「出発信号機」。
文字通り駅や信号場などで列車に対し出発を許可するために設置される信号機で、当然のことながら絶対遵守の信号です。
近鉄では基本的に出発信号設置駅では、「発車承認合図器」と呼ばれるブザー音を発する機器が設置されています。
どういった習わしでこうなったのかは不明ですが、出発信号が青に変わっても承認合図器が点灯しない限りは発車できないという規定まで存在します。
そして近鉄の出発信号機ですが、こちらは自動放送および発車承認合図器の加減で電車が停車する場合は、発車時刻になるまで赤の現示をし続けます。
※どちらも信号機と連動しているためです。
以上の点から、近鉄の出発信号はかならず発車承認合図器を伴って設置され、列車が到着するまでは赤現示を維持し続けます。
これが基本。
…なのですが、やはり「特例」が何にも存在するんですよね…。
今回はその特例の一つ、二上山駅の変わった出発信号をご紹介します。
こちらが二上山駅の出発信号。
先ほど書かせていただいた基本動作に従っていれば、本来青現示の出発信号を構内踏切から撮影できません。
つまりこの出発信号は「出発」という名を背負っていながら、近鉄内の信号動作で分類した場合の役割は「閉塞信号」と何ら変わりません。
ただ、やはり「出発信号」は「出発信号」。
貨物線があった名残として側線が用意されており、そこに保線車両が控えており、深夜帯にそれが本線へ進入する際にポイントが切り換えられた際に赤にするために今も撤去されずに残っているのでしょう。
…もちろんこれだけで紹介したというわけではありません。その程度のネタであれば高田市にも同じく「出発」と書かれているにもかかわらず、閉塞信号と同様に動作する出発信号が存在するのです。
この出発信号の「ある部分」に違和感を感じたというあなた、鋭い観察力をお持ちで。
実は近鉄の本線側の出発信号には決まって「手信号代用」と言われる補助信号が設置されているのですが、こちらにはなぜか設置されていません。
この点からしてもすでに特殊なのですが、最大の「特例」は信号下の標識にあります…。
二号線 「上り」 出発。
うん、おかしい。非常におかしい。
まずこの駅、出発信号は二号線にしか設けられていません。
吉野線内の行き違い駅のように「出発」の二文字だけを書いていればいいものを、わざわざ「二号線上り出発」とまで表記しているのです。
しかも「二号線」の「二」だけ明らかに字体が異なりますし、文字の大きさも統一されていないなどおかしな点は多いですが、何より違和感がすごいのが「上り」の表記です。
「どこがおかしいかわからない」という方のために、近鉄の出発信号の標識が方面別に分かれる場合はどういった表記になってるのか、ご紹介しておきます。
「◯◯方」。
これが近鉄全線で統一されている表記なのです。
それがこの駅のみ「上り」という特殊な表記になっているのです。
近鉄中を探してもこれ一基のみ。いったいなぜこういった特殊な出発信号の標識が設置されたのか…。気になるところです。
それでは~