収録ウラ話 - 名張行き普通のお話

「音鉄の朝は早い」。

今回の旅行で収録したある電車に関するお話です。
少々長いですがお付き合いくださいませ。



さて、早朝や深夜といった、まだ前日の返却や当日の朝ラッシュに向けた整理が行われるこの時間帯には、さまざまな日中に見られない設定が見られます。

その中の一つに明星駅始発、名張行き普通電車というものがあります。


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明星と言えば言わずと知れた車庫のある駅。

当然始発列車はこの駅起点に動きだすわけですが、それがまた厄介なわけです。


車庫は通常、都市部に作られません。土地の確保が難しいからです。

すると土地の安い郊外に作ることになるわけですが、これはつまり周辺に代替交通機関はなく、もちろん宿泊施設もない駅からしか乗れない電車ができるということを指します。

例にもれず明星駅は周辺に宿泊施設なし。たどり着くための手段もなし。陸の孤島です。


そしてお察しの通り、そういう電車に限ってレアだったりするから困りもの。

この明星発名張行きは現行ダイヤにおいて、山田線から大阪線へと乗り入れる唯一の普通電車なのです。

まごうことなくレアもの。また山田線のツーマン運転は珍しいですから、二重にレアという代物です。

名古屋・三重へ進出しておきながら、こういうめぼしいネタを逃す手はありません。

移動手段

この列車の収録に際し、いろいろな手立てを考えました。

一つはいっそ野宿してしまうというもの。明星駅は調べたら駅前に広場がありますから、ひっそりしていれば一夜なら越せそうではあります。

しかし明星駅は有人駅です。ばれたら絶対にやばい目で見られるのは明らか。

というか荷物をもって夜を越すのはさすがに不安です。避けて通れる危ない橋は控えるべきでしょう。

というわけでこれは却下。


次に考えたのが、伊勢市観光協会さんが貸し出しているレンタルサイクルを利用するというもの。

明星までレンタルサイクルで行くのも手です。
いちおう宿泊で借りる料金も設定されていますから、ホテルに止めさせてもらえれば問題ないはずです。

ではここで宿泊地とした最も近い駅、伊勢市から明星までの距離を調べてみましょう。


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距離:9.4km
 
時間:24分


朝一で頭も体も動いていない中、まして土地勘のない私にこれは無理に近いでしょう。

というわけでこれも却下。


最終手段として頼れるのはタクシーだけですが、深夜割増料金も加わるとすれば相当額になるのは目に見えています。

しかし年に数度とない収録の機会ですから、高くつくのは覚悟でタクシーを利用することとしました。

観光地という障壁

最初に電話したのは近鉄タクシーさん。

変に「近鉄ならいけるだろう」という安心感と期待を胸に、早朝の配車をお願いできるか聞いてみました。


「朝は6時からしか動いておりませんので…」


( ゚Д゚)……



そうです。ここは観光地、伊勢。朝の4時からタクシーに乗ろうなんて言う馬鹿はそうそういないのです。

頭の中であきらめかけたその時。


「その時間でしたら、名鉄タクシーさんなら動いているかもしれません」


一瞬で名鉄タクシーの電話番号を調べ、お電話をさせていただけました。するとどうでしょう、応対されていた方が「えぇ?!朝の4時にですか」と声を裏返して確認されたのはさておき、

「朝の4時20分、伊勢市駅北口ですね」

二つ返事で準備が整ってしまいました。

音鉄の朝は早い

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朝4時、伊勢市駅北口。

時間通りに来てくださったタクシーの運転手さんに明星までと伝えると、当然「何しに明星までこんな朝早くから?」という質問が当然来ました。

あと1時間待てば始発の伊勢中川行きが来て210円で移動できるところを、わざわざ4時からタクシーで移動しようといっているのだから当然です。

「鉄道が趣味で、始発電車を“とりに”明星まで行くんですよ」

「あぁ!なるほど、そっちの方でしたか」

撮りにはいきませんが録りに行くので問題ないでしょう( ˘ω˘ )


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明星に到着したのは朝の4時半ごろ。まだ線路の点検をしているような時間帯でした。

早朝からお勤めご苦労様です。


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そんなこんなで、紆余曲折を経てこの電車の収録を行いました。そういう意味で非常に思い入れが深い収録です。

朝の4時から伊勢市まで呼び出したタクシーの運転手様、また朝の5時から収録を快諾してくださった車掌様、大変ありがとうございました。

おかげさまで無事、いい収穫を得ることができました。

後刻談

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この列車の収録が思い出深いのはもう一つ。

実はこの電車が名張に着いた十数分後、これもまた一日一本しかない名張発名古屋行き急行が発車します。

6時台に名張から伊勢方面へ向かう唯一の電車がこれ。なので収録するかどうかにかかわらず乗ることにはなるため、どうせならと伊勢中川までこちらも収録しています。


こちらは何が印象強いかと言いますと、なんとこの電車の乗務員さんは明星発名張行きと全く同じ方なのです。

言い方を変えれば、明星から名張経由で伊勢中川まで車掌さんをストーキング。あちらからすれば気持ち悪いオタクの代名詞みたいな存在であったことでしょう。本当に申し訳ございませんでした。

車掌さんが快く録音を許可してくださる方だったのでよかったものの、そういう方でいなかった場合はどうなっていたことか…。

そういう面でも大変良い収録でした。



おそらくこちらの電車を録りたいという物好きを極めた方はいらっしゃらないでしょうが、もし収録されるという場合には、

名鉄タクシーさんは予約さえ空いていれば、朝の4時でも伊勢市駅周辺に配車ができること

・実際に乗車して名張についてからも同じ車掌さんにあたること

以上を覚えておかれるといいかと思います。


ただ…おすすめは決してできません。

タクシー代を軽く見積もって5,000円近くかけてでも一日一本の設定だから録りたい!という方はお試しくださいませ。


名張行き普通電車は9月初旬に投稿予定となっております。お楽しみに(*´∀`*)

それでは~!

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