JR西日本を筆頭に大晦日の終夜運転がどんどん小規模になっていく中、近鉄は毎年ほぼ全線で終夜運転を実施しています。
大阪線では対伊勢神宮の輸送が行われます。混雑のピークには8両の汎用型特急や6両固定の伊勢志摩ライナー、アーバンライナーなどが惜しみなく充当されるものの、比較的利用が乏しい時間帯にそういった列車を走らせて空気輸送をする必要はありません。
そこで設定されるのがこの京都と大阪難波行きの併結特急です。両数も乗務員も二本仕立てるより少なくすみますから、合理的と言えば合理的な運転といえます。
今回はこの列車と各駅の放送について熱く語りたいと思います。
京都と大阪難波行き特急の歴史
終夜運転時のみの設定、しかも2本しか運転されない同列車ですが、駅放送は各駅ともキチンと対応しています。
それもそのはずでこの列車は2012年まで定期列車として毎日運転されていました。
客がまばらな日中に毎時1本だけ、伊勢方面からの京都行き特急を難波行きにくっつけていたのが始まりだったのです。
伊勢志摩から京都へ向かう旅客が少ないことは想像に容易いと思います。そういうわけで、早々に2012年のダイヤ改正限りでこの併結特急は通常ダイヤから消えました。
ところが終夜運転では先述の通り、深夜帯の利用が少ない時間帯に効率よく列車を回す目的で2012年以降も運転が継続され続けています。
こうして通常ダイヤからは消えたのに臨時列車として毎年復活する列車となったわけです。
年2回のチャンス
鉄道ファンにとって厄介なのはここからです。
この列車は終夜運転で2本しか運転されません。つまり年に2回しか録音できるチャンスがないわけです。
遅延時の突発的な行き先変更などと違って毎年確実に録れる列車であるだけマシですけど、それでもあまりに機会が少なすぎます。
ゆえに構想から実際に動画になるまで4年も掛かってしまいました。
特に厄介だったのが切り離しを行う大和八木駅です。定期ダイヤに存在していた頃は、毎時1本必ず切り離しが行われていたことから、駅員さんはほぼ見届けるだけだったのですが、
終夜運転のみの運転となった今、この列車はふだん行われない切り離しがあるイレギュラーな列車となったわけです。しかも利用が多い難波行きはホームの後ろ側に止まる引っ掛け付きです。
故に駅員さんの肉声放送がほぼ毎年被せられ、まともに録れたものではありません。
さらに昨年は旅客案内装置が日付を跨げず(?!)誤作動を起こしたせいで不戦敗になるという運のなさが影響して4年目の今年。
半ば諦めで挑戦したところ、なんとか英語放送まで録音することができました。自動放送を考慮してくださった駅員さん、ありがとうございましたm(_ _)m
名古屋側と大阪側で異なる案内
近鉄といえば、東青山駅を境に設備を管理している部署が変わるため、駅放送もまったく異なることで有名です。
この併結特急の案内も名古屋側と大阪側で大きく異なります。
名古屋側
まもなく4番のりばに、02:46発 京都と大阪難波行き特急、京都と難波行きの特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。
前の方が京都行き、後ろの方が大阪難波行きで、停車駅は松阪・伊勢中川・榊原温泉口・伊賀神戸・名張・榛原・大和八木、大和八木から先、京都行きは大和西大寺・丹波橋、大阪難波行きは大和高田・鶴橋・大阪上本町です。
特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券の指定番号の席にお座りください。
電車の番号は後ろの方から1号車・2号車、A号車・B号車の順です。
The Limited Express bound for Kyoto and Osaka-Namba is arriving at track 4.
To board a limited express train, a limited express ticket is needed in addition to a regular ticket.
