東海道新幹線 コンコースの構内放送

ずーっと録音したいと思っていた東海道新幹線の駅放送を、疲労でまともに考えられない頭に任せてノリと勢いで録音してきました。



▲夕の部(15~16時台)



▲夜の部(19~21時台)


東海道新幹線の終点であり、山陽新幹線の起点でもある新大阪駅で録音してきました。

JR東海といえば統一美に重きを置き、対するJR西日本はバラエティに富んでいることで有名です。

「こだま」「ひかり」「のぞみ」しかなく、全列車16両、停車駅もある程度統一されている東海道新幹線に対し、
「みずほ」「さくら」も走り、8両編成の列車も存在し、停車駅もバラバラな山陽新幹線

放送の内容の違いにご注目ください。

ホームの放送とコンコースで流れる放送

東海道新幹線のホームにあるスピーカーは安全柵の直上にある駅が多く、かつ位置も高いため、密着させて録音するのは不可能です。そこで今回はコンコースで流れる放送を録音してまいりました。

ホームで流れるのは
・接近放送
・到着放送(駅名連呼)
・停車中放送
・出発放送
*…長時間停車を行う場合に放送
の4種類。一方コンコースで流れるのは、

・接近放送
・停車中放送

の2種類のみです。また同じ接近放送でも、

「新幹線をご利用くださいましてありがとうございます」
「安全柵の内側までお下がりください」

の2つの文はコンコースでは流れませんし、単なる当駅止めや回送の放送も流れません。

コンコースで流れる放送は、あくまでコンコースで待ち合せている旅客へ向けての案内ですので、最低限の案内しか行わないわけです。

接近放送は到着のおよそ4分前に、停車中放送は出発時刻から起算して30分前から5分毎に流れるようになっています。
なお複数の列車の放送が集中した場合、先に流れることになった放送から順番に流れるため、放送が混み合っているときは流れ始めるのが遅くなります。

お盆の帰省ラッシュUターンラッシュの時間帯は、それはもう入線しきってから接近放送が流れだしたり、発車した電車の停車中放送が流れたり…
…なんてことは天下の東海様ですからないと思いますが、複数列車の放送が流れるタイミングはとにかく放送のタイミングがずれるため、狙って収録するのが難しいです。録りっぱなしがよろしいかとおもいます。

録音に際し

まずは放送が流れるスピーカーの見分け方からまとめておきます。

コンコースの通路上にはあちこちにスピーカーが設置されており、それぞれ識別のために青、オレンジ、黄色のいずれかのシールが貼られています。自動放送は黄色のシール(改札外の一部区画では青色のシール)が貼られているスピーカーから流れます。

トイレ内や階段上など、天井が比較的低い位置に設置されているスピーカーのうち数カ所だけ、黄色のステッカーが紛れているところがあります。一脚で容易に密着できますので、導線を邪魔しないようタイミングを計って録音しましょう。


続いて音質等について。

お聞きいただくとわかると思いますが、全体的に少し音が割れています。音が割れるほど音量が大きいとは言い難いため音源自体に問題があるようです。

あまり透き通った声質だと雑音が多い空間、特に新幹線コンコースのような反響してしまう空間では聞き取りにくくなるケースも考えられますので、意図的に音質を落としているのかもしれません。


また放送稼働中、カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ…というノイズ音がバックで流れ続けます。意識すると耳障りですが、そもそも密着録音してひたすら聞いて楽しむという変態的な需要は見越していないので我慢しましょう。

