自動放送を熱く語ろうの会 第一回・名鉄の駅放送を熱く語る

ブログのネタが本格的に尽きてきたため、なんとかして記事を書こうということでこう言った企画を打ち出してみました。

1記事でその会社の駅もしくは車内の放送をひたすら熱く語る

というものです。


おおよそ4000~5000字程度、軽い読み物のレベルで、その会社の自動放送について普段思っていること、ここがいいと思うところ、逆にここはどうだろうと思うところなどを語っていこうと思います。

記念すべき第一回は名鉄電車の駅放送について、自分の知る範囲で語っていこうと思います。

何度か収録したこともありますから、まったく知らない地域の放送と比べて込み入った話もできるのではなかろうかと考えております。

それではまず名鉄の放送について、ここがよいと思うところを挙げてみます。

放送の言い回しがいい!

言い回しと言いますか案内の順序と言いますか、その手立てが実に理想的な形をしていると思うんです。個人的にすごく好きです。

まずはその自動放送の一例をご覧いただきましょう。


まもなく3番線に電車がまいります。
黄色い線までお下がりください。

名古屋・一宮方面の急行、岐阜行き
です。
前後、有松、鳴海、堀田、神宮前、金山、名古屋の順に停まります。
この電車は名古屋へ先に到着します。


わかりますか、このまとめられ方。まさに芸術といえるでしょう。

先陣を切って流れるはまず「電車が来るから一歩下がれ」という警告文。詳細な案内は二の次に、まずは危険が差し迫っていることを流すあたりが最っ高にいいと思うんです。個人的に非常に高得点です。

次に素晴らしいと思うのが停車駅の流し方です。「順に停まります」。車内放送では最近使われる方が増えてきましたが、駅放送では非常に少数派です。何といい響きでしょう。

「どうせほとんどが名古屋より先へ行かないだろう」と非常に割り切った考え方ですが、主要駅に的を絞って流す点は非常に効率を考えられていて、短い時間でいかに多くの人に情報を伝えられるかが考えられているなぁと感心します。


余談ですが、動画製作時に停車駅の部分を英語に翻訳するとき、いったいこれをどう訳せばいいんだろうと非常に悩みました。程よく「順に」にあたる英単語がないのです。

The limited stops: starting with Zengo, Arimatsu, Narumi, Horita, Jingu-mae, Kanayama, and Nagoya.
「前後、有松、鳴海、堀田、神宮前、金山、名古屋から始まる限られた停車駅」

とすべきなのか、少しアレンジを加えて

This train will be stopping at Zengo, Arimatsu, Narumi, Horita, Jingu-mae, Kanayama, Nagoya and following limited stops.
「この電車は前後、有松、鳴海、堀田、神宮前、金山、名古屋と、その先に続く限られた停車駅に続きます」

とすべきなのか、はたまた割り切って

The stops before Nagoya are Zengo, Arimatsu, Narumi, Horita, Jingu-mae, and Kanayama.
「名古屋までの停車駅は前後、有松、鳴海、堀田、神宮前、金山です」

とすべきなのか。


本家名鉄さんに頼ろうとしても

This train will stop at Zengo, Arimatsu, Narumi, Horita, Jingu-mae, Kanayama, and then Nagoya.
「この電車は前後、有松、鳴海、堀田、神宮前、金山と、それから名古屋に停まるでしょう」

で割とあっさり占められていて頼りようがないんですよね。

何かいい訳し方はないものでしょうか。
※補足:中部国際空港駅では英語放送が用いられています。

名古屋に的を絞った案内

愛知県といえば「名古屋県」と誤認知され、肝心の「愛知県」という名前がよく宙に浮いてしまうことで有名ですが、確かに愛知県内、それどころか周辺の岐阜県三重県を含んで考えてみても、やはり名古屋の存在感は非常に大きいものがあります。

そのため案内放送は、そのほとんどが名古屋駅(とおまけ程度に金山駅)を中心に設計されています。

たとえば停車駅案内は、駅にもよりますが、そのほとんどが名古屋までの停車駅を読み上げるにとどまります。名古屋を超えた先で種別変更する場合は流さないこともあるなど、徹底した名古屋ターミナル駅主義です。

これにとどまらず先着案内は必ず「名古屋に先着するかどうか」が基準になってきます。名古屋にはこの電車が先に着く、名古屋へは前後で追い抜く後の快速特急が先に着く…等々。

もっとも利用客が目指す目的地はどこか、そこのみに重点を置いた必要最低限の情報量で、さっぱりと流す点が魅力的です。

いかなる電車でもしっかり停車駅を流す

まもなく2番線に電車がまいります。黄色い線までお下がりください。
豊田市方面の普通、猿投行きです。
三河知立三河八橋、若林、竹村、土橋の順に停まります。


この放送を土地勘なしの方が何の知識もなく聞いたら「通過駅でもあるんだろうか」と思ってしまいそうですが、実はこれでも各駅停車の案内放送なんです。

名鉄の駅放送は「各駅に停まります」と流すのを心の底から(?)嫌っており、たとえその駅から各駅に停まる電車だったとしても停車駅を律儀に流します。

流れる停車駅の数は駅によって差がありますが、だいたい4~6つ目くらいまでの停車駅を流すようにしているようです。

自分は各駅に停まるのであれば「各駅に停まりますと流した方が分かりやすいのではないか」と思いますが、案内の方法として悪くはないということでアピールポイントとして挙げさせていただきました。


