現在主流の駅や車内の自動放送は、事前に収録しておいた肉声音声を組み合わせて一つの案内を生成しています。SUNTRAS型放送も同様です。
詳細な案内を常に高水準で行うためには、万が一に起こりうる事態を予測して、それを案内するための文言を用意しておくことが必要となります。
そのため念には念を入れて用意しておいたけどまあ使われないだろう的な放送が山のように存在するわけです。
駅の端末で追加しないと流れない付帯案内の大半がこれに当てはまります。
今回はSUNTRAS型放送のめったに聞けない音声パーツのうち、
1.駅で設定しないと流れないレアもの音声パーツ
2.イレギュラーな運転時しか流れない特殊な案内放送
3.特定の駅でしか聴けない案内
など、行き先変更や臨時停車などでしか聞けないような普通のレア放送は全部無視して、マニア向けに珍しい付帯放送を集めてみました。
- ご乗車には乗車券のほかに、特急券と寝台券が必要です。 & 全車寝台車です。
- 全車指定席です
- 【消滅】吊り下げ札
- この電車は終点篠山口で、福知山行きに連絡します。
- 終点加茂で関西線〇〇行きに連絡しています。
- この電車は、琵琶湖線 大津・草津・米原方面へはまいりませんのでご注意ください
- ただいまより電車の切り離し作業を行います
- 湖西線からの迂回特急 & 本日は琵琶湖線経由で運転しております
- 大阪にはまいりませんのでご注意ください
- 停車駅にご注意ください
- この電車に限り乗車整理券は不要です
- 青春18きっぷではご乗車できません
- 到着しましても、降りられるお客様が済みますと……
- 【消滅】この電車は放出から先、終点まで女性専用車両の設定はありません
- この電車には女性専用車両の設定はございません
- 久宝寺までこの電車が先に着きます
- 4列に並んでお待ちください
- 【消滅】3列に並んでお待ちください
ご乗車には乗車券のほかに、特急券と寝台券が必要です。 & 全車寝台車です。
ご乗車には乗車券のほかに、特急券と寝台券が必要です。
In addition to a fare ticket, a Limited Express ticket and a sleeper ticket are required to board the train.
全車寝台車です。(日本語のみ)
京都駅にて寝台特急列車の接近時にのみ流れる音声パーツです。
正確に書くと「京都駅しか設定しない放送パーツです」でしょうか。
両放送とも駅で設定しないと流れない音声パーツです。設定していたのは京都駅のみで、トワイライトエクスプレス亡き今、定期的にこの音声パーツを流している駅は存在しません。
また現在唯一残っている寝台列車のサンライズ号は、ノビノビ座席が指定席の扱いとなっているため全車寝台の列車ではありません。後者の「全車寝台車です」については今後二度と聞けない可能性が高いです。
来年春から運行を開始する「West Express 銀河」に期待、と言ったところでしょうか。
全車指定席です
全車指定席です。
先ほどの「全車寝台車です」のシリーズもの。
長浜駅でのみ確認できた付帯案内です。SL北びわこ号の接近時のみ流れていました。現在は設定が変わり流れなくなっています。
【消滅】吊り下げ札
2020年6月、文面変更により流れなくなっていることを確認しました。
京都駅の2〜5番のりばには今や珍しくなった乗車札が残っています。
2〜5番のりばではこの乗車札を目印に整列乗車するよう促しており、
「普通、白色◯印の吊り下げ札」
「普通、黄色矢印の吊り下げ札」(高槻から快速の場合)
「快速、黄色矢印の吊り下げ札」
「新快速、白色△印の吊り下げ札」
といった要領で「吊り下げ札」を基準にした放送案内が行われています。
例外1
湖西線普通列車や草津線直通の普通列車には、片側2ドアの117系が充当されることがあります。
この場合、乗車位置は黄色の◯印になりますが、黄色◯印は乗車札がありませんので、117系が充当される列車では例外的に
「黄色◯印の」
足元とも吊り下げ札とも言わず、色と記号のみ読み上げる放送になります。
また一部の草津行きは4ドア車で運転されることがありますが、2, 3番のりばには◯印の乗車位置が用意されていません。この場合も
「白色◯印の」
のように放送されます。
例外2
A-SEATを連結した運転の場合も少し事情が特殊です。
乗車位置に関しては吊り下げ札があるため
「新快速、白色△印の吊り下げ札」
他列車同様の放送になります。
しかしA-SEATの案内に関する部分は、京都駅専用の案内パーツが用意されていないため、
「足元△印9番は有料座席A-SEATです」
のように、足元の乗車目標基準で放送が行われます。
この電車は終点篠山口で、福知山行きに連絡します。
この電車は終点篠山口で、福知山行きに連絡します。
This train will connect with a train for Fukuchiyama.
