JR西日本が関西地区の主要線区に導入しているSUNTRAS型放送と呼ばれる詳細型放送。
最近では規制が強化されたため、ホームで密着録音するのは屋根が低い限られた駅でしかできなくなりましたが、待合室や階段等に設置されている位置が低いスピーカーについてはいまでも容易に密着録音が可能です。
そこで密着録音していると…バックから聞こえる“あるメロディ”が気になる方も多いのではないでしょうか。
分かりやすい例で言うとこんな感じです。
バックで通過メロディが流れていますよね。
上記のは待合室で録音した放送ですが、もちろんホームのスピーカーでも流れています。
自動放送に混ざって聞こえる旧メロディ。果たしてこのメロディの正体は何なのか、気になりませんか。
これは決してほかの乗り場の放送が混線しているわけではなく、確かに意味があって流れているんです。
答えは放送システムに何らかの異常が発生した場合に確かめることができます。
非常時用音源
機械にトラブルはつきものです。PCのような複雑な電子機器を組み込んであるものは特に前触れなく発生しやすく、復旧に時間を要することもあります。
駅放送設備も当然その類の機械ですから、何らかの故障で一時的に放送設備自体が止まってしまう恐れもあります。
では駅放送の設備にそのような事態が発生した際、はたして旅客への情報提供が全く行われなくなっても良いかと言うと当然そうではありません。
列車が来ることの警告すらないまま列車を入線させた場合、接触事故などけが人が出るような事態が発生する恐れもあります。
そこで放送設備が何らかの故障で動かなくなってしまった時のために、SUNTRAS型放送が導入されている各駅では非常時用の放送が用意されています。
その放送がこちら。
「電車がまいります」と言っているのに通過メロディが流れていたり、「黄色い点字ブロック」ではなく「黄色い線」と流していたり、そもそもメロディの音程が違ったりメチャクチャですよね。実はこれこそがバックで流れていた通過メロディの正体です。
非常時用音源は通常の自動放送が機能しないときに流れるものです。でも通常の自動放送がいつ流れなくなるかなんてわかりません。なのでバックでずーっと機能しており、万が一の事態に備えて列車が接近するたびに流れているのです。
また同じ装置で稼働させていた場合、片方の設備が故障すると一緒に倒れてしまいますので意味がありません。そのため通常の自動放送とは完全に分離された別の系統で動いています。
分離されているということは…です。
放送装置が完全に分かれているわけですから、通常時の自動放送を管理している装置側でメロディが更新されていても非常時用音源の方には反映されません。
そんなわけでおおさか東線の高井田中央~新加美間では開業当初のメロディが残っている駅もあったりしちゃいます。
バックで聞こえる通過メロディの謎。すごくロマンが広がる秘密がそこには隠されています。
JR京都線の各駅(京都駅除く?)では新メロディ導入前のベル音が流れますし、JR神戸線の各駅でも旧「さざなみ」が聞けます。
完全に駅から消えた訳ではない旧メロディ。彼らが本当に消える日はいつの日か来るのでしょうか。