コロナ禍で大変な時期ですが、東京では地下鉄に新駅「虎ノ門ヒルズ」駅が開業したようですね。幸先の悪いスタートになりましたが、これから先の繁栄を遠く西日本からお祈りいたします。
さて、この新駅をめぐっていまTwitterではある論争が起きています。
駅ナンバリングに関する論争です。
駅ナンバリングの「改番」をめぐって大きな話題に
新線開業に伴う駅ナンバリングへの対応をめぐって、ある論争が起きています。
これは路線図で照らし合わせるとわかりやすいのですが、
▲これが6/5までの日比谷線の路線図で、
▲これが今日6/6からの路線図です。
虎ノ門ヒルズ駅が開業したことにより、これまで霞ヶ関駅にあてがわれていた「H-06」番が虎ノ門ヒルズ駅のナンバリングに変わり、霞が関以降のナンバリングがすべて改番されました。
これに関して、
1.駅名の代わりである駅ナンバリングを変更したという点、それから
2.事前の周知徹底がなされなかった点
この2点が中心となって炎上とまで行きませんが、不審火くらいの小さな火種ができました。
今回はこの2点について、自分の意見を述べておきたいと思います。
ナンバリングは駅名の代わり?
まずは「ナンバリングは駅名の代わりとなりうるか」という点です。これは延いては数字を改定するのはアリかナシかと言う話になります。駅名の代わりであれば、改定するなんてもってのほかですからね。
私の持論としては、後述する条件さえ満たせば、ナンバリングを改定することはアリだと思っています。駅ナンバリングはあくまで記号なのです。識別するための記号にはなっても、駅名そのものの代わりになることはありません。
たとえばの話ですが。
「環状線の外回りに乗って、大阪駅でJR京都線に乗り換えて、京都駅でもう1回乗り換えたら嵯峨嵐山に行けます」
この案内は現実的ですが、
「“O”線に乗って、O-11で“A”線の電車に乗り換えて、A-31で“E”の電車に乗り換えたら嵯峨嵐山に行けます」
この案内は現実的ではありません。
なぜかといいますと、ナンバリングはただの記号と数字の羅列であって、これを丸暗記して覚えるというのは案内する側・案内される側双方にとって無理があります。検索サイトなどで調べて表示されるのでしたら話は変わりますが、上記のような口頭で案内するような場面では不向きです。
しかし、検索サイトで調べたとしても、
「“O”線に乗って、O-11で“A”線の電車に乗り換えて、A-31で“E”の電車に乗り換えたら嵯峨嵐山に行けます」
こう受け取るのではなく、
「“O”のマークの大阪環状線に乗って、O-11の大阪駅で“A”のマークのJR京都線の電車に乗り換えて、A-31の京都駅で“E”の嵯峨野線に乗り換えたら嵯峨嵐山に行けます」
という形で必ず固有名詞が付きまとうはずです。オリジナルの名前なくしてナンバリングが成り立つことはありませんし、やはりナンバリングはあくまで補助的な記号でしかないのです。
「環状線の外回りに乗って、大阪駅でJR京都線に乗り換えて、京都駅でもう1回乗り換えたら嵯峨嵐山に行けます」
この案内を聞いた旅客が「大阪駅ってどこなんやろう」「Oの11番が大阪駅なんや」「いまOの16番やから5駅先やねんな」と位置を調べるための記号が駅ナンバリングなのであって、最初から案内するための駅名の代わりにはなりえません。
改番を行わないとすればどうすればいいのか
論点を反転させると、じゃあ改番せずに新駅開業を迎えるにはどうすればよいのかという議題にたどり着きます。
ここで3つの方策を提示しましょう。
1.ダッシュで枝番を作る
高速道路の出口ナンバリングでは、新しく出口が増えると改番は一切行わず、若い番号に「-1」(ダッシュ+1)を付け足して区別します。
確かにこの方法であれば、全体の番号は変更せずとも、連続性のある番号でナンバリングが付番できます。
2.小数で区別する
5番と6番の間にあるなら5.5番にしてしまえばいいのです。賢い(?)
この方法でも全体の番号を変えず、一続きの昇順で番号を与えることができます。
3.まったく違う番号を付番する
番号が一連であるのにこだわる必要性はないかもしれません。全然関係がない番号を付番してしまいましょう。他の駅は番号を変えずに新駅開業です。番号も大きければ大きいほど特別感があっていいですね。
なんていう馬鹿げた提案
3つも案を出しておいてなんですが、こんなもの全部愚策です。こんなことをするなら素直に全線改番しろって話です。
先に話した通り、ナンバリングは駅を識別しやすくするための記号です。わかりやすくするための記号に特例を設ければ本末転倒。せっかくわかりやすい記号を作ったのに、記号を煩雑にしてしまっては意味がありません。
H-05番の次にH-06番が、H-06番の次にH-07番が並んでいるからわかりやすいのであって、「H-05のつぎはH-05-1で、その次がH-06です」なんてしてしまえば、H-06で降りる旅客をひっかけるためのただのトラップでしかありません。
駅ナンバリングは連番だから意味があるんだと。私も以前スリーレターコードが流行ったころに、「じゃあ乗換駅はぜんぶナンバリングを廃止してスリーレターコードだけにすればいいんじゃないか」と思って、声に出したことがあるんです。その時に多くいただいた意見がこの考え方でした。
今回のナンバリング騒動は、新駅開業に合わせてナンバリングをぜんぶ改番するという形が最適解であるはずなんです。だから東京メトロの方策は誤りとは言い切れません。でも東京メトロは1つ、改番を行う手段として大きなミスを犯してしまっています。
周知できていない
変えるだけ変えて、でも全然ナンバリングが変わることを周知できていないのです。
たとえばこちら。東京メトロの英語版ホームページに掲載されているニュースリリースです。
上から順に
「オリンピックのサポーター用のパス発売延期について」
「Greater Tokyo Passの発売について」
「QRコードで切符が買えるようになりました」
「東京メトロと都営地下鉄は共同でマナー啓発キャンペーンをします」
「BebotというAIチャットを試験導入します」
それ以降はもう昨年秋の時期のプレスになっているので割愛しまして。
ナンバリングって海外の旅行客向けに設定されたはずなんです。でもどこにも、一言もそんなこと、英語版のサイトにわかりやすく書かれていません。
外国人観光客向けに整備した記号のルールが変わるのであれば、大々的に周知徹底してしかるべきです。ホームページのトップで案内を行い、全列車のドア上路線図に6/6からナンバリングが変わることを明記するのが当然の義務のはずです。
それを怠ったのは確実に東京メトロの非であり、今後同じように改番する場合には改めなければいけない点でしょう。
これが今回の騒動に関する私の意見です。総括すると
・ナンバリングを改番すること自体は妥当と言える
・でも変更することが周知徹底できていない。周知に取り組まなかったのは確実に東京メトロの失敗
また同じような改番騒動があれば、事前から執拗なくらいに公表があるといいですね。