近鉄 駅放送の分類と進化体系

f:id:Yata-Tetsu:20200405152438j:plain

 

 近鉄大阪輸送統括各駅(大阪線 西青山より西側の駅)の放送を分類するときの放送の「型」をまとめておきます。

 

 

基礎知識

用語紹介

駅名冠称

 大和西大寺の「大和」、大阪難波の「大阪」、伊勢中川の「伊勢」のように、同名の他駅と区別するためにつけられた旧国名などのこと。

 

案内復唱

 行き先と種別を繰り返して案内する手法。旧型放送によく見られる。例:「名古屋行き特急、名古屋行きの特急アーバンライナーがまいります」

 1回目は「〇〇行き」、2回目は「〇〇行きの」である点に注意。また2回目はふつう駅名の冠称を省く。例:「大和西大寺行き各駅停車、西大寺行きの各駅停車が、4両編成でまいります」

 

駅名連呼

 列車の到着時に駅名を知らせるため、駅名を繰り返し流す案内放送。例:「大和西大寺西大寺です。お忘れ物のないようご注意ください」

 

列車案内

 行先と種別の案内。例:「この電車はあべの橋行き準急でございます」

 

雑案内

 放送に付帯する行先、種別以外の案内のこと。停車駅案内、連絡案内、先着案内等。

 

「旧放送」と「旧型放送」、「新放送」と「新型放送」

 「旧放送」「新放送」はその駅に導入されている放送システムの新旧を表すもの。すでに更新が実施されている場合(現存しない放送)を紹介するときには「旧放送」、更新後の放送を「新放送」と表す。

 「旧型放送」「新型放送」は、放送の変化を系統だてて見たときに古い個体と新しい個体を区別するもの。旧型放送・新型放送の特徴は次の項目で説明しています。

 

旧型放送/新型放送に共通する特徴

 近鉄の駅放送は旧型放送と新型放送で放送文が大きく変わっています。

 

旧型放送の特徴

・「まもなく」から始まる(南大阪線系統のみ)

・「〇番線」

・語尾は「ございます」調

・案内復唱を行う

・停車駅の案内は「この電車は途中〇〇に停まります」

・駅名冠称を省略する

・「白線の内側」

・「電車の番号は前/後ろから1号車、2号車の順で、座席は全て指定となっています」

 

新型放送の特徴

・「まもなく」とは言わない

・「〇番のりば」

・語尾は「です・ます」調

・案内復唱は特急接近時のみ行うか、一切行わない

・停車駅の案内は「途中の停車駅は〇〇です」(ただし各駅に停まる場合を除く)

・駅名冠称を省略しない

・「黄色い線」

・「特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前/後ろの車両から1号車、2号車の順です」

 

 旧型放送から新型放送へは急に移り変わったわけではありません。少しずつ少しずつ、ある駅の放送導入時に組み込まれた新しい工夫が次第にいろいろな駅へ伝播していき、いつしかそれが新しい標準となることで新しい「型」が生まれるわけです。

 過渡期に導入された一部の駅放送では両方の特徴を併せ持つ個体も存在します。その場合には新型放送と比べて文面や放送できる内容がどう異なるか、文面や内容に差異が見られない場合は、声優さんの声質がほかに新型放送と判断した駅と同じであるかから判別します。

 どのように旧型放送から新型放送(現在の放送)に遷移したかは次の「変化の体系」を参照してください。

 

分類するときの留意点

 放送を分類するうえで留意しなければいけないのは、必ずしも全駅の放送がキッチリ枠にあてはめて区別できるわけではないという点です。近鉄の駅放送は各駅ごとに流せる内容、放送文面が異なるという鬼仕様であり、言い換えれば駅の数だけ放送の種類があります。つまりどの枠にも当てはまらないイレギュラーな放送もあるというわけです。

 どうしても枠に分類しがたい放送については、記事の最後にまとめて「オリジナルタイプ」として掲載していますので、参考にしてください。

 

駅放送の更新は2パターンあります

 近鉄の駅放送更新は厄介なことに、必ずしも更新されたからと言って新型放送の枠に当てはまるわけではない放送が存在します。

 

 近鉄の駅放送更新は2パターンあります。1つは放送装置/ソフトごと更新する例。この場合にはまったく新しい放送システムが導入されることになりますから、完全に新放送の文面に切り替わることがほとんどです。大阪上本町駅や古市駅の新放送がこの事例に当てはまります。

 

 反対に、文面が旧型放送の影響を大きく受ける場合があります。それが音声データのみを入れ替えた簡易な更新を行った場合。代表例は大阪阿部野橋駅の新放送で、放送更新が行われても一般種別の案内復唱がそのまま残った稀有な例です。(後ほど詳しく記載しています)

 音声データのみを入れ替えて放送更新を行った場合、元となる音声は変わっても文面を組み合わせるソフト面が変更されていないので、ソフトはこれまで通りの案内文で放送を組み立てます。結果的に声だけ変わって案内文は変わらないという矛盾した放送更新が行われてしまうのです。

