五十鈴川行き急行の聴き比べ

先日の記事で大阪側と名古屋側のタブレットで内容が異なることを記事にしました。多くの反響をいただいており嬉しい限りです。




そこで今回はその続編として、「五十鈴川行き急行」を名古屋発と大阪上本町発でそれぞれ収録しましたので、実際に二者が同じ区間を走る伊勢中川から五十鈴川間の放送を聞き比べ両者の違いをじっくり見ていきたいと思います。


この区間では大阪上本町発の急行では大阪側のROMを用い、名古屋発の急行では名古屋側のROMを用いるといった風に、同じ電車でも異なる内容が重複している非常に珍しい区間となっています。

それゆえ同じ声優を用いていながら内容は異なるところばかり。両者の差異とその違いが生まれた原因に注目しながらご紹介してまいります。

まずは動画をご覧ください。


大阪上本町発の五十鈴川行きはこちら。



そして名古屋発、五十鈴川行きはこちらです。

さっそくことなる中川発車後

なんと内容の差異は伊勢中川発車後、一発目の放送からみられます。

名古屋側ROMでは行き先と種別の案内がありますが、大阪側のROMでは何も言わず「次は松坂」から始まるようになっています。

大阪側と名古屋側の視点の違いを早くも表していますね。


名古屋側の視点でみると三重ー名古屋間の輸送は要ですから、伊勢中川を越えてもなお輸送の中心となる区間です。ですから主要駅発車後と同じく当然行き先と種別を流すべきと判断したのでしょう。

ですが大阪側から見れば、主要区間である大和八木や名張は抜け、峠も越え、伊勢中川で名古屋方面へ向かう客もおろした先のいわばシメの区間です。あとは末端区間ですから、流す必要はないとみなすのもうなづけます。


この違いは松坂到着時の放送にも色濃く出ており、名古屋側ROMでは「ご乗車ありがとうございました」から始まる主要駅到着時のパターンで流しますが、大阪側のROMでは他の途中駅と同じく駅名から流し始めますし、忘れ物の啓発だったりなどはありません。

案内に熱が入っている車掌さんでしたら、このあたりも工夫されてそうですね。

伊勢市到着時

伊勢市到着時は両者とも主要駅到着時のものではなく、一般的な途中駅到着時の放送に伊勢神宮の降車案内を付けて流しています。

しかし細部では異なり、名古屋側のROMでは次の停車駅がしっかり流されていますが、大阪側のROMでは「ここから各駅に停まると察せ」とばかりに停車駅がしれっと消えています。

大阪側のROM特有の悪い癖として名高いのがこれ。各駅に停まりはじめる駅から何の予告もなく、停車駅を割愛してしまうのです。
奈良線の優等種別でも鶴橋から先で実施されていたり、京都線の急行でも東寺到着時には割愛したり、けっこうな頻度で行われています。

宇治山田到着時

宇治山田は伊勢市から見て目と鼻の先にあります。カーブさえなければ確実に目視できる距離です。

このため大阪側のROMでは放送を一回にまとめ、「まもなく」から始まるもののみで済ませます。

するとどうでしょう、伊勢市到着時には消されていた停車駅案内がここでは復活するのです。

「宇治山田の次は五十鈴川です」
この停車駅案内こそが謎の多いヤツでなかなかの困り者。


まず案内文から観察しますと、先日の記事の通り大阪側と名古屋側では内容が少し異なり、名古屋側ROMでは終着駅のみ「〇〇の次は〇〇に停まります」ではなく「〇〇です」と流すようになっています。

この停車駅案内も名古屋側ROMのルールに従って「〇〇です」と流していますので、まるで名古屋側ROMを使用しているように聞こえます…が。


大阪側と名古屋側では停車駅を流す順序も異なり、名古屋側ROMでは次々停車駅を開扉方向のあとに(放送の一番最後に)流しますが、大阪側ROMでは開扉方向よりも前に流すようになっています。

こちらは開扉方向よりも前に流している、つまりきちんと大阪側のROMで構成されていますから、そっくりそのままコピーしたわけでもないのです。

案外コピペミスだったりするのでしょうか。両者の間の子のような不思議な停車駅案内が最後の最後に出てきました。こればっかりは謎です。


さて対する名古屋側ROMですが、こちらは「まもなく」から始まる放送がなく2つに分けられているようで、2回目の放送のみを流して対応しています。
特にこの区間は他と比べても群を抜いて距離が短いですから、大阪側のROMを見習って欲しいところです。

また名古屋側ROMでは宇治山田駅も主要駅として扱っており、「ご乗車ありがとうございました」から始まる放送が用意されています。
大阪側と異なりこの区間も主要区間としているのが見て取れると思います。


五十鈴川到着時の放送は差異がありませんので、ご紹介は割愛させていただきます。

同じ区間で見てみますと、このように大阪側と名古屋側のROMでは、その作られ方に大きな違いがあることがおわかりいただけますでしょうか。

最後に大きく異なる案内の違い、大阪側のROMが極端に案内に消極的である点について、まとめてみたいと思います。

大阪側ROMのみ案内が消極的になっている原因と考えられるのが、本文中でも触れた通りこの区間を重要視していないためでしょう。

大阪側から見たときやはりこの区間は末端とみられること、輸送の中心となる区間ではないこと、またほとんどの大阪側の線区(南大阪線を除く)では、そもそも本当に限られた主要駅発車後しか詳細な案内を流さないことから、案内が不十分になっていると考えられます。


ところでそもそもの謎といえば、なぜ同じROMを使いまわさなかったのか、別々の部署が別個に作成したのかというところですね。

もとから同じものを使用していれば製作も楽なはず。なぜあえて別に作成したのか、これが見当もつかないのです。


個人的にありうると思った原因は、ずばり両者のフォーマットの違いです。

まず各音声パーツについてですが、大阪側のROMは今年初めのROM更新時に単語間の間隔が狭められ、より短時間で流せるように改良がなされました。

これに対し名古屋側のROMでは依然間隔は空いたままで、もし同じように構成してしまうと、同じ電車でも途中駅から放送の仕様が突然変わって聞きづらくなることが考えられます。


また放送の順序も大きく関係して来そうです。特に通過駅のある電車では、次々停車駅を流す順番が大きく変わります。

これらから1本の電車でそれぞれ一貫性を持たせるため、あえて別個にROMを作成したとも考えられます。


しかしもしこれが理由だとすると、結果的に同じ「五十鈴川行き急行」でも異なる放送が流れることがあるわけですから本末転倒なお話です。

とすると何か他の理由がありそうですが…はたして。



このような形態がとられている区間は非常に珍しく、これ以外の区間でいえば名張ー伊勢中川間くらいしかありません。
*明星発の名張行き普通電車、名張発の名古屋行き急行は名古屋側の乗務員が乗務するため、名古屋側のROMを用います。

同じ区間でも流し方が違うとずいぶんと印象が変わるものです。ぜひみなさまも聞き比べをしつつ、実際にどう変わるか乗車してみてくださいませ…(*´∀`*)


それではー!
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