JR金沢駅 在来線ホーム 自動放送概要(2021, 02)

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今回は、石川県は金沢駅の自動放送をご紹介します。

 

 

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手は一切抜かない本格派の放送

金沢駅の自動放送は、北陸地区の自動放送では珍しく(失礼)、かなり手の込んだ放送になっています。

 

日英2か国語は当たり前、音声は機械合成ソフトではなく肉声吹き込み、接近メロディ・発車メロディあり、マナー啓発放送ありという、欲張りな放送です。

 

後で詳しく触れていますが、英語放送については、松任敦賀間の主要駅に導入されている、校正された様子がかけらも見られない英語放送と比べると失礼なくらいちゃんとしてます。

 

また、列車の到着前には、両数や乗車位置を案内する接近予告放送も流れます。

 

放送開始のタイミング

接近予告放送

列車到着の直前に2回流れます。放送の開始時刻は不明ですが、到着の約2分ほど前、だいたい前駅発車(通過)を目安に流れるようです。

 

 

1回目の放送と2回目の放送はかなり間髪入れずに流れます。だいたい1回目の放送が終わって6~7秒後に2回目の予告放送が流れる感じです。

2回目の予告放送は、たまに接近放送と被って途中で切れることがあるので、事前から構えておくのが吉です。

 

接近予告放送では、基本的には両数、乗車位置の案内が、特急の場合は車内販売の有無*と、指定席乗車口から自由席車両への割り込み乗車お断りの啓発案内が流れるようになっています。

*…大阪・名古屋方面の特急でのみ案内。

 

なお、一部のサンダーバード号に限り、接近予告放送で停車駅案内も流れることを確認しています

確認できたのは、途中停車駅が極端に少ない速達タイプのサンダーバード46号です。速達タイプの列車では停車駅が流れるようになっているのかもしれません。

 

接近放送

かなりぎりぎりまで粘って流れます。なので大阪方から来る列車など、メロディが流れるころにはすでにホームに差し掛かっている場合もあります。

 

到着放送

メロディが止まって約3秒後に流れます。当駅止まりの場合には駅名連呼と乗換案内が、金沢を通して運転する列車では駅名連呼と列車案内(種別、行き先の案内)が入ります。

到着放送でも英語放送が用意されています。こちらは、乗り換え案内で触れられる路線名が変わるのみで、文面自体は全列車共通です。

 

当駅始発の列車の場合は、このタイミングで停車中放送と全く同じ文面の放送(英語アリ)が流れます

 

停車中放送

出発時刻から逆算して約3分ごとに停車中放送が流れます。ただし、何分前に1回目の放送が流れるのかは不明です。最多で3回は流れることを確認しています。

 

出発放送

放送よりも発車メロディがメインに近いです。「加賀百万石」といわれるように、古くから城下町として栄えてきた金沢は、「輪島塗」をはじめとした漆器、「箔」「和紙」の生産など、伝統工芸品が数多く存在します。

「琴」もその一つ。金沢駅では、琴の美しい音色が列車の発車を知らせます。

 

発車メロディがかなり長い(51秒間鳴動・長さ固定)ため、出発時刻の1分前から流れ始めます。

 

発車メロディは2種類あり、偶数番線と奇数番線で旋律とテンポが若干違います。

偶数番線のメロディを基準に長さが同じになるよう調整されているため、奇数番線の発車メロディは、最後が中途半端な形で切れて終わります。

 

出発放送の文面は次のような形です。

 

まもなく3番のりばから、普通列車 小松行きが発車します。

ご注意ください。

 

Thank you for using Kanazawa station.
金沢駅をご利用ありがとうございます

The local train bound for Komatsu will soon be departing from track 3.
まもなく、普通列車の小松行きが、3番線から出発します

Thank you.