 大阪阿部野橋駅のほかには大和八木駅橿原神宮前駅、そして「ひのとり」運行開始に合わせて男声のみを更新した奈良線大阪線の各駅がこの事例に当てはまります。

 

変化の体系(大阪線京都線橿原線

f:id:Yata-Tetsu:20200405180711j:plain

 

 掲載している放送文は、あくまで例文として載せているもので、実際に流れているものではありません。

 

最初期(旧型放送)

一般種別の場合

1番線に、青山町行き急行、青山町行きの急行がまいります。危険ですから白線の内側でお待ちください。

この電車は途中、鶴橋、布施、国分、五位堂、高田、八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸に停まります。

 

上本町、上本町でございます。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番線に、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから白線の内側でお待ちください。

この電車は途中、鶴橋、高田、八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、中川に停まります。

電車の番号は前の車から、1号車、2号車の順で、座席はぜんぶ指定となっています。特急券の指定番号の席にお座りください。

 

上本町、上本町でございます。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 確認できている限り最も最初期に導入されたと思われる放送の放送文面です。担当声優はもとむらみちこ氏。このころは女声放送のみでした。京都線東寺駅に残っているものが現存する最後の個体と思われます。大阪線五位堂駅にも類似した文面の放送が導入されていましたが、残念ながら2018年に更新されました。

 

 案内復唱を行うことはもちろん、停車駅案内では駅名の冠称を省いている点が特徴です。「黄色い線」ではなく「白線」の内側に下がるよう促している点も見逃せません。

 なお案内復唱については後年削除されたり、駅名冠称の省略はあとから省略していない音声パーツで置換されている場合があります。疑わしい駅放送を見かけたら、声質に違和感がないかを要チェックです。また特急券の案内文や「白線」の表現は、すでに詳細型放送を採用している全駅で更新が済んでいます。

 

両数案内追加(旧型放送)

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行、青山町行きの急行がまいります。危険ですから白線の内側でお待ちください。

この電車は途中、鶴橋、布施、国分、五位堂、高田、八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸に停まります。

電車は6両編成でまいります。名張で後ろの2両を切り離しいたします。桔梗が丘から先はおいでの方は、前の4両にご乗車ください。

 

上本町、上本町でございます。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから白線の内側でお待ちください。

この電車は途中、鶴橋、高田、八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、中川に停まります。

座席はぜんぶ指定となっています。特急券の指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車から、1号車、2号車の順でございます。

 

上本町、上本町でございます。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 大阪線標準の旧型放送が主にこれにあてはまります。現存するのは大阪線高安駅と榛原駅、京都線新祝園駅など。すでに更新された駅も含めると名張駅、桜井駅なども当てはまります。

 担当声優は女声:もとむらみちこ氏、男声:津田英治氏。名張駅旧放送など、「番線」と流すような古い個体では女声放送しか流れない例もありましたが、「のりば」に切り替わったころから少しずつ男声放送が下りホームに採用されるようになったみたいです。

 

 この型の放送から満を持して両数の案内が最後に付け足されました。ただし今のように種別に続けて流すのではなく、放送の最後に流すのが特徴です。

 停車する電車の接近時には「〇番のりば」、通過電車の接近時には「〇番線」と区別する聞きなれないこだわりも見られます。これ以降の放送では継承されず、通過電車でも「のりば」に統一されているところを見ると、別に区別する意味はないと判断されたのでしょうね。

 

 両数の案内が追加されているほかには、特急券が必要である旨の案内についても、号車番号を流す順番が入れ替わっています。特急券の案内はこれが旧型放送の標準的な案内方となっており、今後新型放送に切り替わるまでこの案内文が続きます。

 

 この型の放送を記録したいのであれば、迷わず高安駅をお勧めします。高安以外の駅では、旧型放送的な特徴は後年になって修正され、新型放送同様に案内復唱無し&両数の案内を種別に続けて流す文面に変更されていますが、高安駅の放送は原型をほぼ留めています

 案内復唱は、現在では高安駅でしか確認できませんが、もともとは全駅で案内復唱を行っていたようです(→参考 青山町駅の旧放送名張駅と同型の放送だが案内復唱を行っている)。また両数の案内は放送の最後に流すようになっています。

  新祝園駅の放送は案内復唱は削除されているものの、両数を放送の最後に流す文面が残っています。なお新祝園駅の放送は、条件さえそろえば、案内復唱を行っていたころの種別パーツを聞くことができます。→「各駅停車」の例

 

 駅名冠称の省略はあとから省略していない音声パーツで置換されている場合があります。(最後まで冠称を省略した音声パーツでしのいだのは桜井駅のみでした)

 また特急券の案内文や「白線」の表現は、すでに詳細型放送を採用している全駅で更新が済んでいます。

 

迷走期 ― 伝統を引き継いだ放送(京橿線旧型放送)

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行、青山町行きの急行が、6両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

この電車は途中、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸に停まります。

この電車は名張で、後ろの2両を切り離します。桔梗が丘から先へおいでの方は、前の4両にご乗車ください。

 

上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

この電車は途中、鶴橋、大和高田、大和八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、伊勢中川に停まります。

