鶴橋戦争 〜野良サインvs何も見ない旅客〜

以前、天王寺駅の「限りなく現行サインシステムに似せた野良サイン」(駅員手製の案内板)をご紹介しました。



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あれから半年。天王寺駅ではリニューアル工事が進んでおり、ご紹介させていただいたものも大半が姿を消しました。

とはいえサインシステムに似せた仮の手製サインが、本物のサインシステム導入とともに役目を終えたというだけのお話です。

駅員さんのこだわりある野良サインはもう大阪から消えたかと思った矢先、思わぬ刺客が登場しました。




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環状線近鉄線との乗換駅、鶴橋では以前からかなり議題となっている問題が存在します。

それが「鶴橋で降りる旅客が誤って近鉄線との乗り換え口を通り抜けてしまう」というもの。誤乗ならぬ誤入場が問題になっています。


以前から問題だったのになぜ最近になって対策に乗り出したか。

これが皮肉にもICカードの普及によるもので、きっぷであれば有効区間は鶴橋までですから弾かれていたものが、ICカードでは「近鉄への乗り換え」として自動処理されてしまうため、無自覚のうちに出られなくなってしまうというものです。

ICカード利用者が増加するにつれてこの乗換間違いが増加してしまうという、予想外の弊害が発生しています。


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構造が悪いのも事実です。

電車を降りて目の前に改札があれば、出口と思って走りこんでしまう気持ちもわかります。


とはいえ乗換改札をくぐっても外には出られませんから、苦情を受けた(かはさておき)鶴橋駅も対策に乗り出しました。

鶴橋駅が考えに考えた結果、どういう対策に行きついたのかを見ていきましょう!

1)大きな垂れ幕を掛ける
2)立て看板を動線上に配置する

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1つ目は垂れ幕をどーんと配置してしまって、いやでも見えるようにしてしまおうという作戦です。

通常のサインシステムの形式を損なわない範囲でできる唯一の手だったようですが、そもそも見ない人はそれすら視界に入らないということですぐに新しい手が打たれました。


それが2つ目、「近鉄線のりかえ」と書かれた立て看板を改札機の前にランダムに配置するという技です。「邪魔だなぁ」と思わせて視線を誘導することで、乗り換え口だとアピールするのが狙いなようです。


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これにはイコちゃんも体を張って全面協力。

2枚目、七色に白い星を配置しておいて、さらに同系色の黄色で文字を書くという読ませる気があるのかないのか微妙なラインの完成度が、野良サインならではの味を出しています。

3)鳩よけのようなポップ作成

(2)までは「いい作戦だなぁ」と思ってみていましたが、ここから鶴橋駅の暴走が始まります。

「もっと出口を目立たせよう」という執念に燃える鶴橋駅。階段をこんな感じにアレンジしちゃいました。


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ラミネート張りした出口掲示をいくつも作って、これでもかとばかりに階段のふちに並べてみました。

匠のアイデアが光る技。これにはサインシステムを考えた上の人もびっくりでしょう。


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ちなみに掲示から乗換改札を見るとこんな感じ。

個人的には「中央改札口」と書くのではなく「↓JR出口↓」と書いておいた方が効果が高かったように思います。

4)カット文字で目を引いてみる

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芸術性で注意をひいてアピールしようという作戦です。

惜しくもJRのサインシステムでは出口は黄色地に黒字が基本ですから、あまり目立たない点が玉に瑕。

5)近鉄ご自慢の車両を紹介してみる

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鶴橋駅員さんのチョイスは以下の通り。

観光特急「しまかぜ」
名阪特急「アーバンライナー
汎用型特急「Ace」(新塗装)
1422系

どうやら最後を見る限り通な方が選ばれたようです。

…って、そうじゃないんです。目的は「出口に行く旅客を誘導すること」であって、「近鉄の乗り換えたい旅客を誘導する」のではありません。方向性がだいぶ違います。

6)ダンディな誘導を目指してみる

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ちょっと趣向を凝らしたサインを設置。(2)で扱った立て看板が元になっています。

確かにデザインが単調だったというのもありますし、デザイン的に奇抜で目立ってよいかもしれません。


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ちなみにですが、芸が細かく色違いで2種類用意されています。

さらに反対側はというと


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ICカードと切符を併用する際の通し方が書かれていました。

ただ通ろうとする旅客の背に書かれても見えないのです…()



といった風に様々な趣向を凝らして最適解を探してらっしゃいました。

現在進行形で変更がなされていますので、今後どう変わるかも注目していきたいところです。





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ちなみに天王寺の巨匠はと言いますと、液晶ディスプレイの方で今も趣向を凝らした掲示を作成されています。

アニメーションが設定されており、かなり視覚に訴えかけてきます。これまたすばらしいセンスです。

また新しい案内サインが掲示される日を楽しみに待っています。



この記事はここまでです。

鶴橋駅の今後については、また鶴橋に行く機会があり進展があれば、取り上げさせていただこうと思います。


それでは~。
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