近鉄の4か国語放送考察

近鉄といえば詳細でこだわりの強い放送が有名ですが、最近導入されたタブレット端末を用いた放送も例にもれず個性の強い作品となっています。

中でも優れているのがすべての案内を4か国語で整備した点でしょう。

たとえ大阪難波であれ、大和八木であれ、矢田であれ、そして携帯電話の啓発であれ、すべて操作次第で4か国語で流すことができるのです。


ただこの案内を不要とする車掌さんが多く、これまでは4か国語を扱う人が1路線に1人いればいいくらいの状況でした。

それもそのはずで、実際に乗務員さんから聞いたお話では「英語までは流すよう義務付けられている」という状況。つまり中韓の放送については流すようになっていなかったのです。


それがここ数週間のうちに方針が変わったらしく、とつぜん積極的に流すようになりはじめ、遭遇報告も非常に増えております。

こちらも収録できた量が増えてきましたので、ある程度全貌が見えてきました。

そこで今回は近鉄の4か国語車内放送について、特徴といいところ、わるいところをまとめておきたいと思います。

そもそもとしてどのようなもの?

まだ4か国語放送を聞いたことがないという方は、まずこちらの動画をご覧ください。



ほぼ全区間にわたって4か国語案内が用いられている、非常に珍しい例です。

ここから各駅停車しか停まらないような小さい駅でも、しっかり4か国語での案内が用意されていることがうかがえると思います。


なおこの4か国語案内放送について、近鉄の導入に関するプレスリリースではこのように触れられていました。



 車掌の案内放送を、携帯型放送装置を使って自動化するとともに、日本語に引き続き英語(必要に応じて中国語・韓国語)で、列車種別、行先、次駅案内、観光案内などの放送を行います。




つまり中韓の放送については必要な場合のみ流すものであって、当初から強制ではないということです。

とすると「いったいどのような場合に必要なのか」という疑問が生じてきます。おそらく各車掌区に通達があるのでしょうが、もちろん公表はされないでしょう。

個人的に見聞きした範囲でまとめると、最近の方針変更後では日中に運転される電車において、主要駅到着時もしくは主要駅発車後の総合案内(種別・行き先)が含まれる案内に限り、4か国語を流すようになっているようです。

全国で初めての全列車4か国語対応

このタブレット型放送が非常に優れている点は数多くありますが、もっとも画期的といえる点はやはり、日本で初めて全列車で4か国語案内を流せるようにしたというところでしょう。

日本を訪れる観光客は年々増加傾向にありますから、いつか多言語案内がないことが問題になりえます。それに先手を打ち、さらに英語までではなく中韓もまとめて導入したという点が非常に素晴らしいといえます。

なお近鉄はこのタブレット型放送の導入により、第15回日本鉄道賞で「安心インバウンド対応」特別賞を受賞しています。

4か国語放送の内容

日英の内容はほぼ共通で、日本語で流した内容をほぼそっくりそのまま英語で流す形式をとっています。のりばの案内やのりかえ等についてもそっくりそのままです。
では中韓の案内はどうなっているか、ずばり申し上げますと非常に簡易的です。
それぞれの場合に分けてご紹介いたします。

始発案内

まず始発駅停車中の案内放送では、日英では行き先、種別に続いて停車駅を放送するようになっています。

では中韓はどうかと言いますと、こちらは停車駅を一切流しません。
例として新田辺行き急行の始発案内をご覧ください。

イメージ 1

どうやら「停車駅は」に値するパーツが無いため、正確には流していないのではなく流せないようです。

ポイントとして高いのは、どうしても文法上のルールで制限される英語を除き、それ以外の言語では「○○行き種別」で構成されているところでしょうか。

案内文へのこだわりをここにも出しています。

次駅案内、到着案内

ここでは特定の主要駅発車後、総合案内が付随する場合を割愛してご紹介いたします。

次駅案内において、日英では

1. 次の停車駅の駅名
2. 乗り換え路線もしくは通過駅(南大阪線のみ)
3. その次の停車駅

以上を流すようになっています。

しかし中韓で流れるのは1と2までで、3については流れません。


イメージ 2

河内松原駅の場合の例がこちらです。

ハングルは読める方でないと何を書いているかわかりにくいかと存じますが、中国語(繁体字で表記しています)の方は並び順でまだわかりやすいと思います。

藤井寺」、「후지이데라」の文字が中韓にはないことをご確認くださいませ。
中韓で案内が実施されない個所については、到着案内も次駅案内と同様です。

中韓の放送の欠点

ここまででしたら多少内容が足りないだけで優秀に見える中韓の案内ですが、実はこれには大きな欠点があります。

文法や表現の間違いが山のようにあるという点を除いても、です。
次の画像をご覧ください。


イメージ 3

これは実際に京都線の京都行きで、東寺到着時に流れた4か国語放送を文字に起こしたものです。

日英では問題ありませんが、中韓でのみ見られるこの放送の問題点を挙げてみてください。


…と言われてあげられる方は少ないと思いますので、実際に聞いて問題だと感じた点を記しておきます。


イメージ 4

これです。これ。

日本語では連呼するため救済措置が、また英語では前置きがあるので聞き逃すことは考えにくいですが、中韓は開幕早々いきなり駅名を流してそれでおしまいです。

文を作るうえで「聞き逃さないよう重要なことばは文の最後にもっていく」というルールがありますが、これと正反対を向くなかなか破天荒な案内をしているのです。

しかもこれは英語の「This is Toji.」(東寺駅です)を中韓に直訳したため起きているという、なんとも残念な状況です。

乗客は一部のマニアとちがい、アナウンスの流れや案内順に精通していません。せっかくの4か国語放送も、これでは聞き逃せと言っているようなものです。

すごくおしい…そんな気がします。


とはいえもちろん流すことが無意味というわけではありません。

車内自動放送はテンプレートの繰り返しですから、ほぼ全駅で流せば乗客側も流れるタイミングがつかめますし、その点では問題はないでしょう。

とつぜん一駅だけ流すといった形では、特に乗換案内も何もない駅ではほぼ機能しないというところが留意点です。

せっかくの優れたシステムですから、ここは本当に改善してほしいところ…!



以上、4か国語放送についてまとめさせていただきました。

今後も活用される機会は増えるでしょうから、改善にぜひ期待したいところです。
それでは~!


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