運行管理システム“連動”の欠点 実際の運転と伴わない誤案内

日中の列車はある程度録音しきってしまったので、最近は暇があれば最終電車の録音に行っています。

 

その流れで先日も高槻駅に行ってきました。狙いは「本日の○○線最終電車となります」という、限られた駅でしか聞くことができない特殊な最終案内です。

 

 

▲大阪行き最終

 

▲京都行き最終

 

上に挙げた動画のように、高槻駅では上下の最終普通電車でこれが聞けると伺い、喜んで飛びついて行ってきました。

 

ですが、この動画が投稿されたのは昨年12月。今日までに8か月もの歳月がたっています。

この間に設定が変更されており、実際には京都行き最終で最終案内が流れないようになっていたのですが、同時に思わぬ収穫がありましたので記事に残しておきます。

 

京都にはこの電車が先に着きます

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この日は阪和線車両故障が発生し、直通運転を行っている大阪環状線でもダイヤ乱れが発生。最終の新快速・京都行きは、大阪環状線からの接続待ちを行った影響で、およそ5分遅れて運転をしていました。

 

 

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最終の新快速は本来、高槻で最終の普通・京都行きと連絡を行います。

 

さすがに最終接続をそう易々と切ることはできないため、普通・京都行きは新快速からの乗り換え客を待ち、約5分遅れて高槻駅を出発しました。

 

 

ここまではいたって普通の流れですよね。

ですがその過程で次のような放送が流れたのです。

 

0時43分発、普通・京都行きは3番のりばから発車します。

(中略)

京都には、この電車が先に着きます。

 

こんな誤放送です。当然新快速の到着を待つわけですから、普通電車が京都に先着するはずはありません。

 

では、この放送が流れたメカニズムを解説します。

 

 

運行管理システムの役割と、仇となった“連動”

電光掲示板に表示される案内や、自動放送の案内文はすべて、運行管理システムによって作成されたダイヤに基づいて生成されています。

 

そこで、参考に当時の電光掲示板の表示を見てみましょう。

 

 

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普通と新快速の発車順序が入れ替わっているのが見てとれます。

 

これは、運行管理システムは普通と新快速の接続を切り、最終の普通電車を新快速との接続を待たずに出発させるように計画したことを表しています。

つまりシステム上では、普通は新快速を待たずに高槻を出発し、京都へも先着するとなっているのです。

 

これは何らおかしいことではありません。

 

 

運行管理システムの役割は、列車の遅れを最小限に留めるために輸送計画を作成し、それに従って信号などを自動で制御することにあります。

連絡のためにわざわざ遅れていない列車を遅れさせるなんて、システムにとっては以ての外です。

 

なので運行管理システムは、普通電車はダイヤ通りに新快速を待たず高槻を出発させる形を選択しました。ここまでは“そういうもの”なので仕方ありません。

問題はここから。人の手が加わって修正された輸送計画(この場合、普通を抑止すること)が、システムに反映されなかった点からが問題です。

 

 

先述の通り、駅の案内表示や放送は、運行管理システムが作成したダイヤに基づいて作成されます。

 

ここで実際の運転に合わせて、普通電車を抑止するというダイヤ変更を行わないと、今回のように普通が京都まで先行するという誤った案内が流れてしまうのです。

 

 

全自動で案内を行う旅客案内システムは、行き先変更が掛かった場合に、逐一案内放送を設定変更したりしないで良い代わりに、

軽微なダイヤ変更でも、厳密にダイヤを変更しないと、こういう誤った案内が流れてしまうという欠点があります。

 

これはSUNTRAS型放送に関わらず、運行管理システムと連動している案内システムが並べて持つ欠点です。

 

変な誤放送が流れたときには、なぜそんな案内が流れたかを考えてみると面白いかもしれませんね。

 

閑話休題

ここで気になることがもう一つ。記事の最初で書いたように、新快速の遅れはわずか5分です。大した遅れではありません。

 

では、5分遅れている新快速を待たずに普通が出発したとして、本当に普通電車が新快速より早く京都に着けるの?という疑問。気になりませんか?

 

机上の計算で調べてみました。

 

 

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普通が新快速を待つことなくダイヤ通りに運転したとして、京都着が1時05分。

 

 

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一方の新快速。次が終点京都で、ぶっ飛ばして0時55分着。

 

=5分遅れたとしても、理論上1時ちょうどには京都に着ける

 

∴そもそも普通が京都まで先着することはなかった

 

とんだ誤案内ですね。これにて一件落着(?)

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