アナウンスで関係詞を復習する(関係代名詞・関係副詞)

今回は、駅や車内のアナウンスから関係詞を実践的に学んでみましょう。

 

 

はじめに(1):関係詞って?

まずは、関係詞とは何かをおさらいしておきましょう。関係詞として習う内容は大きく分けて2つ。まず中学3年生で学習する「関係代名詞」、そして高校で学習する「関係副詞」です。

 

関係詞の役割は、2つの関連した話題を話している文をつないで、1つの文にするというものです。たとえば、

「私は犬を飼っています」 
「その犬の名前はポチです」 

→「私は、ポチという名前の犬を飼っています」

通じますよね。

 

このノリで

I have a dog.
The name of the dog is Pochi.

→I have a dog whose name is Pochi.

とつないでしまうのが関係詞です。下線部の部分が同じ話題を指している単語、赤太字が関係詞になる部分、太字部分が文をつなげるときに、もう片方の文に吸収された節です。

 

関係詞にはポイントがあり、

①例外を除き、直前に修飾される単語(先行詞という)が来る

②2つの文をつなげるときに、被った単語は消す

というルールがあります。

 

「私はを飼っており、そのの名前はポチです」ではなくて、

「私は、ポチという名前のを飼っています」のように、被った単語は消すというものです。

 

はじめに(2):関係代名詞と関係副詞の違い

関係詞がなんぞやとある程度分かったところで、次に関係代名詞と関係副詞の違いをみていきたいのですが、

関係詞の選別は、文型(S, V, O, C)の区別がきちんとできないと非常に難しいです。特に主語と目的語だけははっきり区別できる必要があります。これを念頭に置いてこの章を読んでください。

 

The train which is stopping at track 3 is not in service.

3番線に停車中の電車は、回送です。

これは関係代名詞です。

 

The train which I want to take the most is Twilight Express Mizukaze.

自分が一番乗りたい電車は、トワイライトエクスプレス瑞風号です。

これも関係代名詞です。

 

This is Osaka station where this train terminates.

この駅は、この電車が運転を終える大阪駅です。

これは関係副詞です。

 

All trains which have "rapid" in their names stop at limited stations.

"rapid"と名前に含まれているすべての列車は、一部の駅にしか停まりません。

これは関係代名詞です。

 

All trains whose names have "rapid" stop at limited stations.

名前が"rapid"を含むすべての電車は、一部の駅にしか停まりません。

こう書いても関係代名詞なんですね。

 

This is the reason why the Kosei Line is suspended many times in winter.

これが、冬に湖西線が何度も運転見合わせになる理由です。

これは関係副詞です。

 

 

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見分け方はいかに。

 

これら関係詞が入った文でそれぞれ文型をとります。また、先述したように関係詞は2つの文をつないでいる文法であるため、2つの文に戻してみます。

 

主語を赤字、動詞は青字、目的語は橙字、補語は緑字で示しますと、

 

The train which is stopping at track 3 is not in service.

3番線に停車中の電車は、回送です。

 

The train is not in service.

この電車は回送です。

 

The train is stopping at track 3.

この電車は3番線に停車しています。

 

1つめの文では、This trainを話題の中心として、2つの文をつないでいることがわかります。これは主語が省略された関係代名詞になるため、主格といわれます。

 

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The train which I want to take the most is Twilight Express Mizukaze.

自分が一番乗りたい電車は、トワイライトエクスプレス瑞風号です。

 

The train is Twilight Express Mizukaze.

その電車はトワイライトエクスプレス瑞風です。

 

I want to take Twilight Express Mizukaze the most.

私はトワイライトエクスプレスに一番乗りたい。

 

2つ目の文では、Twilight Express Mizukazeを中心に2つの文をつないでいますね。

この文では、目的語「~に」「~を」にあたる部分が省略されています。なのでこれは関係代名詞の目的格と言われます。

 

あとついでに思い出してみましょう。関係代名詞の目的格では、関係代名詞を省略することが可能でしたね。

 

The train I want to take the most is Twilight Express Mizukaze.

自分が一番乗りたい電車は、トワイライトエクスプレス瑞風号です。

 

名詞に名詞が続けて出てきているのが分かりますでしょうか。明らかに文法的におかしいですよね。

このように省略されていることが分かるという理由で、目的格の関係代名詞は省略することができます。

 

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This is Osaka station where this train terminates.

この駅は、この電車が運転を終える大阪駅です。

 

This is Osaka station.

この駅は大阪駅です。

 

This train terminates at Osaka station.

この電車は大阪駅で運転を終えます。

 

3つ目、関係副詞の文です。

この文では先ほどまでと違い、主語も目的語も消えていません。消えたのは前置詞at+名詞の前置詞句のみであり、文の主となるS, V, O, Cはそのまま残っていることが分かります。

 

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All trains which have "rapid" in their names stop at limited stations.