 

出発放送にも英語放送が付帯します。ちなみに放送文は、日本語よりも英語の方が尺が長くて丁寧です。

 

ちゃんとした英語放送

金沢支社が導入した英語放送というと、松任敦賀間の主要駅で聞くことができる、合成音声ソフトを活用した自動放送が印象強いですよね。

 

 

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もともとこの線区の特急停車駅には東海道型放送が導入されていましたが、2017年のダイヤ改正を機に、一斉に合成音声の放送に更新されました。

 

その折に英語放送も導入された、までは良かったのですが、これがまあ酷い有様です。

一文中に動詞が2つ以上出てくる、主語が単数なのに"are"を使う、といった中学生レベルの文法ミスは当たり前。

挙句「米原行き普通電車の、米原経由の新快速播州赤穂行き」という、訳の分からない案内をしだしたり、とにかくめちゃくちゃな英語放送が流れるんです。

 

では、金沢支社が管轄する駅の中で最も大きい金沢駅はどうでしょうか、放送文を見てみます。

 

 

■12:06発 普通 富山行きの場合

The local train departing at 12:06 p.m. bound for Tomari via Isurugi, Takaoka, and Toyama will be arriving at track 5.
午後12:06発の、石動・高岡・富山経由泊行きは、5番線にまいります

Boarding locations are indicated by a white line and the numbers 3 and 4. Please form two lines to board the train.
乗車位置は、3番と4番で示された一本の白線です。2列に並んでください

 

基本的にはSUNTRAS型放送の英語放送を引用しています。

下線部:×"a white line"→〇"white lines"「3番と4番の一本の白線」となっているので、誤った表現です。白いラインは複数本あるため、複数形にするのがふつうです。

 

■13:48発 しらさぎ10号の場合

The Limited Express Shirasagi 10 departing at 1:45 p.m. bound for Nagoya will be arriving at track 5.
午後1:45発の特急しらさぎ10号は、5番線にまいります

Cars 7 through 9 are bound for Maibara. Cars 1 through 6 are bound for Nagoya.
7号車から9号車は米原行きです。1号車から6号車は名古屋行きです

Cars 5, 6, and 7 are for passengers without seat reservations.
5,6,7号車は座席指定をお持ちでないお客様のための車両(自由席)です

 

途中駅での切り離しがある場合の放送です。きちんと対応していて驚きました。簡潔で良い放送ですね。

 

■13:27発 サンダーバード17号(切り離しあり)の場合

The Limited Express Thunderbird 17 departing at 1:27 p.m. will be arriving at track 7.
午後1:27発の特急サンダーバード17号は、7番線にまいります

Cars 1 through 6 are bound for Wakuraonsen. Cars 5 and 6 are for passengers without seat reservations. Cars 1 through 4 are reserved.
1~6号車は和倉温泉行きです。5,6号車は座席指定をお持ちでないお客様のための車両(自由席)です。1~4号車は指定です

Cars 7 through 12 will be uncoupled at the station. Passengers may not board this train.
7~12号車はこの駅で切りはなします。この電車にはご乗車になれません

 

切り離しの案内もお手の物です。切り離しの場合、日本語でも英語でも、冒頭の列車案内では行き先が消される形になり、変な列車だとわかりやすくなっています。

 

とはいえ、せっかくこだわった切り離し放送を用意しても、富山まで運転する「サンダーバード」「しらさぎ」がなくなったいま、切り離しを行うのは和倉温泉行き1日1本のみとなりました。

 

■接近放送

全列車固定メッセージです。

Your attention, please. A train will be arriving at track n. Please stay behind the yellow line on the platform.

 

SUNTRAS環状システムの放送文を参考にしたようです。

 

■到着放送

全列車固定メッセージです。新幹線の最終出発後は、乗り換え案内から新幹線が削除されるとかはあるかもしれません。

Thank you for riding with us today. We are now arriving at Kanazawa station. Please change here for the Shinkansen or JR Hokuriku Line (*IR Ishikawa Railway line). Thank you.

 

*列車の来た方面により、乗り換え路線が変わります。

下線部:すでに到着しているのに「只今到着します」はどうなんでしょう…。

 

■停車中放送

The train stopped at track 5 is the local train departing at 12:06 p.m. bound for Tomari via Isurugi, Takaoka, and Toyama.

