広島地区の威信をかけた新車、Red Wingこと227系を皮切りに導入されたこちらの形式のフルカラーLED表示機。
関西ではしばらく新型車両の導入が無かったことから導入はかなり遅れを取り、まずは207系体質改善車が「種別幕はそのままに、LED表示のみ更新する」という変化球を用いることで一番乗りに成功。
次いで先日運行開始した阪和線225系5100番台、本線系統の100番台が同形式の表示を使用開始し、この「趣向が凝らされたようで意外と簡単に作れる」表示が無事に増殖する運びとなりました。
さてこの形式の表示についてですが、頻繁に議題に上がり「改善すべき点」“といわれる”ものが一つございます。
まずはこちらをご覧ください。
こちらは3ドアが普通に入ることで姿を見せるようになった223系での普通・熊取行き。
種別幕をご覧ください。
ご存知の方も多いでしょう。JR西日本では「普通」含むほとんどの種別幕で決まってロゴを用いる傾向があり、このロゴが一部の鉄道ファンからかなり支持されています。
これをLED表示にも採用できないものか。
これが噂の「改善点」というものです。
私自身もなかなかこの洗練されたロゴ自体は非常に好きですし、可能であればロゴマークをここにも入れてほしいという気持ちは山々です。…ですが。
この議題を簡潔に終わらせますと「読みにくいという点から有効ではない」という結論に行きつくのです。
まずはこういったところから見ていきましょう。
「ロゴ・方向幕のデザインをLED表示にした実例はあるのか」。
こう聞かれましたら意外かもしれませんが、実は存在すること自体は存在します。
しかも割と多数の例が、さらに直近の例で言えばかなり身近に、です。
実例1
それがこちら、皆様ご存知阪急電車でございます。
阪急電車では「ナール」というフォントを旧来から使用しておりまして、LED表示が使用開始された際も非常に「それっぽく」見せられたフォントが採用されています。
ドット打ち職人の腕が光る一品…ですが、このフォントを端的に表せば所謂「丸ゴシック」です。
つまり「複雑な図形」ではございません。
もっとJR西日本の種別表示に近いもので、さらにLEDに採用された例はというと…実はこちらもそう遠くはないところで実例があるんですね。
ご紹介しましょう。
実例2
これなら文句が無いでしょう。
こちらは幕ロゴの持つ独特の“ヤマ”や払いがかなり忠実に再現されており、再現度も高いとなかなかの高評価を得ています。
そして可読性も極めて高い。遠くから見ても容易に認識できますし、これはまぎれもない「類似の成功例」でしょう。
この通りもう1文字増えたとしても、雰囲気だけは十二分に残しています。
全国規模で探せば少なからずは出てくるのです。
「そういった実例が存在するなら新型統一表示機でドットの採用は可能だであろう!」
では実際にドット打ちしてみましょう。
「普通」。
「B快速」。(※実物では路線記号が付いていません)
そして極めつけは「紀州路快速」。
こんなもん一瞬で読めるか!と。
シャトルは割とこちらの方が映えて見える気がします…が、これは置いておきまして。
313系とこの系統の表示において、一見同じような問題に見えても同じ土俵に決して上げてはいけない理由は二つ。
「わずか3ドット違うだけで何が変わるんだ!」
と思われる方もいらっしゃると思いますが、わずか数か所しか変更ができないドットの世界において、3ドットも増減することは致命傷にもなりかねない変更に当たります。
もう一つの違いがこちら。
路線記号やそのほかの記号類、そしてなにより英語表示の有無が大きいでしょう。
先ほどの表示をもう一度ご覧ください。
こちらでは可変範囲のギリギリまで英語表示を兼ねたラインカラーが塗られているため、太字のフォントを入れてしまうと可読性が落ちてしまいます。
また文字が詰まっていることで夜間などはドット間がつぶれてしまい、圧迫感すらも感じてしまうことでしょう。
行き先表示は基本的に「示したい内容が常に表示されており」、かつ「一瞬で読みやすい物」が好ましいのは当然。
さて議題に戻りましょう。
「幕のロゴはLED表示にできるのか」。
ご覧いただいた通りLED表示にすることはできますし実例もありますが、ロゴでは線が分厚くなってしまうため十分なスペースが必要になります。
小さな表示では見づらくするだけの邪魔な装飾にほかなりません。
また、通常LED表示はその特性上1ドット1色しか出せませんが、限られたドット数で複雑な図形を出そうとする場合には「アンチエイリアス」という特殊な処理を施すという方法もあります。
*アンチエイリアス…ドットの点灯を1か0に分けるのではなく、0.3(わずかに点灯している)といったそのほかの点灯レベルを設けてなめらかに処理させること。
このようにアンチエイリアスという処理を施すと多少は滑らかになりますが、決して万能ではなく「改善する」というよりは「応急措置」を施すような形でしか使えません。
以上からロゴLED表示を実現したい場合は、表示機そのもののサイズやドット数から見直す必要が出てしまいます。
もう「8ドット」。
わずか8ドットだけでも縦に大きければ話も変わったでしょうが、この大きさではこれ以上の改善は見込めません。
現行の表示機がいかに「実態に伴わないものであるか」、そして現行の表示ですらも「無理を強いないとできない荒行であるか」は、これら数多くの表示が実例をもって教えてくれています。
言い換えずとも「現状で精いっぱいだ」と語るように、二段に分けられて表示されている「紀州路快速」からも担当者の苦悩がうかがえるでしょうか。
ぜひとも今後の新型車両ではドット数をもう少し増やしていただき、ロゴマークの復活を願いたいところです…!