今回は似たもの同士、でも全然違う放送文を採用したOsaka Metroと北大阪急行の英語放送を比較したいと思います。
8月1日に実施された放送更新でOsaka Metroの英語放送は著しい変化を遂げましたが、北大阪急行も負けじと劣らず英語放送を更新しています。
両者の英語放送で大きく異なるところは7点。
まずは両者の放送の違いをざらーっと並べてみました。各放送文とも2行で表記し、下段には忠実に訳しつつ、ある程度脚色を入れた意訳文をいれてみました。
どうぞご覧ください。
①「発車までしばらくお待ちください」
We will be departing soon.
▶すぐに発車します
We will be departing shortly.
▶まもなく発車します
②到着放送
両者とも駅名を2回読み上げる点は変わりませんが、それ以外は全く別の放送文と言っても過言ではありません。
*江坂駅では北大阪急行側が旧来通りの放送文(”Esaka station. Station number: M-10.”)を用いているため、せっかく両者がそろう駅ですが使えませんでした。
*1回目の駅名呼称は和訳では省きました。
Shin-Osaka. We will be stopping at Shin-Osaka, station number: M-13.
▶新大阪[M-13]に停車する予定です
Momoyamadai. Now stopping at Momoyamadai, station number: M-9.
▶ただいま桃山台[M-9]に停車中です
③乗換案内
Passengers can transfer here to the ○○ line.
▶(お客様は)○○線に乗り換えられます
Please change here for the Osaka Monorail.
▶この駅で大阪モノレールに乗り換えてください
(*放送文変更なし)
④開扉方向案内
The doors on the left/right side will open. Please be careful of the train doors.
▶左/右側の(にある)ドアが開きます。電車のドアにお気を付けください
The left/right-side doors will open.
▶左/右側のドアが開きます
⑤途中駅止まりでの案内(1)――「これより先にはまいりません」
*この項目は大した差はありません。
Osaka Metroは全路線で使いまわせるよう言葉(終着駅名)を濁した放送しか使用していません。一方の北大阪急行では途中駅止めが江坂止まりしか存在しないため、thanのあとに駅名を流します。
This train go no farther than this station.
▶この電車は当駅より先には行きません
This train go no farther than Esaka.
▶この電車は江坂より先には行きません
⑥途中駅止まりでの案内(2)――「○○方面へお越しの方は」
For passengers toward”s” Senri-chuo, please wait at the platform.
▶千里中央方面へお越しのお客様へ:そのホームでお待ちください
If you are traveling toward Nakamozu, please wait at the opposite side of the platform.
▶なかもず方面へ行かれる場合は、このホームの反対側でお待ちください
なおtowardとtowardsに意味の違いはありません。
⑦終点での案内
Nakamozu. We will be stopping at Nakamozu, station number: M-30, our final stop.
▶なかもず[M-30]、当列車の終着駅に停車する予定です
This is the final stop, Senri-chuo, station number: M-8.
▶ここは終着、千里中央[M-8]です。
(*放送文変更なし)
ちなみに北大阪急行では江坂止まりでも同様に、旧来通りの放送文を使用しています。
■丁寧or長ったらしい?/簡潔or省略しすぎ?
以上の放送文を見られたうえで、以下の2つの評価文をお読みください。
1)Osaka Metroは主語、動詞をきちんと明示して非常に丁寧な案内を心掛けています。対して北大阪急行は非常に短く言い切ってしまいがちです。たとえば到着放送などは「いま桃山台に停まってるで」とかなり投げやりともとれる表現です。
2)Osaka Metroは文法を優先しすぎており、まとまりがない放送文を流しがちです。特に乗換案内は都市部の地下鉄の放送と思えません。対して北大阪急行は多少の文法ミスがあったとしても意味が通じればよしとし、非常に簡潔な放送文に仕上げています。
おそらく和訳を中心に見られた方は1の評価を、英文をささーっと飛ばし読みされた方は2の評価を支持されるのではないでしょうか。Osaka Metroと北大阪急行では、どちらかに偏ればもう片方を徹底的に叩き潰せるくらいに放送の色が異なります。
Osaka Metroの英語放送は英語に多少長けている方ならわかる通り、とにかく長く、“くどい”ともとれる放送文を流しています。北大阪急行は逆に不安すら覚えるくらいの短さですね。
ここで考えたいのが英語放送の対象です。
英語放送はそれ以外の言語(中・韓など)を流していない限り、放送の対象は「日本語を母語としないすべての利用客向け」の放送となります。ですので放送はアメリカ英語・イギリス英語などの“方言”に偏ることがなく、万人に通じる世界共通語としての通じる英語が求められます。
日本人のように英語を日常的に使わない環境の人を含めた万人に通じる放送を目指す場合に、はたして主語・動詞を明示して長さを許容すべきか、それでも短さを優先して多少文法を無視してでも簡潔にすべきなのかは悩みどころです。
個人的には多少の文法ミスを無視してでも、かつ主語・動詞の省略も行ってでも簡潔な放送の方が好まれると思うのですが、皆様のご意見はいかがでしょうか。
以上、Osaka Metroと北大阪急行の放送文を比較してみました。
それでは~。