近鉄の駅放送には、次の条件を満たす場合、慣習的に種別を簡略し、行き先のみを流す放送が導入されている例があります。
1.一部もしくは全ての優等種別が各駅に停まる区間の駅で、
2.各駅に停まる区間の方向に向かい
3.以降の区間に通過駅がない電車
*条件に当てはまっても特急では種別を案内します。
たとえばこの図で考えると、
1.一部もしくは全ての優等種別が各駅に停まる区間の駅
→J駅より右側の区間
2.各駅に停まる区間の方向に向かい、
→下り方向に向かう列車
3.以降の区間に通過駅がない電車
→普通と準急
=J駅より下り方向に向かう普通と準急で種別が簡略されることになります。
たとえば鶴橋駅の放送をみてみましょう。
「大阪難波行き各駅停車がまいります」
ではなく、
「大阪難波行きがまいります。大阪難波まで各駅に停まります」
「尼崎行き区間準急がまいります。尼崎まで各駅に停まります」
ではなく、
「尼崎行きがまいります。尼崎まで各駅に停まります」
のように案内します。
これは優等種別の停車駅が関係します。
普通、区間準急、準急、急行は、当駅より大阪難波寄りの各駅に停まります。各駅に停まる電車が多い区間で、わざわざ種別を区別する意味はありませんよね。
そういった場合には種別を簡略し、行き先のみを流して分かりやすい案内となるよう工夫がなされています。
英語放送が導入されている駅では、基本的には英語放送でも種別が簡略され、普段であれば種別が流れる最初のフレーズが"a train"に変わります。
例:鶴橋駅にて、尼崎行き各駅停車の場合
"A local train bound for Amagasaki is arriving at track 3."
→"A train bound for Amagasaki is arriving at track 3."
ただし、この慣習は大阪統括部の管轄駅でのみ見られるものです。近鉄は西青山駅より西側、東青山駅より東側で完全に運営が分かれており、駅放送もこの2駅を境に大きく変わります。
名古屋統括部(東青山駅より東側)の各駅では、たとえ条件に当てはまっても種別は簡略しません。
例外集
種別を略さない例1 大阪線
大阪線の桜井〜青山町間では区間準急・準急・急行も各駅に停まります。
では各駅の放送を見ていきましょう。
桜井駅
普通〜準急は種別を省略するが、急行はその先に通過駅がなくても種別を案内する。榛原駅
普通〜準急は種別を省略するが、急行はその先に通過駅がなくても種別を案内する。名張駅
普通〜準急は種別を省略するが、急行はその先に通過駅がなくても種別を案内する。
これらの駅では、普通・区間準急・準急は種別を省略しますが、急行はその先の区間に停車駅がなくても種別を案内します。
ですので
「名張行きがまいります。名張まで各駅に停まります」
という放送と、
「名張行き急行がまいります。途中の停車駅は名張までの各駅です」
という放送が同じ駅で聞けます。内容に差はないのに種別によって文面が変わる、なんとも非効率的な事例です。
伊賀神戸のみは特例で、次の青山町止まりの電車では急行・快速急行であっても種別を案内しません。
種別を略さない例2 京都線
新田辺行きについては条件を満たしているので種別が簡略されるはずですが、基本的に種別を省略せず放送します。
新田辺行きの種別をルール通り簡略する駅
向島駅 のみ
*桃山御陵前は未調査だがおそらく後者
種別の簡略が徹底できていない例1 大和八木駅・橿原神宮前駅
▲「5番のりばに橿原神宮前行きが6両編成でまいります」 "An Express bound for Kashiharajingu-mae is arriving at track 5."
▲「5番のりばに吉野行きが4両編成でまいります」 "An Express bound for Yoshino is arriving at track 5."
以上2つののりばでは、日本語放送では種別を簡略するのに英語放送では種別を案内するという、非常に特殊な設定の放送が流れます。
同時期に更新された2駅のうち特定ののりばでしか確認できていない放送文面なので、設定ミスである可能性が高いです。
種別の簡略が徹底できていない例2 東花園駅
▲瓢箪山行き普通の例
東花園駅限定の設定ミス(?)です。
東花園寄り奈良方では区間準急が各駅に停まるため、普通・区間準急の種別が簡略されます。ところが瓢箪山行きと石切行きの各駅停車では、種別を簡略しません。区間準急が設定される前の設定がそのまま残っているのでしょうか。
種別を省略しすぎている例1 三山木駅
(動画未投稿)
各駅停車しか停まらない京都線三山木駅では、上りも下りも全列車種別なしで行き先しか案内しません。ここまで極端な事例は珍しいです。詳細型放送の中ではかなり簡易な放送しか流れない部類の駅なので、煩雑に設計されたのかもしれません。
種別を省略しすぎている例2 南大阪線仕様の各種放送
南大阪線の一部駅に導入されているカスタマイズされた大阪線新型放送、および南大阪線新型放送では、種別が簡略される条件が旧放送準拠になっており、本来の大阪線新型放送とは異なります。
冒頭で紹介した通り、たとえばこのような運行形態であった場合、種別が簡略されるのは、準急が各駅に停まる区間に入るJ駅より下り方向の列車のみです。
ところが、南大阪線仕様の大阪線新型放送が導入されている尺土駅と高田市駅、および南大阪線新型放送が導入されている御所駅では、上り方向であってもJ駅にあたる駅までの区間で運転を終える普通電車では、種別を簡略します。
条件に当てはまる列車
・高田市駅での尺土行き、古市行き
・尺土駅での古市行き
・御所駅での尺土行き、古市行き
・河内長野駅での古市行き ←理論上当てはまるが、未調査
近鉄特有の文化である種別簡略。
きっちりしたルールがあるように見えて、実は意外に例外が存在するんです。やはり何事に関しても統一していないのが近鉄さんらしいところですね。
今日はここまでです。