駅でアナウンスを聞いていると「すごく非効率的だな」と思うアナウンスが流れてくることってありませんか? たとえばこういうのです。
停車駅は、新今宮・大正・弁天町・西九条・福島・大阪から各駅です。
This train will be stopping at Shin-Imamiya, Taisho, Bentencho, Nishikujo, Fukushima and every statin from Osaka.
この停車駅案内に注目したいと思います。実際に路線図を見てみましょう。
大阪環状線外回りの駅を天王寺基準に並べたものです。先ほどの停車駅案内の通りに該当する停車駅に色を塗ってみましょう。
このようになっています。「…西九条・福島・大阪から各駅」と流していますが、実際には福島から各駅に停まっています。
もういっちょ見てみましょう。
途中の停車駅は、大阪上本町・日本橋・大阪難波、大阪難波から西九条までの各駅と、尼崎・武庫川・甲子園・西宮・芦屋・魚崎です。
>大阪上本町・日本橋・大阪難波、大阪難波から西九条までの各駅
この部分、路線図が頭に浮かぶ方なら違和感がありますよね。知らない方も多いでしょうから、念のため路線図で確認してみましょう。
近鉄奈良線から阪神なんば線にかけての駅名を抜き出してみました。これも同様に、停車駅を案内通りに色塗りしてみましょう。
「途中の停車駅は、大阪上本町・日本橋・大阪難波、大阪難波から西九条までの各駅」
と言っておきながら、大阪難波までの区間に通過駅はありません。つまり「西九条までの各駅と、尼崎・武庫川…」と流せばもっと簡単に、短時間で放送案内が流せます。
両者とも非効率で冗長な停車駅案内である。……でまとめることなかれ。実はちゃんと意味があってこのようなアナウンスを行っています。
主要駅はわざわざ読み上げちゃいたい
両社とも共通しているのは、もし「どこそこからの各駅」で一括してしまうと、その路線で一番主要なターミナル駅までも「各駅」に含んでしまうという点です。
大阪環状線で最も利用者が多い駅は疑う余地なく大阪駅です。何なら大阪駅は西日本で最も利用者が多い駅ですから、わざわざ「福島、大阪から各駅」と一呼吸おいてでもあえて案内する価値があるのです。
同様に、近鉄奈良線(&難波線)で最も利用客が多いのは鶴橋駅ですが、次いで大阪難波駅、大阪上本町駅、日本橋駅の順に利用者が多くなっています。ちょうど停車駅案内でわざわざ読み上げられていた3駅ですね。
土地勘があれば「西九条は難波の向こうやねんから言わんでもわかるやろ」となってしまいがちですが、利用者は全員鉄道ファンではありません。「西九条までの各駅」と案内してしまった場合、大阪難波や大阪上本町に停まるかどうかが分かりづらくなってしまいます。そこでわざわざ停車駅を読み上げているのです。
行き過ぎた停車駅案内例
ここで気を付けなければいけないのは、途中の主要駅を案内するためにどこまでもすべての駅名を読み上げる形式にしていると逆効果になってしまうという点です。こちらをお聞きください。
5番のりばの電車は五十鈴川行き急行です。途中の停車駅は、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、大和朝倉、長谷寺、榛原、、、
室生口大野、
三本松、
赤目口、
名張、
桔梗が丘、
美旗、
伊賀神戸、
青山町、
伊賀上津、
西青山、
東青山、
榊原温泉口、
伊勢中川、
松阪、
伊勢市、
宇治山田です。
すっごくなが~~い停車駅案内ですよね。でもこれ、途中の桜井~榊原温泉口までの16駅間は各駅停車なんです。
実は榛原、名張、桔梗が丘周辺はニュータウンとして栄えた背景があり、これらの主要駅では利用客が集中しています。なのでこれら主要駅を案内するために全駅読み上げる形式を採用したようなのですが、結果的に停車駅案内だけで20秒も要してしまい、放送全体の内容が分かりづらくなってしまいます。
さすがに現在はこの方針が見直されて、「桜井から榊原温泉口までの各駅」と省略する形になりました。