座席は全て指定となっています。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車から、1号車、2号車の順です。

 

上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 京都線丹波橋駅大久保駅橿原線の平端駅にみられる(みられた)放送です。

 一気に垢が抜けてかなり現行の放送に近くなっています。駅名冠称の省略をしないようになり、両数が種別に続いて案内されるようになりました。語尾は「ございます」調が「です・ます」調に移行しており、新旧が入り混じっています。

 また、旧型放送でも「白線」ではなく、「黄色い線」という表現を採用するようになりました

 

 この時期に導入された放送からは、雑案内の内容が徐々に統一され始めます。「先着案内はできても、途中駅で速達種別に連絡する旨は案内できない」(*高安駅)や、「両数は案内できても切り離しの案内はできない」(*榛原駅)などといった中途半端さはみられなくなり、どの駅でも要件さえ満たせば先着案内が流れる、乗換案内も流れるようになりました。

 しかし案内復唱や「この電車は途中」など、旧世代の要素はまだ色濃く残っていますし、切り離しの案内についても依然、新型放送とは違い「〇〇から先へおいでの方」と具体的な駅名を読み上げる様式が残っています。

 

 先述した通り、案内復唱は後年になって削除されるケースが目立ちますが、京都線橿原線の3駅は幸運なことに音声パーツの区切り方が雑(後述)なため、音声を組み替えるだけで案内復唱を削除できなかったので、行き先と種別を繰り返し放送する文面がそのまま残っています。

 

 近鉄の放送を象徴するといっても過言ではない、種別と行き先を繰り返し案内する「案内復唱」は、大阪統括部ではこの放送を最後に、特急でのみ行う形に変更されました。

 

「音声パーツの区切り方が雑」について

 ふつう近鉄の駅放送は
大阪上本町行き」「急行」「上本町行きの」「急行が」
 といった具合で、細かく切った音声パーツを組み合わせて案内を組み立てています。このような場合には間の2パーツを消して
大阪上本町行き」「急行が」
 とすれば、案内復唱をなくすことが簡単にできます。

 ところが先述の3駅では
「奈良行き急行」「奈良行きの急行が」
 のように、行き先と種別の間を区切らず収録してしまっているため、音声を組み換えただけでは案内復唱を削除することができません。そのため案内復唱が残ってしまっているものと思われます。

 

迷走期 ― 異形の進化をたどった放送(京都線旧型放送)

京都駅の接近放送の例

3番のりばに、橿原神宮前行き急行が6両編成でまいります。危険ですから、黄色い線までお下がりください。

An express bound for Kashiharajingu-mae is arriving at track 3.

 

京都、京都でございます。新幹線、JR線はお乗り換えください。

近鉄をご利用いただきありがとうございました。お忘れ物の無いようご注意ください。

 

京都駅の停車中放送の例1

 

3番のりばの電車は、橿原神宮前行き急行でございます。途中、東寺・竹田・丹波橋桃山御陵前・大久保・新田辺・新祝園・高の原・大和西大寺・西ノ京・郡山・平端・田原本・大和八木・八木西口・畝傍御陵前に停まります。

大久保で新田辺行き各駅停車に連絡いたします。奈良へは大和西大寺でお乗り換えください。

大和西大寺・西ノ京・大和八木・橿原神宮前へは、あとの特急が先に到着します。なお、特急には乗車券のほかに特急券が必要です。

The train at track 3 is an Express bound for Nara.

 

京都駅の停車中放送の例2

3番のりばの電車は、大和西大寺行き各駅停車でございます。

この電車は新田辺で、後ろの2両を切り離しいたします。興戸から先へおいでの方は、前の4両にご乗車ください。

 

京都駅の停車中放送の例3

3番のりばの電車は、新田辺行き準急でございます。

途中、東寺・竹田・丹波橋と、丹波橋―新田辺間の各駅に停まります。新田辺へも、この電車が先に到着いたします。

 

三山木駅の接近放送の例

1番のりばに、大和西大寺行きが6両編成でまいります。危険ですから、黄色い線までお下がりください。

 

 京橿線旧型放送に対立する形で、進化体系からはずれる系譜の放送システムがあります。ここでは「京都線旧型放送」と呼ぶことにします。

 担当声優は女声:もとむらみちこ氏、男声:津田英治氏。

 三山木駅では、上りが女声放送、下りが男声放送の標準的な組み合わせです。京都駅では接近放送・到着放送が女声放送、停車中放送・出発放送は男声放送という珍しい男女声の使い分けを行っています。また、向島駅は女声放送のみです。

 

 この放送では「黄色い線」という表現が最初から導入されていることに加えて、案内復唱が削除されています。

 つまり、「京橿線旧型放送」よりも後年に導入されたのは確実なのですが、なぜかこれより前の時期に導入されたはずの「京橿線旧型放送」では語尾が「です・ます」調になっているのに対し、この放送では「ございます」調が復活しています。謎です。

 ただし、京都線に導入事例が固まっているため、京都駅で導入されたオリジナルの型の放送が残りの2駅に転用されただけという可能性もあります。

 