なお普通電車での停車駅の読み上げは、残念ながら全ての駅で行っているわけではありません。

金山駅神宮前駅など旧型放送でも古いタイプを使用している駅や、新放送への過渡期に導入された(らしい)瀬戸線大曽根駅などでは、普通電車接近時、停車駅は読まずに「○○行き普通です」で放送が終わります。

かなり沼が深い

音鉄的にポイントが高い点はこちら。全駅同じように聞こえる名鉄の放送ですが、これがかなり沼なんです。

駅ごとに流すことができる内容が微妙にカスタマイズされていて、「この駅では流れないけどあの駅では流れる」といった内容が多々あります。

たとえば犬山線空港線、本線系統の一駅たりとも「下級種別への緩急接続の案内」は流せませんが、尾張瀬戸駅では尾張旭駅で普通に連絡する急行では、その案内がしっかり行われるようになっています。


また新放送を使用している駅の一部に限って2両編成接近時にのみ乗車位置を流すことができたり、上小田井駅では地下鉄線の電車に対してのみ最終案内を流すことができたり。

古くから名鉄を知る方に聞かないと歩くことすらままならない、一歩間違えれば底なし沼に沈んでしまう、まさに沼です。
収録に行ける機会が少ないのが惜しいほど…。



さて、ここまで個人的に名鉄の駅放送についていいと思うところを放してきましたが、この放送は人によって好き嫌いがはっきりと分かれる内容になっていると思います。

そして名鉄ファンの方には申し訳ありませんが、上記に挙げたように、名鉄の放送の形式について私は好きですが、細かい仕様については否定的な視点を持っています。
今度は私が思うここが悪いという点をご紹介いたします。

初見にはわかりづらい

時として簡潔さはあだになることがあります。
名鉄の放送で個人的にここが残念だと思うところがここです。それもかなりの比重で、です。

たとえばですが、次の放送文を見てください。


名古屋、岩倉方面の犬山経由岐阜行き急行です。
りんくう常滑常滑、多屋、榎戸、蒲池、西ノ口、大野町の順に停まり、太田川から急行に変わり、聚楽園にも停まります。


まずこの名鉄の朝ラッシュ要素満載の放送ですが、どの駅で聞くことができるかお分かりでしょうか?

「りんくう」の文字で察しがいい方は気づかれたでしょう。そうです。空の玄関口、中部国際空港駅で実際に聞くことができる放送です。

まず「この電車は途中」も挟まずに停車駅を流し始め、そして種別変更と臨時停車を同列で流すというなかなかの破天荒ぶり。


確かに地元の方以外で、いきなり中部国際空港から名古屋駅以外に行く方は少ないでしょう。

しかしあまりに情報を集約しすぎではないかと、少し不安です。

種別→行き先の言い回しが究極に似合わない

それぞれ次の二つの放送文を見比べてみてください。


「名古屋、岩倉方面の岐阜行き、普通です」

「名古屋、岩倉方面の普通、岐阜行きです」


最初に書いた方が旧世代の放送、後に書いた方が新放送を使用している駅で見られる言い回しになります。

名鉄の駅放送はかなりの旧型を除いて音質にそれほど大きな差はないため、新旧の放送を見分けるうえでこの行き先の言い方は重要になってきます。


旧放送のいいところとしては「○○方面の○○行き」と行き先が方面に続いて一連で流れるようになっているんです。どこへ行くかがひとまとまりになっていて、非常にわかりやすい。全国の鉄道事業者で見習ってほしい言い回しです。特に名阪を結ぶ赤い会社にはピッタリでしょう。

最初に聞いたときは「行き先を先に言うとこういうこともできるのかー!!」とかなり驚いたのが記憶に残っています。


しかし新放送ではこの洗練された案内方法が廃止され、JR東海など他社同様に種別を先に言うように変更されました。

その結果、せっかくの方面が行き先にまでインパクトを出さず「普通」にかかってしまうようになって、「名古屋・岩倉から岐阜へ行く普通」と一発で理解できるものから、「名古屋・岩倉を通る普通」、「普通岐阜行き」という風に二重に理解が必要な案内になっています。

さらっと要点だけ簡潔に流すのがウリの名鉄の駅放送で、なぜその一番手を加えるべきではないところに手を加えてしまうんだとかなりショックを受けました。


これで最も被害を被ったのは特急の例でしょう。


「名古屋、岩倉方面“の”岐阜行き、一部特別車“の”特急です」

「名古屋、岩倉方面“の”一部特別車“の”特急、岐阜行きです」


おいおいブラザー、冗談だろと。なぜに「のののの」連打してるんだと。そもそも方面と行き先が離れすぎてないかと。というかこれはもはやただの回りくどい放送じゃねえかと。

こればっかりは新放送で唯一受け入れられない変更点です。おそらくよほど合理的な理由を説明されないと納得できないと思います。



以上、名鉄の放送について個人的な思いを熱く語らせていただきました。

同意できる、できないはあると思いますが、あくまで私の感想ですからご留意を。


また不定期に同じような企画をやると思います。

それでは~!

Written by Yatatetsu ... All Rights Reserved