 

合成放送だと変なことになっていた分詞の形容詞的修飾が修正されています。

 

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とまあ、何か所かおかしいところはあれど意味は通じますし、金沢駅の英語放送は普通にまともな放送文なんですね。

 

金沢支社管内の他駅の合成放送は、2017年改正から使用開始、金沢駅の英語放送は2019年から使用開始となったようですので、あまりにひどすぎた放送の反省を生かして、きちんと校正してもらったのでしょうね。

 

 

ところで、男声の英語放送の声、近鉄の駅男声英語放送と声優さんが同じではないかと勘繰っているのですが、どうなのでしょう。

 

エモすぎる駅放送

金沢駅の放送はとにかく“エモい”です。形容するならば、最新技術で復元した旧時代の自動放送といえるもので、この10年で導入された放送案内とは思えないようなフレーズが多々見られます。

金沢駅の放送を紹介する上で欠かせないエモ所をご紹介します。

 

「金沢始発の」

金沢始発の特急列車は、接近予告放送で「金沢始発の特急〇〇号」のように、当駅始発列車であることが案内されます。

 

JR西日本ではふつう、次に来る列車が当駅始発かどうかを自動放送では案内しません。折り返しの場合のみ、進行方向が変わることを念頭に案内をしますが、回送されてきて当駅始発になるような場合は特に案内がありません。金沢駅の放送はかなりのイレギュラーといえます。

 

といっても、金沢始発“ではない”特急はサンダーバード1往復のみで、しらさぎ能登かがり火、ダイナスター全便、そして大半のサンダーバード号は金沢始発の列車です。

ではなぜ案内するのか。かつて北陸新幹線の開業前は、和倉温泉始発に加えて、富山始発の「しらさぎ」、「サンダーバード」号が運転されていました。新幹線の開業に伴い、富山発着の列車は廃止されてしまいましたが、自動放送はその当時の名残として、金沢始発がほぼ全てを占めるようになっても案内をし続けているようです。

 

「ドアを閉めて車庫に入ります」「ドアを閉めて構内に引き上げを行います」

回送電車がどこに行くかなんて知ったことではないですが、金沢駅はそこまで細かく旅客に教えてくれます。取り上げたい点は、その詳しさです。

 

「車庫に入ります」というフレーズは、わりと聴く機会も多いかと思います。では、「構内に引き上げを行います」というフレーズはどうでしょう。「構内に引き上げ」、そりゃなんぞや。

要するに「駅のすぐ近くにある留置線にいったん入るで」ということなのですが、旅客が誰も必要としていなさそうな回送列車の行方まで、事細かに教えてくれるのです。

 

「黄色い点字ブロックまで下がってお待ちください」「黄色い点字ブロックまでお下がりください」

かつて、まだ「白線の内側」という表現が主流であった頃は、停車する電車では「白線の内側でお待ちください」、通過する電車だと「白線の内側へお下がりください」のように、停車するか通過するかで案内を使い分ける駅放送が多数ありました。

 

こういう細かい配慮は、「白線」から「黄色い線」、「黄色い点字ブロック」と変更される過程で無駄と判断され、ほとんどの鉄道会社が使用を取りやめてきました。

 

金沢駅では、この表現の区別が新放送にもしっかり継承されており、通過電車の接近時は「お下がりください」、停車する電車が近づいたときには「下がってお待ちください」と使い分けます。

ただし、回送など非営業列車の接近時にも、「下がってお待ちください」と流してしまいます。

 

"at twelve noon"

個人的に一番感心したのがこの英語放送。12時ちょうど発の電車だけの特別な案内です。

 

何時ちょうどに発車する列車は、たとえば午前9時ちょうど発の電車であれば、"departing at night a.m."のように案内されます。これが通常。

正午ちょうどに発車する電車に限り放送文が変わり、午前・午後を指すa.m.、p.m.ではなく、正午を表す"noon"を付けて、出発時刻の案内が"departing at twelve noon"となります。

 

わざわざ12時ちょうどのためだけに、このような特殊な案内パーツを用意している事例は非常にまれであり、金沢駅の放送がいかに英語放送にも力を入れているかがうかがえます。

 


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金沢駅各ホームには待合室があり、待合室内のスピーカーから放送が流れるので、密着収録が可能です。

ただし、4番のりばの放送のみ流れないのでご注意。

 

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