みなさん、定期列車に存在しない行き先はお好きですか?
何かしらの輸送障害が発生して途中駅で折り返す必要があった場合に設定される行き先と言うのは、満身創痍で喜べないものの、どこか心をくすぐられるところがあると思います。
今回はこれまで録音したSUNTRAS型放送のレア行き先をまとめました。もちろん誤設定はなし。すべて実際に運転された列車のみを掲載しています。
なお、この記事はあくまでこれまでに運転されたという実績を紹介しているもので、それ以上の意味はありません。
行先の後のカッコ内は、行先となった駅が属する路線名です。
行き先自体がレアな設定部門
大久保行き(JR神戸線)
遅延時に頻繁に設定される行き先です。かつては大久保行きの定期列車もありましたが、現在では遅延時に設定されるのみになりました。
御着行き(JR神戸線)
姫路の2つ手前の駅止まり。御着~東姫路駅間にある河川が規制値を超えるとこの駅止まりの列車が設定されます。
年に2~3回程度運転されることがある行き先です。
東加古川行き(JR神戸線)
加古川駅の1つ手前までの運転。
新快速はだいたい加古川の向こうの宝殿か、姫路まで運転しきってしまう場合が多く、東加古川止まりの折り返し運転はめったに設定されることはありません。
灘行き(JR神戸線)
「なら」行き?いえいえ、「なだ」行きです。三ノ宮の次の駅で、姫路方面にのみ折り返すことができます。
要は姫路方面→三ノ宮までの輸送は確保したいけど三ノ宮駅に折り返し設備を増設することができなかったため、お隣の駅に折り返し設備を設けたという形です。
これまでこの駅折り返しの営業列車が設定された回数は両手で数えられるくらいしか存在しません。あまり有効活用されていない折り返し駅です。
りんくうタウン行き(関西空港線)
言わずと知れたレア行き先。関西空港の1つ手前という存在感の薄い駅ながら、ひらがなとカタカナで構成される駅名の珍しさからなぜか全国区の知名度を誇ります。
動画はその中でも珍しい「シャトル・りんくうタウン行き」をご用意させていただきました。
関西空港連絡橋が強風で通行止めとなった際に運転されます。規模が大きくない台風が微妙に関西をかすめるルートで近づけば設定されますので、かなり設定頻度は高いです。
西舞鶴行き(舞鶴線)
大雨により線路陥没が発生したため、終点東舞鶴駅の1つ手前である西舞鶴までの運転となったものです。
西舞鶴と東舞鶴は8kmほど離れており途中にはトンネルもあります。「なぜあと1つ行けなかったのか」にもきちんとした理由があるわけです。
下呂行き(高山線、JR東海)
豪雨により高山線内で土砂崩壊が発生し下呂までの運転となったものです。高山線に直通する列車は特急ひだ25号のみですので録音に苦労しました。
木ノ本行き(北陸線)
▲新快速 木ノ本行き
SL北びわこ号で聞くことができる行き先です。運転日は限られていますが、確定で聞くことができる行き先なのでレア度は低いです。
突発的な行き先変更で終点駅となることもあります。2020年7月には、木ノ本行きの新快速が運転されたケースもありました。
智頭行き(智頭急行線)
平成30年7月豪雨の影響で智頭急行線が長期間見合わせとなったため、智頭止まりのスーパーはくと号が運転されました。
智頭では鳥取方面へ抜ける代行バスと連絡を行い、関西~山陰間の交通路を確保していました。
石生行き(福知山線)
石が生きると書いて「いそう」と読みます。
大雨により福知山市内で冠水、河川の氾濫などが発生し、福知山線が長期間運転を見合わせた際に運転されたものです。
和田山行き(播但線・山陰線)
石生行きと同日に運転されました。
福知山駅周辺の線路が冠水により使えなくなったため豊岡、山陰方面へ列車が運転できなくなったことから、姫路から播但線経由の迂回ルートとして運転された臨時特急の行き先です。
JR三山木行き(学研都市線)
同志社前駅の次の駅までの運転となる電車です。JR三山木~木津間で長時間見合わせが想定される場合に設定されることがあります。
わざわざ定期列車が1本も折り返さないこの駅行きにしなくても、定期列車が折り返す1つ手前の同志社前で折り返させればいいので、そういうわけでめったに設定されません。
笠岡行き(山陽線)
平成30年7月豪雨で岡山県内の鉄道網は寸断され、復旧していく過程で設定された行き先です。
松永行き(山陽線)
福山駅の少し向こう側にある松永駅止まりの列車です。2021年7月に降った梅雨の豪雨で糸崎駅構内が冠水する被害を受け、復旧するまでの間運転されました。
新田行き(JR奈良線)
奈良線の複線化工事に伴って運転されました。
そもそも新田駅は折り返しを想定した駅ではないため、ダイヤが乱れた場合であっても万が一に設定されない行き先であり非常に貴重な放送と言えます。
