今回は切り離しが絡む列車に関する放送のお話です。
ご存知の通りSUNTRAS型放送は、詳細な案内に特化した非常に高性能な放送システムです。一回の放送で流れる情報量は日本でも屈指の濃さで、日英2か国語放送ができるという“全部盛り”仕様。
ところがある条件が絡むと正常な放送案内が流れなくなる事象が見つかっています。
それが折り返して別々に運転する場合です。
詳細な案内を得意とするSUNTRAS型放送はもちろん、切り離しの案内にも対応しています。
しかし、折り返しとなる電車が切り離されて別々に運転されるというような場合には、どういうわけか流れるべき案内の一部が欠損してしまうという不具合が確認されています。
その不具合の紹介を含め、この記事では切り離しの条件によってどのように放送が変わるかを取り上げました。
まずは切り離して別々に運転する場合の放送を聞いてみましょう。
切り離して別々に運転する場合
JR神戸・京都・琵琶湖線の駅放送では
▼新快速の切り離しの例 @京都駅
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行き、n時 n分発 [種別2]・[行き先2]行きは、n番のりばから発車します。
[行き先1]行きは、[色・記号]印 n番から n番、[行き先2]行きは、[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
[行き先1]行きの停車駅は…です。[行き先2]行きの停車駅は…です。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] and the [種別2] departing at hh:mm bound for [行き先2] will be leaving from track n.
Boarding locations of the train bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n. For [行き先2] ; numbers n through n. Please form two lines to board the train.
The train bound for [行き先1] will be stopping at ......
The train bound for [行き先2] will be stopping at ......
(接近放送)
前 n両は [行き先1]行き、後ろ n両は [行き先2]行きです。
このような案内が流れます。前後編成別に案内が行われている抜け目のなさはさすがのSUNTRAS品質です。
大阪環状線・大和路線・ゆめ咲線・東線の駅放送では
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行き、n時 n分発 [種別2]・[行き先2]行きは、n番のりばから発車します。
電車はn両で到着します。
[行き先1]行きは、[色・記号]印 n番から n番、[行き先2]行きは、[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
[行き先1]行きの停車駅は…です。[行き先2]行きの停車駅は…です。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] will be leaving from track 1. And the [種別2] departing at hh:mm bound for [行き先2] will be leaving from track n.
It is composed of n cars.
Boarding locations for cars bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n and cars bound for [行き先2] are indicated by [色・記号] numbers n through n. Please form two lines to board the train.
This train is bound for [行き先1] ; this train will be stopping at ......
This train is bound for [行き先2] ; this train will be stopping at ......
(接近放送)
前 n両は [行き先1]行き、後ろ n両は [行き先2]行きです。
環状線システムの駅放送では両数も案内されます。といっても大きな違いはそこだけで、細かい英語表現の差異はあれど内容はほぼ同じです。
次に、後部編成が切り離し回送となる場合の放送をお聞きください。
後部編成を切り離す場合
JR神戸・京都・琵琶湖線の駅放送では
▼新快速・近江今津行き @京都駅
▼新快速・播州赤穂行き
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行きは、n番のりばから発車します。
[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
停車駅は…です。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] will be leaving from track n.
Boarding locations of the train bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n. Please form two lines to board the train.
This train will be stopping at ......
(接近放送)
前 n両は [行き先1]行き、後ろ n両は 当駅止まりです。
ふつうの放送と切り離して別々に運転する場合の放送のちょうど中間のような放送が流れます。
切りはなすので両数の案内はカット。乗車位置がいきなり流れます。
折り返し時に前部編成を切り離す場合
続いて折り返しを行う場合の切り離し案内もチェックしておきましょう。
JR神戸・京都・琵琶湖線の駅放送では
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行きは、n番のりばから発車します。
[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
停車駅は…です。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] and the [種別2] departing at hh:mm bound for [行き先2] will be leaving from track n.
Boarding locations of the train for [行き先1] numbers n through n. Please form two lines to board the train.
This train will be stopping at ......
*和歌山駅では停車駅案内が流れないよう設定されているため停車駅の部分は流れませんが、カットする設定をしていなければ理論上は流れます。
(接近放送)
前 n両は当駅止まりです。後ろ n両は [行き先2]行きです。
「当駅止まり」と言い切る音声パーツが無いためか、「前n両は…です。後ろn両は…です」と短文の繰り返しになっています。
英語の乗車位置案内にご注目。英語では色・記号が案内されていないのにお気づきでしょうか。
ここでこれまでにご紹介してきた3種類の停車駅案内を振り返ってみましょう。
単純に切り離す場合には
Boarding locations of the train bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n. For [行き先2] ; numbers n through n.
