宇治駅が放送更新 3か国語放送に

世間の鉄道会社はどこもかしこもインバウンド対応、多言語案内に躍起になっていますが、関西で最初に多言語案内放送の重要性に気づき、実際に実施してきたのはほかでもないJR西日本でした。

これまで行われたJR西日本の取り組みとして、SUNTRAS型放送に始まり、嵯峨嵐山駅稲荷駅での3か国語放送などが挙げられます。

残念なことに、SUNTRAS型放送では日英2か国語が精いっぱいなため、この放送が導入されている駅では3か国語放送は導入できません。したがって導入できる路線が、関西近辺では奈良線嵯峨野線和歌山線などのみと非常に限られてきます。

これらの路線の中でも、外国人利用客が多い駅にはしらみつぶしに入れているのかと思いきや、宇治駅は長らく日本語のみの放送で放置された状態でした。今回ようやく宇治駅にも手が回ったようで、同駅の放送が更新された次第です。



まずは実際に放送をお聞きください。冒頭のチャイムメロディと日本語放送に続き、英語、中国語の案内が入るようになっています。

ご存知の方も多いと思いますが、同駅では長らく よしいけいこ氏担当の旧型放送 が使用されていました。旧放送の種別と行き先しか流せなかった「欠陥」を修正するかと思いきや、仕様はそのまま種別と行き先しか流せない放送が導入されるという…少し残念な結果です。

せめて「稲荷には停まりません」であるとか、最低限必要な案内は導入してほしかったと思います。


なお接近放送以外の放送は流れません。駅名連呼、出発放送、啓発放送などはありません。

文面を詳しく見てみる

現在JR西日本が導入している3か国語放送は、最初に導入された嵯峨嵐山駅と、続いて入れられた稲荷駅の2駅です。今回宇治駅に導入された放送は稲荷駅に寄せたタイプでした。

それぞれの違いを普通列車の放送文例から見ていきましょう。


まもなく2番のりばに、8時15分発、普通・京都行きが4両でまいります。危ないですから黄色い点字ブロックまでお下がりください。

The 8:15 train to Kyoto will soon be arriving at platform 2. For your safety, please remain behind the textured yellow line.

八點十五分發車,開往京都的普通列車,即將到達二號站臺。注意安全,請退到黃綫后候車。


稲荷駅
まもなく2番のりばに普通・奈良行きがまいります。黄色い点字ブロックまでお下がりください。

A Nara-bound local train is about to arrive at platform 2. Please remain behind the textured yellow line.

普客,奈良方向列車即將抵達二號站台,請退到黃色安全線以外。


宇治駅
まもなく4番のりばに普通・奈良行きがまいります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。

A Nara-bound a local train is about to arrive at platform 4. Please remain behind the textured yellow line.

普客,奈良方向列車即將抵達4號站台,請退到黃色安全線以外。





嵯峨嵐山駅は発車時刻などに対応しているのに対し、稲荷駅宇治駅は種別と行き先しか放送していないのが分かると思います。

加えて英語、中国語は特に二極で違いが顕著です。”will soon be arriving”と”is about to arrive”であったり、行き先の言い方、種別の表現などが全く異なります。嵯峨嵐山駅は型にはまった放送文、対して後者二駅はくだけた放送文になっているといったところです。


後者2駅と嵯峨嵐山駅との違いは山のように見つかりますが、では宇治駅稲荷駅だけで比較した場合、どこが異なるかというと

A Nara-bound local train
A Nara-bound “a” local train

この種別の前の冠詞の有無が挙げられます。逆に言えばここ以外は全く同じです。

前者が先に導入された稲荷駅、後者が後発の宇治駅の放送文。実はこれ、先に入った稲荷駅の方が正確なんです。通じないほど大きな欠陥ではないですが引っかかりを覚える程度には変な放送文になっています。

後発組なのに変なアレンジを加えて変なミスを作っちゃう宇治駅。嫌いではないですがしっかりして欲しいところですね。

みやこ路快速」は悩みのタネ

奈良線のフラッグシップとして活躍する「みやこ路快速」。京都と奈良、2つの都を結ぶというところから想起しやすく、非常に素晴らしい種別名と言えます。

ところが多言語案内を考える上でこれがネックになってしまいました。

実は中国語には、日本語の「あいうえお」、英語のアルファベット読みのような、音を単純に表す文字がないに等しいのです。

ですから「みやこ路快速」を訳す際、英語なら”Miyakoji Rapid”と固有名詞扱いにして直訳、韓国語でも同じく「미야코지 쾌속」(’みやこじ’快速)と書けるものが、中国語では書けません。


そこで昨年導入された車内タブレット放送では、「みやこ」を漢字に直し「都路快速」と訳して放送しています。

一方、稲荷駅との件と言い、なぜか先駆者の意に従わない宇治駅。こちらも例に漏れず

MIYAKOJI特快

と独自の訳を当てています。


車内放送で「都路快速」と言うのに駅放送では「MIYAKOJI特快」。放送文を作成した翻訳会社(もしくは担当者)が違うのかもしれませんが、自社の同じサービスを複数の名前で呼びわけるのは混乱の元です。

ぜひどちらかに統一していただきたく思います。



全体的に見て、改善すべきところに手が及んでおらず、趣向が凝らされていない点が少し残念な放送でした。

次に導入する駅では、ぜひ他社には真似できない、いつもの詳細で高品質な放送になることを期待しております。
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