和歌山、白浜方面と大阪を結ぶ特急「くろしお」号。基本的には新大阪駅始発ですが、京都駅から出発する列車が1日1本だけ存在します。
くろしお23号。京都発 白浜行きの列車です。
この列車を案内する予告放送の
「くろしお と表示した 黄色の 各号車標のところでお待ちください」
この一文に注目したいと思います。
黄色以外存在しないのに「黄色の」?
というのも、わざわざ「黄色の各号車標」のように色を案内しているにもかかわらず、京都駅の6,7番のりばに用意されているくろしお号の乗車位置は黄色のものしかないのです。
くろしお号は車両形式によってドア位置が異なるため、新大阪駅や天王寺駅など電光式の乗車整理標がない駅では黄色・赤色・青色の3色で乗車位置を区別しています。
京都駅もくろしおが発着するホームは電光式の乗車整理標が無いため、乗車位置の案内では「黄色の各号車標」と色も含めて案内していますが、京都駅発着のくろしお号はこの1本のみであり車両形式も統一されていることから黄色以外の乗車位置はありません。
ではなぜわざわざ色を読み上げるのでしょうか。
答えは過去に存在したこの列車に隠されていそうです。
くろしお3号
まだ「くろしお」に381系列車が残っていたころのお話なのでずいぶんと前の話にはなるんですけども、実は京都発着のくろしお号が複数本設定されていた時代がありました。
記憶では朝に1本、夕方に2本で計3本設定されていたかと思います。その朝の1本がこのくろしお3号。今は無き京都発、新宮行きの特急列車です。
そのころの京都駅では黄色以外のくろしおの乗車位置も用意されていたのです。
さらに色と合わせてアルファベットでも区別されており、
「くろしおAと表示した黄色の各号車標」
「くろしおBと表示した赤色の各号車標」
「くろしおCと表示した青色の各号車標」
このような放送が流れていました。
奥に映っているスカイブルーの103系はさておき、写真の右側中ほど、軒下にぶらさがっているくろしおの乗車札が見えますでしょうか。
このころの名残でどうやら乗車位置の色も読み上げる方式となっているようです。
京都発着のくろしおは減便の一歩をたどっており、今ではたった1本になってしまいました。最期の時を迎えるまで伝統を受け継ぎ、かつて複数本設定されていた時代があったことを遺してほしいと思います。