新型放送プロトタイプ(初期新型放送)

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行が、6両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸です。

この電車は名張で、後ろの2両を切り離しいたします。先へお越しのお客様は前4両にご乗車ください。

この電車は青山町行きの最終です。(お乗り遅れの無いようにご注意ください)

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、大和高田、大和八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、伊勢中川です。

座席は全て指定となっています。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車から、1号車、2号車の順です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 阪神線との直通運転を開始すると同時に、「奈良線新型放送」に分類される1つの放送の型が登場します。それに至るまでに導入されたのが、新型放送のプロトタイプです。

 「プロトタイプ」とは「初期型」と言う意味です。新型放送に限りなく近い旧型放送、としておきましょうか。大阪線八尾駅・布施駅、奈良線河内小阪駅の放送がこれに該当します。

 

 大きな変化点として、特急以外の種別では案内復唱行わないようになりました。また語尾が「ございます」調が「です・ます」調に完全移行しています。

 さらに八尾駅河内小阪駅など後期に導入された駅では、停車駅の案内文が「この電車は途中…に停まります」ではなく、新型放送に近い「途中の停車駅は…です」という文面に変更されています。

 最終電車の案内にも対応するようになりました。

 

 ここまでくると、純粋な新型放送との差は誤差の範疇です。新型放送の基となっただけあって放送できる内容や文面はほぼ同じですが、重箱の隅をつつけば、特急券が必要である旨の案内が、新型放送とは違うという差が認められます。

 

奈良線新型放送

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行が、6両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸です。

この電車は名張で、後ろの2両を切り離しいたします。先へお越しのお客様は前4両にご乗車ください。

この電車は青山町行きの最終です。(お乗り遅れの無いようにご注意ください)

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、大和高田、大和八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、伊勢中川です。

特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車両から、1号車、2号車の順です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 奈良線 河内小阪以外の各駅と、京都線竹田駅新田辺駅で確認できる放送。旧放送に合わせて女声はもとむらみちこ氏、男声は津田英治氏もしくは樹リューリ氏が担当されており、上りホームでは女声放送、下りホームでは男声放送が流れます。

 

 阪神なんば線の開業に合わせて、2010年ごろに奈良線各駅に一斉に導入された新型放送。近鉄の駅放送を大きく変えた1つの標準的な形となりました。統一を嫌う近鉄にとって初めてとも言える統一された仕様の駅放送であり、自動放送史に残る大きな変革といえます。

 また特急券の案内が大きく変わっています。これまでは「座席は全て指定となっています」と流すだけで、特急券が必要である旨は明示されていませんでしたが、新型放送からははっきりと案内されるようになりました。

 ちなみに奈良線新型放送の導入駅では旧文面の案内も放送ソフト自体には収録されているようです(→参考)。

 

 近鉄が会社全体で津田英治氏に新しく音声パーツの依頼をすることを取りやめたようで、2020年のダイヤ改正以降は「ひのとり」停車駅と大阪線快速急行停車駅を中心に、男声放送が津田英治氏から樹リューリ氏に変更されています。

 また2016年以降、主要駅では順次英語放送が導入されています。英語女声はダビーナ・ロビンソン(Davina Robinson)氏が担当、英語男声は不明です。

 

 ちなみに。

 直接の祖先になったのは、どうやら大和西大寺駅に導入されたオリジナル型の駅放送であったようで、大和西大寺駅のみ異なる音声データが使用されていました。2015年ごろに他の駅と同じ音声に更新されたとのことです。

 参考動画▼ 2014年に録音した放送と2020年に録音した放送を聴き比べた動画。

 

 

大阪線新型放送(大阪統括部新型放送)

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行が、6両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸に停まります。

この電車は名張で、後ろの2両を切り離しいたします。先へお越しのお客様は前4両にご乗車ください。

この電車は青山町行きの最終です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急、松阪行きの特急がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、大和高田、大和八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、伊勢中川です。

特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車両から、1号車、2号車の順です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 担当声優は男声:樹リューリ氏、女声:馬場尚子氏。当初は大阪線京都線橿原線の一部駅に導入され始めた新型放送でしたが、2016年以降徐々に他線区でも導入駅が増えています。今後、大阪統括部の標準的な放送として活躍の幅が広がることでしょう。

 初期に導入された放送と、2016年3月に行われた大阪阿部野橋駅の放送更新以降に導入された放送で樹リューリ氏の声のトーンが大きく違います。前者は落ち着いた声ですが、後者は元気あふれる明るい声になっています。

 なお「駅放送の更新は2パターンあります」で触れたように、新型放送と同じ声でも放送文は旧型放送に準拠している例があるので注意。(大和八木駅、桜井駅、伊賀神戸駅など)

 

 今後スタンダードとなる放送だからこそ、どれだけ近鉄が「統一したフォーマットを統一させたまま広めるのが苦手か」にも触れておきますね。

 

