JR西日本が主要線区に導入している、俗にSUNTRAS型放送と呼ばれる自動放送は、運行管理システムと連動しているがゆえこれまで数多の誤放送を流していきました。
たとえば環状線内1駅も止まらず一周してくる関空/紀州路快速であったりとか、
大変な放送を公式が流してしまうという、あってはならない放送事故を多々起こしてきました。
というのもJR西日本の列車運行管理システムには、遅延時に自動的に列車の運転打ち切りや運転整理を行う機能があるのです。そして駅の旅客案内装置はそれをリアルタイムで反映して案内します。
なので、システムが自動的に設定した無茶苦茶な列車が案内放送で流れてしまったり、運転整理中の一時的な変更がそのまま反映されて放送されてしまったりなど、高性能が仇となって誤った放送が流れてしまうのです。
しかしSUNTRAS環状・大和路線システムの放送では、システムの都合ではなく人為的なミスで、とんでもない誤放送を流してしまった事例が存在します。
舞台はJR奈良駅。JRにおける奈良県内の代表駅で、奈良市中心街のはずれに位置します。外国人の利用者も多いこの駅でJR西日本が起こしてしまったのは、英語放送の誤植です。
問題の放送が流れるのは2番線です。こののりばでは、線路を挟んだ両側にホームがあります。
…といっても両側にホームがあるのが問題と言うわけではありません。単にホームが両側にあるだけであれば天王寺駅11,12番のりばや西九条駅なども当てはまります。
厄介なのはのりば番号です。
先ほどの画像の右側のホーム、3番のりばの隣ののりばは「2番のりば」となっています。では1番のりばの隣はと言うと…
なんと何番のりばか書いていません。2番のりばの対面となる方ののりばには、のりば番号がそもそも与えられていないのです。
では存在しないのりばを自動放送ではどのように案内にするのか聞いてみましょう。
こののりばから電車が発車します。ご注意ください
大胆にも「こののりば」という案内を行います。確かに語弊を招かない言い回しです…が
「あれ、英語放送は…?!」
そうなんです。あまりにもわかりやすい誤放送であるため、現在英語放送は流れないように設定されているんです。
英語放送が流れていたころの貴重な資料がこちら。
The Rapid Service departing at 17:49 bound for JR-Namba will be leaving from track twenty(20).
2番のりばの向かい側は20番のりば?
なんと「こののりば」が「20番線」に早変わり。日本語放送で「こののりば」に置き換えたのはいいものの、英語放送に反映し忘れたようです。あまりにも単純すぎるミスです。
しかもこの誤放送、少なくとも1年間は「20番線」のまま放置されていたというのも驚きです。
英語放送でも忠実に反映させようとしたら、
The Rapid Service departing at 17:49 bound for JR-Namba will be leaving from this platform.
あたりが妥当だと思いますが、そもそもとしてこちら側も2番のりばにしてしまえば解決するのでは……?と邪智してしまいます。
そしてこのミスに気づいたJRがとった対策というのが、新しく放送を用意するわけでもなく、単に英語放送をカットしてしまえばいいという安直な考えだったというのも残念です。
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特殊なホーム配置が生んでしまったともいえる喜劇。
間違いを見つけてもなお頑なに「こののりば」を続ける理由やいかに。