接近放送の内容

【通常の列車の場合】
列車情報
「まもなく20番線に、n時n分発、こだまxxx号、博多行きが到着します」
号車番号
「電車は前から1号車、2号車の順で、一番後ろが16号車です」
車内設備
グリーン車は7号車、8号車、9号車、自由席は1号車から3号車です」
喫煙設備
「この電車は全席禁煙となっております。おタバコを吸われるお客様は喫煙ルームをご利用ください。普通車の喫煙ルームは3号車、7号車、15号車、グリーン車の喫煙ルームは10号車にあります」
「おタバコが吸える自由席は15号車と16号車です」
「この電車は全車禁煙です」
両数(接近放送のみ)
「電車は16両編成です」
「電車は8両編成で、ホームの中ほどに止まります」
停車駅
そのほか雑案内
「この電車の1号車前寄りと、8号車後ろ寄りには、乗車口がありませんのでご注意ください」


【折り返しを行う列車の場合】
列車情報
「まもなく20番線に、こだまxxx号、が到着いたします」
「この電車は当駅止まりです」
列車情報
「このあと、この電車は折り返し、上り/下り、nn時nn分発、こだまxxx号、博多行きとなります」
両数(接近放送のみ)
「電車は16両編成です」
「電車は8両編成で、ホームの中ほどに止まります」


接近放送は上記のパターンで流れます。

放送は2パターンあり、他駅発の電車や当駅始発の場合は、一般的にイメージする接近放送の流れで案内しますが、
新大阪で折り返し運転を行う場合は特殊な案内が流れます。

また折り返し運転を行う場合、雑案内は両数の案内のみしか流れません。停車中放送も流す前提で放送が設計されているようですね。


ちなみにこの両数の案内、新大阪駅でしか流れない案内のようです。

東海道新幹線を走る電車はすべて16両に統一されているのに対し、山陽新幹線では500系をはじめ8両編成で運転する列車があるため、特別に用意しているのでしょうか。

両数の案内を挟む位置も中途半端で後付け感は拭えていません。


この単調な案内が続く放送文ですが、視点を変えてみると奥が深い、非常に考えられた放送文になっていることがわかります。

たとえば車内設備の案内を見てみましょう。グリーン車と自由席を比べた場合、自由席の方が利用者は圧倒的に多いです。ならば
グリーン車は7号車、8号車、9号車、自由席は1号車から3号車です」
ではなく、
「自由席は1号車から3号車、グリーン車は7号車、8号車、9号車です」
の方が分かりやすいはず。

ではなぜグリーン車を先に案内するのか、その謎を解決する放送文こそがこれです。

グリーン車は7号車、8号車、9号車、自由席は、グリーン車を除いたすべてのお席です」

この場合に「自由席はグリーン車を除いたすべてのお席、グリーン車は〜」と流すと、通じなくはないですが“くどい”放送文になってしまいます。普通車全車自由席でも同じ構文で流せるよう工夫された放送文であることがわかります。


喫煙設備に関する放送も、喫煙車がある場合には「おタバコが吸える自由席」しか案内しません。
喫煙車指定席を希望するなら事前に指定しているわけですし合理的です。

山陽新幹線では英語放送が導入されている駅も少なくありませんが、東海道新幹線は頑なに日本語一本にこだわっています。

JR東海さんはよく言えば伝統にこだわる、悪く言えば保守的な考えが強い会社ですので、新幹線の放送と言えど日本語オンリーにこだわってきました。

ところがインバウンド需要が過去例をみないほど増え、さらに東京オリンピックを控えた今、ついにあの東海さんが折れ、今年度中に東海道新幹線のすべての駅に英語放送が導入することが決定しました。近くこの放送は旧放送となるのです。


さらに東海道新幹線と言えば、次の改正で全列車がN700系に統一され、700系が役目を終えることも決まっています。
「おタバコを吸える自由席」もまもなく無くなろうとしているのです。
山陽新幹線では今後も残ります。


今回東海道新幹線の駅放送を録音しようと思ったのは上記を記録するためでした。

京都駅と新大阪駅の構内を見て回り、たまたま録音しやすい立地のスピーカーを新大阪駅構内で見かけたので新大阪で録音しましたが、結果的に新大阪でしか聞けない両数の案内を録音できたこと、九州新幹線方面の列車も記録できたのは良かったところです。

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