 基本的に特急電車の接近放送では、行き先と種別を復唱するのが慣習でしたが、大阪上本町駅(2016年更新)、大和八木駅(2018年更新)、名張駅(2019年更新)は特急の接近時でも案内復唱を行いません大阪上本町・大和八木は旧放送の頃から行っていませんでしたが、名張駅に至っては、旧放送のころに行われていたものが新放送に更新されるときに削除されています

 となると「案内復唱を行わない方針に変えたのではないか」という仮説が立ちますが、八木と同じく2018年に更新された橿原神宮前駅、2020年に更新された伊賀神戸駅では、特急の接近時に案内復唱を行います。なんでや

 

 また案内できる内容に差がある駅もあります。大和高田駅大阪線新型放送ながら列車愛称の案内ができません。大和高田のほか、天理駅などでは最終電車の案内も用意されていないようです。

 このタイプの新型放送にも新旧があり、初期の放送では一部用意されていない案内があるとみて間違いなさそうです。

 

大阪線新型放送(大阪統括部新型放送) 黄色い点字ブロック更新後

一般種別の場合

1番のりばに、青山町行き急行が、6両編成でまいります。危険ですから黄色の点字ブロックまでお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、布施、河内国分、五位堂、大和高田、大和八木、桜井、榛原、室生口大野、三本松、赤目口、名張桔梗が丘、美旗、伊賀神戸に停まります。

この電車は名張で、後ろの2両を切り離しいたします。先へお越しのお客様は前4両にご乗車ください。

この電車は青山町行きの最終です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

特急の場合

1番のりばに、松阪ゆき特急がまいります。危険ですから黄色の点字ブロックまでお下がりください。

途中の停車駅は、鶴橋、大和高田、大和八木、榛原、名張伊賀神戸榊原温泉口、伊勢中川です。

特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車両から、1号車、2号車の順です。

 

大阪上本町、上本町です。お忘れ物のないようご注意ください。

 

2022年より、順次「黄色い線」という文言を「黄色い点字ブロック」に置き換える更新が入っています。「あをによし」運行開始に伴い、「あをによし」が停車する駅を中心に、少しずつ更新が広まっている様子です。

この更新が行われた駅では、特急の案内放送から案内復唱が完全に削除されています。

 

まとめ

 

 これを図表に起こすとこうなります。他にも列車愛称の有り無しなど判断する要素はありますが、転換点がはっきりしていないものは省きました。

 

変化の体系(南大阪線

f:id:Yata-Tetsu:20200405180830j:plain

 

 広大な路線網を有する近鉄は、2003年まで線区を3つに分割して、それぞれ別の場所で管理をしていました。南大阪線系統の各路線は天王寺営業局、大阪線京都線橿原線を管理していた上本町営業局とは異なる部署によって管轄されていた経緯があるため、旧型放送はまったくの別物が導入されています。

 

 まず担当されている声優さんが違います。本線の方では津田英治氏、もとむらみちこ氏のペアが一般的ですが、南大阪線では妹尾和夫氏、横田敦子氏が主に担当されていました。

 次に案内復唱を行いません近鉄の旧型放送といえば案内復唱が有名ですが、南大阪線の旧型放送では案内復唱を行う事例がほぼ存在しませんでした。

 

 言葉で語り尽くすには勿体ないくらい、同じ近鉄とは思えない独特なこだわりと特色が見られます。まさに近鉄ガラパゴス諸島。その全貌をご紹介します。

 

南大阪線初期旧型放送

まもなく1番のりばに、あべの橋行き準急が、5両編成でまいります。途中、藤井寺までの各駅と河内松原に停まります。

この電車は古市で、あべの橋行き急行に連絡いたします。

足元の3番から8番の乗車位置でお待ちください。

電車到着の際、危険ですから、白線の内側でお待ちください。

 

富田林、富田林でございます。この電車はあべの橋行き準急でございます。途中、藤井寺までの各駅と河内松原に停まります。

この電車は古市で、あべの橋行き急行に連絡いたします。

 

 担当声優は男声:妹尾和夫氏、女声:横田敦子氏。男声の語尾が心地よく伸びているのが特徴です。

 

 「まもなく」から始まり「危険ですから白線の内側でお待ちください/白線の内側へお下がりください」を放送の最後に付け足す個性的な文面。これが南大阪線の旧型放送の特徴です。

 放送が丁寧で長いのに「お下がりください」を最後に流すので、「お下がりください」と流れることにはすでに電車がホームの中ほどまで入ってきています。それもあって、現存する旧型放送はすべて「危険ですから〜お下がりください」を流すタイミングが変更されています。

 

 また南大阪線の旧型放送の特徴として、乗車目標が整備されている駅では乗車位置の案内が用意されていました。残念ながら乗車位置の放送は新型放送には引き継がれませんでしたが、近鉄の中でも時代を先取りした自動放送として、いつか注目される日が来ると信じています。

 

 最初期の放送は富田林駅にのみ現存しています。

 

