今回ご紹介するガラクタはこちら。
近鉄の方向幕(側面用)です。
近鉄は大阪の車庫に所属している車両が名古屋の路線で運転されたりするため、次のように車両運用が共通となっている線区ごとに方向幕の内容が大別されています。
・南大阪線
今回ご紹介する方向幕は奈良線、京都線、橿原線の方向幕で、表記の通り区間準急が運転を開始してからのものです。ですが阪神線直通運転開始前のものですので、阪神線のコマは入っていません。
*区間準急の運行開始は2006年、阪神直通運転開始は2009年。
コマ番号1(空欄)~4「普通・東生駒(この車両東花園まで)」
このように左から識別コード・コマ番号(小さい数字)・種別・行き先の順に並んでいます。
識別コードは幕の巻き取り機が何番のコマを出しているか識別するためのものです。普段は見えない部分がこうして露わになると興奮しますよね。
普通の範囲はひたすら「行き先」→「行き先(東花園まで)」の組み合わせが続きます。
大阪難波行きや大阪上本町行きは旧来の「難波」「上本町」表記のままなのに、大和西大寺行きはきちんと駅名冠称を略さない表記に変更が済んでいます。
先述の通り奈良線の車両の幕は橿原線、京都線と共通の内容であるため、奈良線のコマの間に「急行・奈良(この車両新田辺まで)」と京都線用のコマが普通に紛れています。
京都線急行を挟んで貴重な京都線準急。続いてポツンと1コマだけ入っている難波行き区間準急のコマです。
近鉄の方向幕は80コマ用意されていますが、最初から最後までほぼギッシリ内容が詰まっています。後から追加された内容は優先度が低いコマと差し替えられるため、このように脈略無く出てくることがあります。
京都線普通の幕に紛れて奈良行き各停のコマ。後ほど一覧表を掲載しますが、「普通・奈良」はなぜか2コマ収録されています。
生駒線、田原本線のコマ。大輪田行きはかつて設定があったようですが、萩の台行きははたして運転されたことはあるのでしょうか。
「試運転」を挟んで生駒線や田原本線が続くかと思いきや、ここで3コマだけ大阪線普通のコマが出てきます。
かつて冷房装置を取り付ける工事のため、一時的に奈良線の車両が大阪線に貸し出された名残だそうです。阪神線との直通対応編成ではここが神戸三宮行き関連のコマに変更されています。
大阪難波行きで大和西大寺切り離し。そんな変則的な運転がかつて行われたことがあったのでしょうか、全種別用意されています。
宮津行き急行を挟んでようやく奈良行き、大和西大寺行きの区間準急のコマです。
新田辺切り離しのコマを挟んで、
「この車両三山木まで」
でました、変な幕。これが方向幕を一本で買う醍醐味ですよね。かつて三山木行きが運転されていた名残であるようです。
奈良行きと大和西大寺行きとで「この車両三山木まで」のフォントが違う点も注目。
この三山木切り離しの部分も、阪神直通対応編成ではすべて尼崎行きのコマに割かれていて現存しません。
最後に生駒線のワンマン幕、そして京都行き快速急行と天理行き快速急行の幕が来て終わりです。
京都行き快速急行もなかなか曰く付きの幕ですよね。運転してみたのはいいものの、停車駅を厳選しすぎた結果、あまりに停車駅が少なすぎたため誰も使わなくて数年で廃止されたという。いまだに方向幕には残っているというのが面白いです。
↑ちなみにこちらがこの方向幕に収録されているコマ一覧です。拡大してご覧ください。
方向幕の入手方法
鉄道会社が開催する車庫の一般公開イベントで販売されることがあります。近鉄の場合、例年10月末~11月初旬に開催される「近鉄鉄道まつり」の五位堂会場にて、事前予約制で販売されています。
事前予約については開催が決まったらホームページで告知がありますので、欠かさずチェックしておきましょう。
▲即売会の様子。コマ単位でカットしラミネート張りされたものも販売されています。
一本まるごと購入する場合は、右下にちらっと映っている巻物形式のものを購入すれば大丈夫です。通勤車両用用の幕はだいたい8,000円で一本購入できます。
近鉄の方向幕を購入する際は前面幕か側面幕かをよく確認してください。前面幕とは列車の先頭車両に掲出される幕、側面幕は車両側面に掲出される幕です。
なぜかといいますと、側面幕には「この車両○○まで」の表記が入っていますが、前面幕にはその記載がありません。
別に何でもいいから方向幕が欲しいのであればどちらでも構いませんが、近鉄特有の「○○まで」表記が欲しいのであればよく見て購入しましょう。商品に明記されていますし、前面幕の方がちょっとサイズが大きいのですぐ区別はつくと思います。
方向幕の保管方法について
方向幕はポリエステル系の化学素材を原料にしたうすいフィルムで出来ています。この素材の特徴として、薄く延ばしても耐久性が強い、日光により劣化しづらい、熱に強いなどが当てはまります。
直射日光を受ける方向幕という設備にうってつけの素材です。なので適当に保管しておいてよい…というわけではありません。
いくら太陽光や高温に強くても影響を全く受けないわけではありませんから、長期間太陽光にさらされるような環境であったり、高温多湿の空間で保管され続けるとどうしても痛みが出てきてしまいます。
劣化した方向幕はこのように亀裂が走り、徐々に割れていきます。一度亀裂が入ると最後、少し衝撃を与えるだけでこの有様です。痛々しい姿を見たくなければ、鑑賞する時以外は冷暗所で保管するよう心がけましょう。
あと年に1回程度で構いませんので、定期的に最初から最後まで巻き直すのも割れを防止するためにお勧めします。幕を巻き取るのが手間だ、と言う方には↓のようなものを自作するのもおすすめです。
結局何をしても劣化は避けられないのですが、きちんと対策をすることで少しでも長く手元に置いておくことができます。ぜひ参考にしてみてくださいね。