2016年ごろから今年にかけての間に多くの駅で自動放送の全面更新が行われてきました。
大阪阿部野橋、大阪上本町、若江岩田、河内花園、大和八木、橿原神宮前、今川、名張。
その多くが英語放送の導入に伴った更新です。英語放送導入が意味するのは駅放送の全面更新と言っても過言ではないくらい、英語放送の導入とともにレトロで味がある旧型放送は役目を終えています。
ところが。
統一を嫌い輪を乱すことには事欠かない近鉄さん。
最初期に導入された京都駅を除いて、これまで英語放送を導入すると同時に駅放送の全面更新を行ってきたにも関わらず、ここに来て例外を作り出してしまいました。
ご紹介しましょう。今宵のゲスト、
伊賀神戸(いがかんべ)駅です。「こうべ」ではなく「かんべ」なのでご注意を。
この駅の放送は特殊なポイントが2つあります。
1.旧型放送に英語放送が突っ込まれている
これまで近鉄は、旧型放送を使用していた駅に英語放送を導入する際、最初期に導入された京都駅を除いて放送を全面更新していました。「全面更新」とは日本語放送も含め更新するということです。
ところが伊賀神戸駅では日本語放送はそのまま英語放送が導入されるという異例の更新が行われています。
同時期に更新された名張駅では日本語の案内含め声を入れ替える全面更新が行われたというのに、です。
放送装置もそのままですから音質が悪いのはもちろん、再生速度が非常に遅くなってしまっており、同じ放送を使っている他の駅と聞き比べてもまるで別の音声のように聞こえてしまうくらい装置が劣化しています。
いったい他の駅(特に名張駅)との差はどこにあったのでしょう。
2.駅名喚呼が一回しか行われない
到着放送で駅名を流すとしたら「大阪、大阪です」のように二回以上繰り返して流すものが一般的ですね。
ですから、到着放送で駅名が繰り返し流される部分を「駅名連呼」とも言ったりします。繰り返して読むから「連呼」です。
ところが伊賀神戸駅ではどういうわけか駅名が一回しか読み上げられません。
「伊賀神戸でございます」
呆気にとられてしまう短さです。古今東西さまざまな近鉄の駅自動放送を聞いてきましたが、到着放送がそもそもない駅はあれど駅名を一回しか読まない例はこの駅でしか確認できていません。
何らかの不具合で一回目の「伊賀神戸」だけ抜け落ちているのでは?
そう考えて、かつて五位堂車庫一般公開で駅自動放送を操作できるコーナーが設けられた際に控えた、大阪阿部野橋駅と大和西大寺駅の自動放送に収録されている音声パーツ一覧を確認したところ、「大阪阿部野橋、あべの橋です」「大和西大寺、西大寺です」で一つの音声パーツとなっていました。
当時から駅放送の設計が変わっていないとしたら、意図的に一回しか流さないように作られている事になります。
これもまた気になる「謎」です。
「伊賀神戸、神戸です」ではありません
伊賀神戸駅の案内を考える点で関連した小話もご紹介しておきます。
近鉄では駅名を復唱する場合、「大和西大寺、西大寺です」や「大阪難波、難波です」のように、2回目に読み上げるときには旧国名の冠称を省きます。ところが伊賀神戸駅を案内するときには「伊賀神戸、伊賀神戸です」と省かずに放送します。
その理由がこちら。
文字で書くと「神戸」。兵庫県の神戸(こうべ)と勘違いしてしまいそうですが、読むときは「かんべ」と読みますから、省かずに読んでも差し支えありません。でもきちんと読み上げる。その理由はすでに改称されて地図から消えた駅名にありました。
詳しくは上記リンクよりどうぞ!