南大阪線標準旧型放送

一般種別の場合

まもなく1番線に、吉野行き急行が、8両編成でまいります。途中、尺土・高田市・橿原神宮前と、橿原神宮前から吉野まで各駅に停まります。

この電車は橿原神宮前で、後ろ4両を切り離しいたします。吉野方面へお越しの方は、前4両にご乗車ください。

この電車は尺土で、御所行きに連絡いたします。

足元の1番から8番の乗車位置でお待ちください。

危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

古市、古市でございます。この電車は吉野行き急行でございます。途中、尺土・高田市・橿原神宮前と、橿原神宮前から吉野まで各駅に停まります。

富田林・河内長野方面へお越しのお客様はお乗り換えください。

 

特急の場合

まもなく1番線に、12時13分発、吉野行き特急さくらライナーが、まいります。途中の停車駅は尺土・高田市・飛鳥・壺阪山・吉野口・福神・下市口・六田・大和上市・吉野神宮でございます。

電車の番号は後ろから1号車・2号車の順で、座席は指定となっております。特急にご乗車の場合は、特急券が必要でございます。特急券をお買い求めのうえご乗車ください。

危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

古市、古市でございます。1番線に到着の電車は吉野行き特急さくらライナーでございます。途中の停車駅は尺土・高田市・飛鳥・壺阪山・吉野口・福神・下市口・六田・大和上市・吉野神宮で、座席は指定となっております。特急券の指定番号の席にお座りください。

 

 まだまだ「ございます」調が残る旧型放送。「まもなく」に始まり「危険ですから黄色い線までお下がりください」(*導入当初は「白線の内側」)で終わる接近放送と、到着した電車の行き先・種別・停車駅を再放送する到着放送が特徴です。乗車位置の案内もまだ残っています。

 

 基本的に近鉄の駅放送は出発時刻を案内しませんが、南大阪線の旧型放送は例外なく特急接近時に限り出発時刻を放送します。案内復唱は行ないません。

 起用されている声優さん、特急接近時のみ出発時刻を放送する、放送の最後に「お下がりください」と流す。この3点は名古屋営業局(現 名古屋統括)管内の旧放送と類似しており、何かしら由縁があったのかもしれません。

 ちなみに。放送例文で太字にしていますが、古市駅では停車駅案内の放送文がなぜか特急と一般種別で変わっていました。このこだわりはいったい…?

 

南大阪線後期旧型放送

まもなく6番線に、15時14分発、あべの橋行き特急がまいります。

途中の停車駅は高田市・尺土でございます。この電車は尺土で、あべの橋行き準急に連絡いたします。

電車の番号は前から1号車・2号車の順で、座席は指定となっています。特急にご乗車の場合は、特急券が必要でございます。特急券をお買い求めのうえご乗車ください。

危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

橿原神宮前橿原神宮前でございます。6番線に到着の電車は、15時14分発、あべの橋行き特急でございます。

途中の停車駅は高田市・尺土で、座席は指定となっています。特急券の指定番号の席にお座りください。

 

まもなく4番のりばに、あべの橋行き準急が、5両編成でまいります。

途中の停車駅は河内松原でございます。

危険ですから、白線まで下がってお待ちください。

 

藤井寺藤井寺でございます。4番のりばに到着の電車は、あべの橋行き準急でございます。途中の停車駅は河内松原でございます。

 

まもなく2番のりばに、河内長野行きが8両編成でまいります。河内長野まで各駅に停まります。

この電車は古市で、吉野行き急行に連絡いたします。この電車は古市で、後ろ4両、切り離しいたします。

危険ですから、白線まで下がってお待ちください。

 

藤井寺藤井寺でございます。2番のりばに到着の電車は、河内長野行きでございます。河内長野まで各駅に停まります。

 

 旧型放送の中でも後期に属する部類の駅放送です。確認された導入駅は橿原神宮前駅と藤井寺駅の2駅のみ。橿原神宮前駅は「~番線」と流す初期に近いタイプですが、藤井寺駅は「~番のりば」と流します。

 ちなみに橿原神宮前駅の放送は女声:横田敦子氏、男声:妹尾和夫氏で旧型放送と同じペアが担当。藤井寺駅の放送は女声:横田敦子氏、男声:津田英治氏が担当されています。

 なぜ急に声優さんを変更したのかは追及の使用がないのでさておき、現在、南大阪線の駅で津田英治氏の詳細型放送が聞けるのは藤井寺のみですから、非常に貴重な駅放送と言えます。

 

 これら2駅の旧型放送では、特急か一般種別かに関わらず停車駅の案内が「途中の停車駅は」と案内する様式に変わっています。少しずつ上本町営業局の放送に歩み寄っているようですね。

 声優さんの声や放送装置自体にも変化が見られます。男声・女声とも落ち着いた声になっているほか、放送自体の音質が向上しています。

 

 最後に、天王寺営業局が導入した旧型放送の特徴としてもう一つ触れておきたいところがあります。

 

橿原神宮前駅 旧放送

まもなく2番線から、西大寺行き急行が発車いたします。

途中の停車駅は、八木までの各駅と田原本・平端・郡山でございます。

 

橿原神宮前駅 新放送(大阪線新型放送)

2番のりばの電車は大和西大寺行き急行です。

途中の停車駅は、大和八木までの各駅と田原本・平端・郡山です。

 

