大阪市営地下鉄中央線の布製方向幕

今回紹介するガラクタはこちら。

 

 

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秘伝の巻物?

ボロボロの布切れ?

 

いいえ。

 


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4R

生←→大

保存用

 

怪しいメモ書きが付いていますね。

 

実はこれ、大阪市営地下鉄旧型車両についていた方向幕なんです。

 

4Rは「4号線」=現在の中央線

生←→大は「生駒⇔大阪港」

を表しています。

 

そして気になる「保存用」の文字。何かしらの用途で保存されるはずだった方向幕が、なぜか2019年の緑木車庫一般公開で即売会に出品されていたので購入した品になります。

どうやら今までも保存用の布幕が数年おきに1本放出されていたようです。メトロさんの気分が変わったのでしょうか。

 

そしてもう1点触れたいポイントが。現在の方向幕は化学素材のフィルムが素材になっていますが、この当時は本当に布地が素材として用いられていました。布地の方向幕なんてめったに出回りませんから運よく手に入れられたのは奇跡だと思っています。

 

さっそく中身を見てみましょう。

 

 

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さすが保存用となっていただけあってきれいですね。汚れ一つありません。

 


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入っているのは以上の9コマのみです。

 

なんといってもレトロな書体がたまりません。心の奥をくすぐりますね。「臨」の2つの口が繋がっている点が最高に刺激的です。

これが装備されていた車両を見たことがあれば感動もひとしおだったでしょうに。生まれてくるのが遅かったようです。

 

そして「回送」や「試運転」の書き方に注目。現在の方向幕でもこの2つの幕は赤地に白文字で書かれており、このころの様式が今も継承されていることが分かります。

 

閑話休題 布地とポリエステルフィルム

先述した内容を詳しく探ってみたいと思います。

現在の鉄道車両の方向幕はポリエステル系の化学素材を用いて製作されているのに対し、今回ご紹介した方向幕は本当に布地に印刷された幕になっています。

 

 

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▲経年劣化で亀裂が入ってしまっているポリエステルフィルムの方向幕

 

日光で劣化してパラパラに割れてしまうポリエステル素材と比較すると、耐久性は確実に布の方が高いのですが、ではなぜ今は使われなくなったのか。

 

推察するに、やはりコストがかかり大量生産できない、というのと

 

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この遮光性の高さが関わっているような気がします。

 

上記二枚の画像は、周りを暗くして、同じ照明をバックに布地の幕とポリエステル製の幕を撮影した画像です。明らかにポリエステルの素材の方が光を通していて見やすいですね。

 

路線にもよりますが、方向幕は新駅開業やダイヤ変更、デザインの変更などにより、短期間で何度も更新する場合があります。

 

ある程度の耐久度でも、より安価で製造でき、かつ内照式にした場合に視認性が高いポリエステル製に切り替わっていったのでしょう。

 

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