回取り上げる大和西大寺駅でも乗換案内が流れるようになっています。……が、これがとにかく流れにくいのです。
大和西大寺駅は大阪、京都、奈良から来る電車が一点に集まる乗り換えターミナル駅ですので、電車も多ければ利用者も多く、常に立番の駅員さんがホームに配置されています。
そのうえ、異なる方面へ向かう電車が同じホームから出発する、乗り間違いが起きやすい運転形態ですので、朝から晩まで肉声放送が頻繁に入ります。特に列車到着時の乗換案内はほぼ必ず行われます。
5年ほど前は「勝手に乗換案内表示を見てね」の形で肉声放送が流れない場面もよく見られました。この5年ほどでその体制が大きく変わり、今ではすっかり自動放送の出番がなくなってしまったのです。
現在では、乗換案内がほぼ確実に流れるのは5番のりばくらいしかありません。
ほかは駅員さんが見逃すか、肉声放送に消極的な方が立番に入るのをひたすら待つしかないのです。
到着放送を狙ってホームに立つと心の折れる音が比喩ではなく本当に聞こえそうなくらいに流れません。なので、はたしてどういう規則で流れているのかは謎に包まれていました。
今回はこれまでに録音した動画をすべて見直し、新放送を録音するついでに調査したほか、どうしても録れなかった放送についてはYouTubeで他の方の動画も漁って乗換案内のパターンを調べました。
↑まだ割と到着放送が流されていた時代に録音した動画。英語放送導入前の録音です。
↑男声更新後の放送の動画。たまたま自動放送に消極的な駅員さんが立番に入られていたため、到着放送も複数パターン確認できました。
方面で変わる。種別で変わる。
各系統の場合の乗換案内を一覧にしました。
奈=奈良方(奈良線下り)
京=京都線
橿=橿原線
止=西大寺止まり
奈/橿=「橿原神宮前・奈良行き特急」。廃止済。
大⇔奈 天理、大和八木、橿原神宮前、京都方面(太字は難波行き特急では省略)
大⇔橿 奈良、京都方面
大→止 奈良、天理、大和八木、橿原神宮前、京都方面
京⇔奈 天理、大和八木、橿原神宮前、生駒、大阪難波方面(太字は京都行き特急では省略)
京→奈/橿 生駒、大阪難波方面
止←奈 案内なし。駅名連呼のみ
京⇔橿 奈良、学園前、生駒、大阪難波方面
止←橿 奈良、京都、生駒、大阪難波方面
奈良線下り:「奈良」方面
京都線上り:「京都」方面
方面として案内される駅名は上記の8つ。列車の経路(どの方面から来てどの路線へ抜けていくか)と照らし合わせて対応する駅名が乗換案内として放送されるわけですが、案内される駅名は最大5つという制限があるようです。
たとえば奈良から来て京都へ行く列車の場合や、京都から来て奈良へ抜けていく場合を見てみましょう。
乗換先として当てはまるのは橿原線下りと奈良線上りです。すべての駅名を流すのであれば「天理・大和八木・橿原神宮前・学園前・生駒・大阪難波方面」が乗換と案内されるはずですね。でも実際に流れる案内は「天理、大和八木、橿原神宮前、生駒、大阪難波方面」で、「学園前」は案内されません。
このように、列車の経路(どの方面から来てどちらへ抜けていくか)によって「方面」として案内される駅名が変わります。
また同じ経路でも種別によって案内が変わるケースがあります。同じ奈良発京都行きでも、普通・急行なら「天理、大和八木、橿原神宮前、生駒、大阪難波方面」と案内が流れるのに対し、特急では「大和八木、橿原神宮前方面」しか乗り換え先として案内されません。
この記事では以上の2点に焦点を当てて、西大寺駅の乗換案内を詳しく見ていこうと思います。
経路により変わる
まず経路により変わる点。奈良線上りが該当します。
奈良線上りが乗換先として該当する場合、経路により案内される駅名が変わります。奈良線上りが乗換先に該当する経路は
・京都線からの当駅止まり
・橿原線からの当駅止まり
・奈良駅からの当駅止まり
この5つです。ただし奈良駅からの西大寺止まりでは乗換案内が流れませんので、実質4パターンですね。
それぞれのパターンで流れる奈良線上りの「方面」駅名を見てみましょう。
学園前、生駒、大阪難波
生駒、大阪難波
京都線からの当駅止まり
橿原線からの当駅止まり
生駒、大阪難波
橿原神宮前から来て京都へ抜けていく列車、もしくはその逆の経路に限り「学園前」が案内されます。
あくまで南北に“通り抜ける”時だけなので、橿原神宮前や天理から来た当駅止まりの列車、京都から来た当駅止まりの列車の到着時には「学園前」は放送されません。
またかつて存在した京都発橿原神宮前・奈良行きの併結特急では、確かに橿原神宮前行きは北から南へ抜けるものの京奈のルートが含まれるため、学園前は乗換案内から省かれます。
種別により変わる
次に列車種別により変わる例。奈良発の特急が該当します。
通常、奈良発の難波行きでは「天理、大和八木、橿原神宮前、京都方面」、京都行きでは「天理、大和八木、橿原神宮前、生駒、大阪難波方面」が乗換と案内されますが、特急の場合は事情が異なります。
難波行き特急では「大和八木、橿原神宮前、京都方面」、京都行き特急は「大和八木、橿原神宮前方面」が乗換という案内になります。
奈良から特急に乗車して大和西大寺で一般種別に乗り換えるというのは考えづらい話です。なので、大和西大寺からだと通常ダイヤでは一般種別でしか辿り着けない天理駅は乗換案内から省かれています。
京都行き特急では奈良線上り方面への案内が行われませんが、難波行き特急では京都方面への乗り換え案内が行われます。
これは奈良発の難波行き特急が、橿原神宮前からの京都行き特急と接続を行う例が存在するためです。逆に難波行き特急はすべて奈良駅始発ですから、京都行き特急から難波行き特急へ乗り継ぐことはできないため、京都行き特急の到着時には難波行きへの連絡案内は行われません。
どちらも特急の乗り継ぎを想定した案内となっているというわけですね。
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閑話休題。
今回、乗換案内を確かめるにあたり一番苦労したのが、奈良線⇔橿原線の経路で運転される列車の放送でした。
なんせ定期の列車は平日朝3本、橿原線→奈良線へ乗り入れる普通1本・準急2本(ともに西大寺行きが化ける)しか存在しません。
しかも準急2本は到着後、連結を行うため乗換案内が流れません。つまり実質1本に賭けるしかないのです。
朝ラッシュで混み合う大和西大寺駅で乗換案内が流れるかどうかは本当に運次第なので、なかなか苦労しました。
今後内容が変わって、また調査しなければいけないなんてことが無いよう祈っています。