後部編成が回送となる場合には
Boarding locations of the train bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n.
そして到着時に前側に位置する編成が回送となる場合は
Boarding locations of the train for [行き先2] ; numbers n through n.
比較すると色や記号が流れなかったカラクリが分かりますね。
英語放送の乗車位置案内は、切り離し列車では必ず「単純に切り離す場合」の放送文になり、前・後ろどちらに乗れるのかによって該当する部分を流しているだけという形のようです。
さて、ここまでの列車では正常に案内が流れていたことと思います。
問題は次の条件に当てはまる列車の放送です。
折り返し時に切り離して別々に運転する場合
2編成以上つないでいる電車が折り返しの際に切り離しを行い、別々の電車として運転する。さすがのSUNTRAS型放送もこの運転は想定外だったようです。
このような場合には実に様々なパターンの欠陥品を流します。
JR神戸・京都・琵琶湖線の駅放送では
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行きは、n番のりばから発車します。
[行き先1]行きは、[色・記号]印 n番から n番、[行き先2]行きは、[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] will be leaving from track n.
Boarding locations of the train bound for [行き先1] are indicated by [色・記号] and numbers n through n. For [行き先2] ; numbers n through n. Please form two lines to board the train.
*停車駅案内は未確認
(接近放送では両数の案内なし)
冒頭で「寺前行きは1番のりばから発車します」と言っているのに急に出てくる福崎行き。
折り返して切離しとなる場合には、先発となる列車しか最初に案内しないに関わらず、乗車位置案内では平然と別々の行き先が登場します。
まるで途中駅切り離しと誤解してしまいそうな内容です。
ちなみに次発となる電車が切りはなしてから移動して客扱いを行うような運転であれば、次のような意味不明な放送になります。
……(゚∀゚)?
大阪環状線・大和路線・ゆめ咲線・東線の駅放送では
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行きは、n番のりばから発車します。
電車はn両で到着します。
[行き先1]行きは、[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] will be leaving from track n.
It is composed of n cars.
Boarding locations for cars bound for [行き先1] , [色・記号] n through n. Please form two lines to board the train.
*停車駅案内は未確認
(接近放送では両数の案内なし)
折り返して別々に運転するようなケースでは、次発となる列車の案内は一切行われません。
問題は太字下線部の部分。どういうわけか乗車位置案内の一部が欠損し、色・記号と番号を羅列するだけになっています。
阪和線の駅放送では
n時 n分発 [種別1]・[行き先1]行きは、n番のりばから発車します。
[色・記号]印 n番から n番で2列に並んでお待ちください。
The [種別1] departing at hh:mm bound for [行き先1] will be leaving from track n.
Boarding locations of the train for [行き先2] ; numbers n through n. Please form two lines to board the train.
*停車駅案内は未確認
(接近放送では両数の案内なし)
「折り返し時に前部編成を切り離す場合」と同じような放送が流れます。次発となる切りはなされた車両の案内は流れません。
放送の違いは?
いずれにしても不完全な案内しか流れない「折り返しが絡む切離し」。特に大きな違いとして次発となる列車の乗車位置を流す・流さないという違いが存在します。
京都駅で録音した湖西線普通列車の例、姫路駅で録音した播但線寺前行きと福崎行きの切り離しの例では、次発となる編成の乗車位置も放送されています。
対して奈良駅で録音した万葉まほろば線高田行きと桜井行きの切り離し、和歌山駅で録音した紀州路快速の切り離しの例では、次発となる編成の乗車位置は放送されません。
果たして何が起因してこのような違いが生まれているのか、2つの観点に絞って比較してみました。
次発となる編成がいったん回送となるのか、すぐに乗車できるのか。
確認できた3駅ではいずれもいったん「回送」に方向幕を変え、先発列車が出発してから客扱いを行っていました。乗車位置を流す京都駅でも先発列車が出発するまで締め切っていますのでどうやらこれは関係なさそうです。
もう一つはどの路線の運行管理システムが運用されているのか。
乗車位置を流す京都駅、姫路駅ではJR神戸・京都・琵琶湖線システムの放送が使用されています。この放送システムは2002年から本格的に運用を開始した放送システムです。
案内しない奈良駅、和歌山駅は2009年導入の大阪環状線・大和路線・ゆめ咲線・東線システム、2013年導入の阪和線新システムであり、いずれも後年になって導入されたものです。
この記事でお伝えした通り、放送の内容は、改良であれ改悪であれ導入年度により少しずつ変更されています。
次発となる編成の乗車位置を案内する・しない違いも、もしかすると導入年度による違いの1つなのかもしれません。当てはまる列車があまりにも少ないため明言できませんが。