福知山行きに連絡する篠山口行きに対して付帯する案内です。大阪駅、尼崎駅、塚口駅などで確認できています。英語放送でも案内があります。
終点加茂で関西線〇〇行きに連絡しています。
終点加茂で関西線〇〇行きに連絡しています。
先ほどの案内の関西線ver.です。奈良駅、木津駅でのみ聞くことができました。
……そうです。過去形なんです。2019年9月ごろから流れないようになりまして、それ以降も何度か通いましたがやはり復活していませんでした。願わくばまた設定していただきたいところですね。
この電車は、琵琶湖線 大津・草津・米原方面へはまいりませんのでご注意ください
湖西線経由の快速、新快速向けに用意された付帯案内です。
基本的には京都駅でのみ聞くことができる案内となっています。2019年10月初旬から大阪駅でも設定され流れるようになりましたが、10月中頃までにまた設定が変わり流れないようになりました。
「この電車は」「琵琶湖線」「大津」「草津」「米原方面」「へは」「まいりませんので」「ご注意ください」
以上8つの音声パーツを組み合わせて作成されています。ちなみに「米原方面」のパーツは「米原方面〇〇行き」の放送と同じです。
ただいまより電車の切り離し作業を行います
ただいまより電車の切り離し作業を行います。
駅名連呼(到着放送)に付帯させる前提で作成されている音声パーツです。そもそも設定している駅が少ないため肉声放送の被りなしで録音するのは至難の業と言えます。
2019年夏~冬に確認した段階では京都駅、米原駅でのみ流れています。
米原駅では切り離しを行う場合、必ず立番の駅員さんが肉声放送を行うため被りなしで録音することはまず無理です。
京都駅でも同様に肉声案内が行われるうえ、京都駅では駅員さんが積極的に自動放送自体を切ることがあり、非常に流れにくいです。ただし土休日の切り離し(湖西線普通2本、湖西線新快速1本、はるかの切り離し1本)についてはごくまれに蔑ろにされることがあり、肉声放送が行われない日があります。そちらを狙ってみてください。
湖西線からの迂回特急 & 本日は琵琶湖線経由で運転しております
湖西線からの迂回特急
本日は琵琶湖線経由で運転しております
現状、米原駅でのみ聞くことができる放送2種です。
米原駅では湖西線から迂回する特急列車が到着する際、種別が単なる「特急」ではなく「湖西線からの迂回特急」になります。
またSUNTRAS型放送では、突発的に行き先やのりばが変わった場合に、変更になった事柄を案内する放送が自動的に設定されます。
「本日は行き先を姫路方面網干行きに変更しております」
こんな放送です。
詳しくは↓
サンダーバードが経路変更を行った場合に備えて「本日は琵琶湖線経由で運転しております」という放送が用意されているのですが、
サンダーバードが経路変更する旨の変更案内に関しては自動で設定されないため、各駅で設定する必要があります。
これが設定されている駅が現状米原駅のみとなっているのです。
かつては大阪駅でも頻繁に流れていましたが、自動放送に精通した駅員さんが異動になられたようでいつしか米原駅限定の放送になってしまいました。
大阪にはまいりませんのでご注意ください
大阪にはまいりませんので、ご注意ください。
大阪駅を経由しない列車に対しての放送です。英語放送が用意されていてもよさそうな案内ですが、用意されているのは日本語放送のみとなっています。
かつては定期列車として存在した阪和線からのB快速・新大阪行きや、一時期運転されていた新大阪発 桜島行きの臨時快速などで聞くことができました。
では現在は流れる駅はないのか…というとそういうわけでもなく、JR宝塚線や神戸線の一部駅でJR東西線経由の列車に対し設定している駅が今もあるようです。
停車駅にご注意ください
停車駅にご注意ください。
設定している駅が非常に少ないためめったに聞けない音声パーツです。
1日数本しか走らないような特殊な停車駅の列車で有効な付帯案内と言えます。おおさか東線の直通快速なんかはドストライクで当てはまる電車で、この放送に打ってつけの存在ですね。
この電車に限り乗車整理券は不要です
足元△印4番の車両はA-SEAT車両ですが、この電車に限り乗車整理券は不要です。なお車両中央には乗車口がありません。
A-SEATを連結した編成がダイヤ乱れで運用変更に遭い、別の列車に充当された際に聞くことができます。A-SEATが連結されている編成は2編成しかなく、かつ大幅に遅れない限り運用変更はかからないため滅多に聴くことができません。
現在はまだ試験導入の段階である新快速有料座席。成績は常に8割前後の着席率ととても良いそうで、今後新快速の有料座席が増えていけば聴く機会も増えそうですね。