 同じ駅の新旧の放送で、同じタイミング(出発1分前)に流れる放送を比較してみました。近鉄ターミナル駅では、出発1分前になると、出発予告放送として行き先・種別・停車駅そのほかを詳細に案内する放送が流れるようになっています。

 大阪線新型放送は、上本町営業局の流れを踏襲しているため、まもなく出発するということには触れずに案内を行っています。一方で南大阪線の旧型放送では「まもなく~発車いたします」という文面になっており、もうすぐ発車する電車の案内をしているということが明示されています。

 乗車位置案内が新放送に反映されていない件と言い、こういう見習うべき点はぜひ新放送にも引き継いでいただきたかったところです。

 

 これがおそらく、天王寺営業局が独自に導入した最後の駅放送であるようです。この次に導入された放送からは、放送文面が一気に変化します。

 

南大阪線新型放送

2番のりば大阪阿部野橋行き準急が、8両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は土師ノ里・藤井寺・河内松原です。

 

2番のりば河内長野行きが、8両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

河内長野までの各駅に停まります。この電車は古市で、後ろ4両を切り離します。先へお越しのお客様は前4両にご乗車ください。

古市で吉野行き急行に連絡します。

 

*特急停車駅での導入事例無し。

 

 2003年に天王寺営業局が大阪輸送統括に統合されたのち、初めて南大阪線に導入された放送。2010年ごろ上記4駅のみに駅に導入されました。「ございます」調から「です・ます」調に変わったほか「危険ですから~ください」を流すタイミングが行き先のすぐあとに変更されました

 担当声優は男声:妹尾和夫氏、女声:横田敦子氏。文面は新型放送そのものですが、最終電車の案内放送には対応していません。なので、厳密に分類すると旧型放送の1つです。

 

 ちなみに、南大阪線新型放送には致命的な設計ミスがあります。河内長野駅御所駅など、終点駅で折り返し列車が到着する時の放送が次のようになってしまうのです。

 

◯番のりばに電車がまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

御所、御所です。この電車はこの駅までです。お忘れ物のないようご注意ください。

 

 当駅止まりとして登録されているのでしょうか。行き先や種別などの案内全カットという清々しさすら感じるくらい内容の無い放送が流れます。これ、なんとかならないんでしょうか。

 

大阪線新型放送(大阪統括部新型放送) 初期導入分

7番のりばに、大阪阿部野橋行き特急、あべの橋行きの特急さくらライナーがまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は高田市・尺土・古市です。

特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券、指定番号の席にお座りください。

この駅で前に電車をつなぎ、8両編成で運転します。なおつなぎ終わりましても、4号車と5号車の間は通り抜けできません。

尺土で大阪阿部野橋行き準急に連絡します。

The Limited Express SAKURA LINER bound for Osaka-Abenobashi is arriving at track 7. To board a limited express train, a limited express ticket is needed in addition to a regular ticket.

 

 道明寺駅土師ノ里駅の放送が更新されて以降、6年以上も放送更新が一切ない状態が続きました。長いブランクを抜けて導入されたのは、南大阪線の自動放送が積み重ねてきた歴史を一切考慮せず設計された大阪線新型放送です。

 

 ただ導入時期により詳細が異なるので、初期に導入された大阪阿部野橋駅橿原神宮前駅と、今川駅ほか2020年に導入された他駅で区別します。

 初期に導入された2駅は更新の際、音声データを入れ替えた簡易更新を行っているため、旧型放送の文面を引き継いでいる部分が随所にみられます。大阪阿部野橋駅はあとで詳細に紹介していますので割愛して、たとえば橿原神宮前駅はこれなんかが代表例です。

 

旧放送

まもなく6番線に、尺土行きが4両編成でまいります。尺土まで各駅に停まります。

足元の1番から4番の乗車位置でお待ちください。

危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

6番線に到着の電車は、尺土行きでございます。尺土まで各駅に停まります。7番線から、あべの橋行き急行が先に発車いたします。しばらくお待ちください。

 

新放送

6番のりばに尺土行き各駅停車が、4両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

この電車は尺土までの各駅に停まります。

A local train bound for Shakudo is arriving at track 6.

 

(電車が止まる頃に)

7番のりばから、あべの橋行き急行が、先に発車します。

 

 各駅停車なのに停車駅を案内する点はまさにそのままです。旧放送のころは、種別を案内していなかった都合であえて停車駅を流していたのでした。新放送では種別を案内するので、停車駅の案内は不要になったのですが、消し忘れで残ってしまっています。

 ほかにも最終電車の案内が用意されていないという点も大きいです。ソフト面は旧型放送のままなので、旧放送のころになかった案内は新放送でも追加されていないというわけです。

 

 橿原神宮前駅の放送についてもう一つ。仮にも大阪線新型放送に寄せて設計されているため、特急の接近時に限り案内復唱を行います。先述した通り、南大阪線の旧型放送は総じて案内復唱を行っていなかったので、画期的な進化でした。

 なお南大阪線の途中駅で案内復唱を取り入れた放送が導入された事例は、これが最初(でおそらく最後)です。

 

