2017年10月3日、午前11時20分。
定刻より1分遅れてホームにやってきたのは、環状線の顔ともいえるオレンジ色の103系。
大阪環状線の一時代をほぼ半世紀に渡り担った偉大な功績者が、同時刻をもってその任務を無事終えました。
今回は、日常の中の通勤電車として通常ダイヤで運行し車庫に引き上げるまで、103系最後の一日を車内放送から追いかけてみました。
その別れは往年の名車と比べれば、あまりに質素なものだったかもしれません。しかし本来煩雑に扱われる通勤電車としては華々しい最後を遂げたと言えるでしょう。
特別な運転をすることはなく、いつもと同じ環状線の普通電車に充当され、そしていつものように京橋から車庫に入り、その一生を終えました。
充当された最終運用
最終日の運用は環状線07M運用です。
あまりに遅くまで運行を続けるとダイヤ乱れが長引く恐れがあること、また京橋へ入庫する運用が限られていることから、もっとも集まる人が少ないと見込まれる平日昼間のラストランとなったようです。
当日は朝ラッシュの時点で鉄道ファンが集中したため多客遅延が発生し、最大で7分の遅れとなっていましたから、早々の幕引きをして正解だったといえるでしょう。
なお各列車の詳しい時刻については先ほどの動画のリンク先、YouTubeの方に記載しておりますので、そちらを合わせてご確認ください。
当日の雰囲気を味わっていただけるよう、音声編集は長時間停車中の部分のカットや車掌名のカットなど最低限に留めました。最後の103系の勇姿をどうぞお楽しみくださいませ。
確認できた文面は3種類です。
パターン1
只今ご乗車いただいております103系電車は、本日(10月3日)を持ちまして大阪環状線を卒業いたします。オレンジ色の電車として親しまれてまいりましたが、その役目を新型車両323系に譲ります。
1969年、昭和44年12月10日のデビューから48年、長きにわたりご利用くださいまして、まことにありがとうございました。
パターン2
ご乗車ありがとうございます。皆様の足となり、暑い日も寒い日も始発から最終まで多くのお客様にご利用いただき走り抜けたこの103系も、今日、大阪環状線を卒業いたします。長きにわたり長きにわたりご利用いただき誠にありがとうございました。これからは新型車両の323系が、地域とともに大阪の街を盛り上げてまいります。
流れるポイント
2周目 大正発車後
3周目 寺田町発車後
3周目 福島発車後
2周目 大正発車後
3周目 寺田町発車後
3周目 福島発車後
パターン3
ご案内いたします。みなさま、ご乗車中のこのオレンジ色の電車は、本日をもって大阪環状線を卒業いたします。
わたくしも幼いころから環状線のオレンジ色の電車を見て育ち、車掌になることを夢見ておりました。
これからは新型の323系とともに大阪の街を走ってまいります。
流れるポイント
3周目 京橋発車後
3周目 弁天町発車後
3周目 京橋発車後
3周目 弁天町発車後
最も用いられた文面はパターン1で、特に最終運転を担った車掌さんはこれのみを流してらっしゃいました。
また車掌さんの思い出もこもったパターン3は、この車掌さんのオリジナルらしく3周目の運転でのみ実施されました。
子供のころからのあこがれの電車の最終運転日に車掌を任される、なんとすばらしいことでしょうか。
いつもの世界の非日常
変わって京橋到着時に流れた、最後の案内放送が次の通りです。只今ご乗車いただいておりますオレンジ色の103系電車は、本日を持ちまして大阪環状線から引退いたします。
1969年、昭和44年12月10日のデビューから走り続けた距離は9億5000万km。木星まで到達する距離と言われています。
多くのお客様を乗せて走り続けてまいりましたが、その役目を新型車両323系に譲り、次の京橋到着を持ちまして48年の長い歴史に幕を下ろします。
1969年、昭和44年12月10日のデビューから走り続けた距離は9億5000万km。木星まで到達する距離と言われています。
多くのお客様を乗せて走り続けてまいりましたが、その役目を新型車両323系に譲り、次の京橋到着を持ちまして48年の長い歴史に幕を下ろします。
今日もJR西日本大阪環状線、また“いちまるさん”系、“ひゃくさん”系電車をご利用くださいまして、まことにありがとうございました。
まもなく終点京橋、終点京橋に到着です。
車内にお忘れ物をなさいませんようご注意ください。この電車は回送電車となります。
文面から察するに、通常の案内放送にパターン1をアレンジしたものを組み合わせたようです。
この「通常の案内放送」というところが、今回の103系電車のラストランにおいて非常に大きな意味を持ちます。
1周目の車掌さんは熱が入りすぎて特殊な案内を次々と行ってらっしゃいますが、そのほかの車掌さんはいつもと変わらないアナウンスを行い、その合間に引退告知のみを行ってらっしゃる点にお気づきでしょう。
103系は単なる通勤型車両です。
人々の足は変わっても、そこに103系がいなくなっても、多くの方にとっては当たり障りがない範疇です。
だからこそ変化を感じさせず、ただ居なくなることだけは知ってほしいとばかりに簡単な告知にとどめています。
そしてこの京橋到着時の案内こそは、そんな彼が。
桜島発京橋行きのラストランにおいてもいつもと変わらず、日常の一風景を演じていた彼が、その最後に唯一別れを見せた放送です。
簡素なお別れがこれほどまでに心に響く車両も珍しいでしょう。
およそ半世紀にわたっての運行、本当にお疲れさまでした。
暗い話題続きになりますが、今度は来年度に引退を控えている201系のことも考えないといけません。
なにせ201系が引退してしまうと、環状線の周回電車で肉声放送を扱う電車が限りなくゼロに近づいてしまうことになるんです。
ある意味で洗練された肉声放送のテクニックが失われてしまうのも惜しいところ。
「いつも」が「かつて」になる前に、そろそろ記録し始めないといけなさそうですね。
それでは~!