名古屋側の放送の特徴は
・「前の方」「後ろの方」としたざっくりな行き先案内。
・大和八木までの停車駅はまとめて流し、「大和八木から先は」で個別に流す分かりづらい停車駅案内。
・号車番号もかなりざっくり。
この3点が挙げられるでしょう。あまり詳しすぎないのが特徴です。
大阪側
大阪側は名古屋側と事情が大きく異なり、
・旧型放送なのに英語放送が追加された伊賀神戸駅
・英語放送を導入するために大阪線新型放送に更新された名張駅
・旧放送なのに号車案内ができる榛原駅
・大阪線新型放送だが切り離しが行われる駅なので特殊な放送が流れる大和八木駅
併結特急が停車する4駅中4駅とも全然違う放送が流れるという統一感の無さ。これですよ。これが近鉄です。
特に英語放送を導入するために放送更新された駅(名張)が存在するにもかかわらず、旧型放送のまま英語放送が突っ込まれた伊賀神戸駅はもう解せないとかいう次元ではありません。迷走しています。…それはさておき。
この記事では代表して伊賀神戸駅と大和八木駅の放送を取り上げます。
2番のりばに、京都・難波行き特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。
京都行きは前の4両で、途中の停車駅は名張・榛原・大和八木・大和西大寺・高の原・丹波橋です。難波行きは後ろの4両で、途中の停車駅は名張・榛原・大和八木・大和高田・鶴橋・大阪上本町です。
特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券の指定番号の席にお座りください。
電車の番号は後ろの方から1号車・2号車、A号車・B号車の順です。
The Limited Express bound for Kyoto and Osaka-Namba is arriving at track 2.
To board a limited express train, a limited express ticket is needed in addition to a regular ticket.
大阪線 旧型放送の特徴は
・何両がどこ行きかをしっかり放送。
・停車駅も行き先別にしっかり放送。
・号車番号はそもそも流さない。(榛原駅除く?)
この3点が挙げられます。
補足。
この併結特急は毎年2本だけ運転されるわけですが、どういうわけか1本目では「京都行きは前の4両で、途中の停車駅は」の「前の4両で」が欠落します。
ちなみに今年で少なくとも3年目になります。来年もきっとこのままなんでしょうね。
*榛原駅が果たして「A号車、B号車」に対応しているかは不明です。
そのほかの列車では確かに号車番号を流しているのは確認していますが、併結特急に関しては、もしかすると榛原駅も号車番号は流していないかも知れません。
どなたか榛原駅で録音された方がいらっしゃいましたらご一報いただけると助かります。
3番のりばに、京都・大阪難波行き特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。
この駅で京都行き特急と、大阪難波行き特急に切り離します。
京都行きは前の4両で、途中の停車駅は大和西大寺・高の原・丹波橋です。
大阪難波行き特急は後ろの4両で、途中の停車駅は大和高田・鶴橋・大阪上本町です。
特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券の指定番号の席にお座りください。
京都行き特急は、後ろの車両からA号車・B号車の順で、大阪難波行き特急は、後ろの車両から1号車・2号車の順です。
The Limited Express bound for Kyoto and Osaka-Namba is arriving at track 3.
To board a limited express train, a limited express ticket is needed in addition to a regular ticket.
全体を通して理解しやすい放送文ですね。何両がどこ行きかをしっかり放送する点、停車駅も行き先別にしっかり放送する点は引き継がれています。
号車番号の流し方も名古屋側の放送と違って非常に丁寧です。
ちなみに切り離しの放送は旧放送の時代から大きく変わっていないようでした。
3番のりばに、京都・難波行き特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。
この駅で京都行き特急と、難波行き特急に切り離します。
京都行きは前の4両で、途中の停車駅は大和西大寺・高の原・丹波橋でございます。
難波行き特急は後ろの4両で、途中の停車駅は大和高田・鶴橋・大阪上本町でございます。
座席は全て指定となっております。特急券の指定番号の席にお座りください。
京都行き特急は、後ろの車からA号車・B号車の順で、難波行き特急は、後ろの車から1号車・2号車の順でございます。
*灰色部分は動画で確認できない個所。
大和八木然り、同時期に更新された橿原神宮前然り、放送設備はそのまま、音源だけ入れ替えた駅では旧放送と案内の様式を似せてあるようですね。
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毎年コツコツ集めてきた集大成をお楽しみいただけましたでしょうか。
それでは近いうちに投稿できるであろう、次の集大成でお会いしましょう。