大阪線新型放送(大阪統括部新型放送) 後期導入分

3番のりばに、大阪阿部野橋行き特急さくらライナーがまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は古市です。

特急には乗車券のほかに特急券が必要です。特急券、指定番号の席にお座りください。電車の番号は前の車両から1号車・2号車の順です。

 

 今川駅と、2020年に導入された河内松原、古市、尺土、高田市の4駅では、根幹は大阪線新型放送ですが、南大阪線の旧型放送に合わせてカスタマイズされた新型放送が使用されています。大阪線新型放送では特急接近時に案内復唱を行いますが、南大阪線用にカスタマイズされた大阪線新型放送では、特急接近時に案内復唱を行いません

 この放送システムからは晴れて完全な新型放送になりましたので、最終電車の案内もようやく用意されました。

 

まとめ

f:id:Yata-Tetsu:20200409160251p:plain


 こちらも図表にしてみました。管轄が変わって導入された南大阪線新型放送以降、大きく変化しているのが見てとれます。「のりば」→「番線」→「のりば」と行き来しているのが面白いですね。

 

オリジナルタイプ・特筆すべき駅放送

 近鉄の駅放送は右に倣えができないので、系統立ててみたときに道から外れる個体がたまに見つかります。ぜんぶ筋を通そうとすると無理が生じますので、例外は例外としてここにまとめておきます。

 

大阪阿部野橋駅

旧放送の例

まもなく5番のりばに、22時20分発 橿原神宮前行き区間急行、橿原神宮前行きの区間急行が、まいります。

途中の停車駅は古市・尺土と、尺土から橿原神宮前までの各駅でございます。

電車は8両でまいります。8両までの乗車位置でお待ちください。

この電車は古市で、後ろ4両を切り離し、前4両は吉野行きに変わります。この電車は途中の古市駅で河内長野行きと橿原神宮前行きに連絡いたします。なお後ろ4両は、途中の古市で切りはなし橿原神宮前行きに変わります。

電車が到着いたします。危険ですから黄色い線までお下がりください。

 

あべの橋あべの橋でございます。ご乗車ありがとうございます。車内にお忘れ物の無いようご注意ください。

5番のりばの電車は、22時20分発 橿原神宮前行き区間急行でございます。

 

新放送の例

5番のりばに、22時20分発 橿原神宮前行き区間急行、橿原神宮前行きの区間急行が、8両編成でまいります。危険ですから黄色い線までお下がりください。

途中の停車駅は古市・尺土と、尺土から橿原神宮前までの各駅です。

この電車は途中の古市で河内長野行きに連絡します。

この電車は古市で、後ろ4両を切り離し、前4両は橿原神宮前から吉野行きに変わります。

なお後ろ4両は、途中の古市で切りはなし橿原神宮前行きに変わります。

A Suburban Express bound for Kashiharajingu-mae is arriving at track 5.

 

大阪阿部野橋あべの橋です。近鉄電車をご利用いただきありがとうございました。お忘れ物の無いようご注意ください。

5番のりばの電車は、22時20分発 橿原神宮前行き区間急行でございます。

 

 旧放送は男声:津田英治氏、女声:横田敦子氏。新放送は男声:樹リューリ氏、女声:馬場尚子氏。トーンが高い樹リューリ氏の声が初めて採用された駅です。近鉄の大阪統括部が管理する駅で唯一、発車時刻を案内する駅放送が導入されています。

 

 まず旧放送に注目したいと思います。発車時刻等は他駅でも特急に限り流していたので納得ですが、案内復唱の文化がないはずの天王寺営業局で唯一、案内復唱を行っていた駅放送である点や、ほかの駅が両数を種別に続けて流しているのに両数を最後に流したり好き放題やってる変な駅放送でした。導入当時に大阪営業局の最新であった放送を、天王寺営業局が真似て独自に進化させた放送であるようです。

 ターミナル駅がこの具合なんですから、そりゃ南大阪線はどこの駅も変な放送ばかりになりますよね。ちょっと納得です。

 

 そして旧放送自体がそもそも異端なのですが、新放送は異端児の中の異端児です。放送文は旧型放送の流れをほぼ引き継いでいます。新型放送に合わせる気が全く感じられません。

 案内復唱は当然のように残っていますし、連絡案内も「古市で〇〇行きに連絡します」ではなく「“この電車は途中の”古市で〇〇行きに連絡」と旧放送に準じた文面です。発車時刻の案内まで残っていますし、これはもう…手の施しようがないです(歓喜

 よほど特別な理由があったのか、はたまた手を抜いて音声データだけ入れ替えたらこうなってしまっただけなのか、どっちなのでしょう。

 

f:id:Yata-Tetsu:20190918035155p:plain

 

 探れるものはすべて探ってみましたが、古い動画をあたってみてもなにぶん2010年ごろからの資料しか残っていないため、それ以前にあった放送の変化などは見逃している可能性があります。

 もし内容にご指摘がありましたらぜひ、この記事のコメント欄やTwitterのDMなどでお寄せください。

Written by Yatatetsu ... All Rights Reserved