木幡行き(JR奈良線)
新田行きと同様、奈良線の複線化工事にともなって運転されました。
玉水行き(奈良線)
これまで運転された実績は2回あります。
うち1回は奈良線の複線化工事に伴って告知ありで運転されたもの。
もう1回は大和路線の平城山駅付近で列車が倒木と接触、パンタグラフがすべて損傷し自走できなくなったため、一時的に送電を止めて倒木を撤去し列車を救援している間に運転されたものです。この動画では後者の機会に運転された玉水行きを収録しています。
「みやこ路快速 玉水行き」という奇怪すぎる列車まで運転されました。
紀伊勝浦行き(きのくに線)
紀伊半島を走るきのくに線では、台風が関西を直撃した際に影響をもろに受けるため、毎年かわいそうなくらい大きな災害に見舞われた期間がありました。
うち1つがこの紀伊勝浦止まりの特急くろしお号。高波により三輪崎~新宮駅間で線路が陥没したため、手前の紀伊勝浦までの運転となりました。
箕島行き(きのくに線)
同様に台風の影響で行き先変更が行われた例です。
台風の影響で線路内への土砂流入など大規模な土砂災害が発生したため、きのくに線 箕島駅(和歌山~御坊間)止まりの快速が運転されました。
福井行き(北陸線)
北陸方面を爆弾低気圧が襲った際に運転された福井止まりのサンダーバード号。
台風や大雨、強風が予測されダイヤが乱れるとわかっているような場合、今のJR西日本ならば予告運休に踏み切るでしょうが、当時は割と「運転できるところまで運転し続ける」の精神が生きていたため、このような無茶苦茶な変更が生じる列車も運転されていました。
東貝塚行き(阪和線)
東岸和田の1つお隣に存在する東貝塚駅。2013年に折り返し設備が増設され、以後今日にいたるまでなんと2,3回しか設定されていないかなりレア度の高い行き先です。
この動画の収録時は台風の影響で留置線の架線柱が倒壊し、複数の編成が使えなくなったことで車両が回らなくなり、急きょ折り返しが設定されたというものでした。
品川行き(東海道線、JR東日本)
サンライズ瀬戸・出雲号でのみ見られる行き先です。
上野東京ラインの開業に伴った線路工事で運転されていたもので、無事開通してしまった現在では設定されることはありません。
和邇行き(湖西線)
湖西線では「比良おろし」という強い季節風が吹くため、12月から3月にかけて頻繁に強風で運転を見合わせることがあります。近江舞子付近で風速が規制値を超えた際に運転されるのがこの和邇行き。
2019年に稼働を開始した新システムでは当駅折り返しが積極的に行われており、これからの活躍に期待がかかります。
種別と組み合わさって初めてレアになる部門
この部類に当てはまる列車は多数存在するため、特にレアなもののみを抜粋して掲載しています。
快速 ユニバーサルシティ方面桜島行き(ゆめ咲線)
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの新エリア(ハリーポッターエリア)開放に伴って運転された臨時列車。九州方面からの新幹線との接続が図られたダイヤとなっていました。
「ユニバーサルシティ方面」や「桜島」の放送を聞くことができ、非常にわかりやすいレア放送だったため、当時の私は食いついて何度も足を運んだのを覚えています。
快速 JR難波行き(大和路線)
南海本線・高野線がなんば駅付近での不発弾処理のため運休となった際に運転されました。
「南海の運休でなぜJRの列車がこんなことに?」
実は不発弾処理の作業が平日午前に行われたため、通勤客が阪和線にあふれてしまう可能性があったからです。平日朝ラッシュの振り替え輸送客で遅延につながってはいけないため臨時で運転された、と言う経緯です。
特急はるか号 日根野行き(阪和線)
空港連絡特急が空港まで行けないという。りんくうタウン行きと同様、関空連絡橋が通行できない際に運転されるものです。
「関空特急と言いながら関空行かないとは何事か」というありがたいご意見にもお答えし、日根野止まりで運転される場合は種別が「関空特急」から「特急」に変わるという細工も施されています。
以上、SUNTRAS型放送でこれまで運転されてきたレア行き先をまとめてみました。7年間録音してきた音声をフル活用しましたので、きっとご満足いただけたと思います。
最後に。
レア行き先が設定される裏にはほぼ必ず規模が大きい災害があります。単なる大雨や強風といった備えれば無事にやり過ごせるものから、時として人の命を奪うような大きな災害であることもあります。
単純な「○○行きを見たい」では済まないことが、その言葉が誰かの忘れたい記憶を掘り起こすことすらあるのです。これを心に留めてこれからも音鉄ライフをお過ごしください。