青春18きっぷではご乗車できません
青春18きっぷではご乗車できません。
青春18きっぷを利用している人が誤って特急に乗らないよう促すパーツです。
青春18きっぷで利用できるのは普通と快速のみです。鉄道ファンには常識でも、ふだん鉄道で旅行しない方が「5日間or5人で1日乗り放題」の文字だけ見て、特急や新幹線も使えると勘違いするのはけっこう多いようで、このような付帯案内が用意されています。
ただこのパーツを設定している駅はほぼほぼありません。毎シーズン設定しているのは米原駅や上郡駅くらいでしょうか。
到着しましても、降りられるお客様が済みますと……
到着しましても、降りられるお客様が済みますと車内の清掃・点検をします。ご乗車はしばらくお待ち願います。
大阪駅にてびわこエクスプレス2号の接近時にのみ聴くことができます。
びわこエクスプレス2号は香住発、大阪止まりのはまかぜ6号の車両をそのまま使って運転されるため、大阪駅にて車内整備を行いますのでこの放送が流れるわけです。
なお、同様に折り返し運転で車内整備を行う京都駅では
列車が到着しましても、車内の清掃を行います。しばらくお待ちください。
少し短縮された別の案内が設定されています。
【消滅】この電車は放出から先、終点まで女性専用車両の設定はありません
おおさか東線が新大阪まで延伸していなかった時代、東線の直通快速は尼崎~奈良間で運転されていました。その当時に流れていたのがこの放送です。
当時は学研都市線内でのみ女性専用車両が実施されていたため、奈良行きの便では放出で女性専用車両が打ち切られる旨の放送が用意されていました。
現在は新大阪発着となり、全区間で女性専用車両を実施していないためこの放送は流れません。
この電車には女性専用車両の設定はございません
代わりに放出駅で新しく確認できたのが女性専用車両の設定がないことを案内する付帯放送です。
現在のところこの放送が流れるのを確認できているのは放出駅のみ。
他の線区でも、たとえばJR宝塚線内では丹波路快速のみ女性専用車が無かったり、阪和線でも4両の普通に女性専用車がないことを案内するために使えそうな放送ですが、設定されている例は今のところありません。そもそもこの案内文があること自体が知られていないようです。
久宝寺までこの電車が先に着きます
おおさか東線内には待避設備がないため、どの普通も後から来る直通快速には追い越されず終点まで先着します。ならば「直通快速を待たなくても普通に乗ったら速いよ」と流したいですよね。しかしSUNTRAS型放送の先着案内は退避設備がある区間でしか流れません。
そこで放出駅では、直通快速の前を走る東線普通電車に限り、先着案内を無理やり増やしていました。しかし手動設定ゆえ自動で設定される先着案内と比べると、音声パーツの使い方が異なります。
本来↓
久宝寺 / には / この / 電車が / 先に着きます
今回確認できたもの↓
久宝寺まで / この電車が / 先に着きます
待て。「久宝寺まで」って何やねん。いつ用意してんそんなパーツ。
天王寺駅の環状線ホーム・大和路線ホームには現在の放送が導入される前、村山・よしいペアの放送が導入されていた時期がありました。その当時の音声パーツがシステムの奥底に眠っていて、それが掘り起こされたのでしょうか。
ちなみに同じく直通快速の前を走る東線普通電車でも、新大阪行きでは同様の付帯案内は確認できませんでした。
4列に並んでお待ちください
4列に並んでお待ちください。
Please form four lines to board the train.
普段、乗車位置の案内では「2列」に並ぶよう指示を行いますが、ホームが狭い駅や混雑が短時間に集中する駅では「4列」に並ぶように誘導されています。
4列に並ぶよう流している駅の例・・・
大阪駅(普通電車のみ。快速は2列)
西九条駅
放出駅
よしいけいこ氏、村山明氏の声で聴くことができるのは放出駅が唯一です。
【消滅】3列に並んでお待ちください
3列に並んでお待ちください。
Please form three lines to board the train.
新しい乗車位置が整備されたことにより整列乗車の列数が変わり、普通は4列、快速は2列で並ぶように整備され、自動放送も普通電車の接近時には「4列に並んで」、快速接近時は「2列に並んで」に変更されました。
もともと「3列」に並ぶよう指示していたのは大阪駅環状線ホームのみでしたので、この音声パーツが流れる駅は現在ありません。
今回はレアな付帯案内であったり、めったに聞くことができない案内パーツをご紹介しました。
他にも「こんなレアパーツが録れた!」というものがありましたら随時追加してまいります。