JR京都線の接近ベル、須磨海浜公園駅の「かもめの水兵さん」、おおさか東線の旧メロディ、さくら夙川駅の「さくら」、そして2015年に変更されたJR神戸・京都・琵琶湖線、環状・大和路線の旧メロディ、昨年3月に更新された阪和線やJR宝塚・東西・学研都市線の旧メロディ…。
関西だけで見てもこれまでに消えた接近メロディは沢山あります。
これら消えたメロディのうちの一部は、条件さえそろえば今も聞けるかもしれない、というお話です。
■「簡易接近放送」とは
SUNTRASには大きく分けて2種類の接近放送があります。1つ目は通常聞くことができる詳細型放送の接近放送、もう1つが異常時に流れることがある簡易接近放送というものです。
今回の主題はこの簡易接近放送のお話です。まず簡易接近放送をご存知でない方は以下の動画をご覧ください。
簡易接近放送は単なる異常時には流れません。流れる条件は、
・駅側が設定で通常の接近放送を切った場合(ダイヤ乱れ等で自動放送が正常な案内をしない場合に実施)
もしくは
・自動放送装置(旅客案内装置)そのものが故障した場合(自動的に切り替え)
と、非常に限られた場面でした流れません。
放送の内容は「簡易」と付くだけあり非常に簡略的です。
【接近放送冒頭チャイム】◯番のりばに列車がまいります。ご注意ください。列車がまいります。ご注意ください。【通過メロディ4回】
※路線により文面に多少の差異あり
これが列車が完全に止まる、もしくは通過しきるまで流れ続けます。通過停車の区別すらもしません。
■簡易接近放送は何が特殊?
簡易接近放送は万が一の異常時に使用するもののため、通常の放送とは異なる仕組みで動作しています。
通常の放送は
「まもなく」「1番のりばに」「12時」「ちょうど発」「普通」「天王寺行きが」「8両で」「まいります」【接近メロディ】
と、細かく区切った音声パーツをつないで文章を作っています。最小限の文字パーツで多彩な放送を流すための知恵です。
一方、簡易接近放送は万が一の故障時に、列車の接近を感知しただけで全文を流せるよう、始めから終わりまでが一連で丸々登録されています。先ほどと同じ書き方をするならば、
「【接近放送冒頭チャイム】◯番のりばに列車がまいります。ご注意ください。列車がまいります。ご注意ください。【通過メロディ4回】」
こういう状態です。
JR西日本は確かに通常の放送用のメロディは変更しましたが、簡易接近放送のメロディは変更せずじまいでした。そのため現状として、2世代のメロディが同じシステムに混在する状態が生まれてしまっています。
■簡易接近放送のメロディは何に基づく?
これが今回の主題です。簡易接近放送のメロディは更新されていないということから、原則、放送導入時の放送に倣ってメロディが決まるという仮説を立てることができました。
この事例として非常におもしろいのが、先日投稿しましたおおさか東線の旧々メロディです。
おおさか東線は開業当初から現在と同じ自動放送システムを使用していますが、メロディは二度変更が行われています。
最初は環状線の旧メロディと同じものへの変更、二度目は昨年3月に行われた音色の変更です。では開業当初は何を使用していたのかと言いますと、東線専用のオリジナルメロディを使用していました。
このオリジナルメロディは開業から実に1年間しか使用されていなかったもの。それが今もシステム内に残っているというのです。
簡易接近放送のメロディがのりばごとに異なるというのは初めての事例ですし、そもそも「放送導入時の放送に倣ってメロディが決まる」という仮説に反します。
つまり少なくともいえることは「2番のりばは途中で音源が入れ替えられた」わけです。
この理由について、1番のりばと2番のりばでは何が違うかから仮説を立ててみました。
両のりばの違い。放送に詳しい方ならお判りでしょうが、上下線が違えば放送の声も違うんですね。
1番のりばの放出行きは男声、2番のりばの久宝寺行きは女声で案内が行われます。
1番のりばのみ簡易接近放送と通常の放送で声が入れ替わるわけです。
そのほかの路線ではきちんと男声ホームでは男声、女声ホームでは女声が流れるようになっています。
この女声しか流れないというのが後発的なものとすれば、
・本格導入時に簡易接近放送を何らかの理由ですべて女声に統一した
・男声ホームののりばでは女声への更新が行われたが、この際に入った新しい音源は環状線の旧メロディであった
⇒もともと女声であった1番のりばではオリジナルメロディが残り、男声で案内される2番のりばでは環状線の旧メロディが流れる
という説を立てることができます。どうでしょう、可能性としてありえなくもないのではないでしょうか。
結論として
・簡易接近放送のメロディはふつう導入当時のメロディが流れる
・音源の変更がおこなわれることもある(行うことが可能である)
以上のことがわかります。
さくら夙川駅、須磨海浜公園駅で簡易接近放送が扱われた事例が探しても見当たらず検証できてはいませんが、前者は著作権が関連しているシビアな問題、後者は真っ先に変更が行われたモデル駅的存在。両駅ともメロディに関しては一筋縄でいく駅ではありません。
簡易接近放送の音源も望みはかなり薄いでしょう。
もし両駅で簡易接近放送を聞かれた方、もしくは山崎駅で簡易接近放送を聞かれた方いらっしゃいましたら、どのようなものだったかお知らせくだされば幸いです。
それではー!