"rapid"と名前に含まれているすべての列車は、一部の駅にしか停まりません。

 

All trains stop at limited stations.

すべての電車は一部の駅にしか停まりません。

 

Trains have "rapid" in their names.

電車は"rapid"を名前に含む。

 

4つ目、関係代名詞の文章では、主語が2つから1つに減っています。

 

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This is the reason why the Kosei Line is suspended many times in winter.

これが、冬に湖西線が何度も運転見合わせになる理由です。

 

This is the reason.

これが理由です。

 

The Kosei Line is suspended many times for the reason in winter.

湖西線は、そういう理由で冬には何度も運転見合わせになります。

 

6つ目の文章も関係副詞ですが、3つ目の文と同様にS, V, O, Cが1つも減っていません。消えたのは前置詞for+名詞であり、S, V, Cのくくりはそのまま文に挿入されていることが分かります。

 

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以上からわかるように、簡単に関係代名詞と関係副詞の違いをまとめると、S, V, O, Cが消えたか、消えていないかです。

 

関係代名詞は「代名詞」というくらいですから、which, who, that, whomやwhoseが名詞の代わりとして働きます。その代わり、文の中から名詞か代名詞が1つ消えます。

主語「~は」「~が」が消えたら主格、
目的語「~を」「~に」が消えたら目的格、
所有代名詞「~の」(my, your, his, her, their, itsなど)が消えたら所有格です。

 

一方の関係副詞は「副詞」です。副詞とは、S, V, O, Cに関係がない、つまり「誰が何にどうした」を理解するのに関係がない文のパーツのことです。関係副詞では、たいてい副詞句(前置詞+名詞)がセットで1つ消えます。逆にS, V, O, Cのセットは、つなげてもそのまま残る文が多いです。

 

先行詞ごと省略して、さらにS, V, O, Cのどこかを消し去るというイレギュラーな関係代名詞whatや関係副詞の用法もあるんですが、その辺は今回の記事で紹介できないので割愛しますね。

 

では、実際に電車のアナウンスで活用されている事例を見てみましょう。

 

関係代名詞 主格"who" / JR西日本 快速車内放送

youtu.be

 

Attention, please. For the comfort of passengers who may find the air conditioning too cold, this train has mildly air-conditioned cars with a temperature one or two degrees Celsius higher than other cars.

ご案内します。空調が寒すぎると感じるお客様のために、この電車には、他の車両よりも温度が摂氏1~2度高い弱冷房車両があります。

 

The mildly air-conditioned cars are indicated by stickers both inside and outside of the cars. Please choose the type of car you prefer.

弱冷房車両は、車内・車外両方にステッカーで示しています。お好みの車両をお選びください。

 

comort ... 快適

air conditioning ... 空調・冷房。クーラーのことはair conditionerと言います。

mildly air-conditioned car(s) ... マイルドに冷房された車=弱冷車

indicate(d) ... 指し示す。ここでは「指し示された」

prefer ... (より)好む。今回は「弱冷車」と「通常の冷房がかかっている車両」を比較して、どちらか「より」好きな方を選んでね、というニュアンスでpreferが使われている

 

 

For the comfort of passengers who may find the air conditioning too cold,

空調が寒すぎると感じるお客様のために、

 

For the comport of passengers,

お客様の快適さのために

 

Passengers may find the air conditioning too cold.

空調が寒すぎると感じられるお客様

 

まずは基本的な関係代名詞主格をおさらいしましょう。これが一番簡単な形で、主語をくっつけて修飾しています。先行詞(関係代名詞の手前)が人ならthatかwho。これは大丈夫ですかね。

 

関係代名詞 主格"that" / 近鉄 車内自動放送

 

In order to maintain a comfortable environment, when done with newspapers and cans, please dispose of them in the garbage cans that can be found in every station.

 

快適な空間を維持するため、新聞やカンが不要になりましたら、それらを各駅に設置してあるごみ箱に捨ててください。

 

先行詞の手前が人ではなければ、thatかwhichを使います。今回はthatが使われている文章です。

 

ところで、この文章ちょっとおもしろくて、意味の違うcanが3つも一文中に出てきているんです。

(空きカンの缶を表すcans、ごみ箱の「はこ」を表すcans、そして「~できる」という助動詞のcan)

 

関係代名詞 目的格の省略 / JR西日本 快速車内放送

Attention, please. For the comfort of passengers who may find the air conditioning too cold, this train has mildly air-conditioned cars with a temperature one or two degrees Celsius higher than other cars.

ご案内します。空調が寒すぎると感じるお客様のために、この電車には、他の車両よりも温度が摂氏1~2度高い弱冷房車両があります。

 

The mildly air-conditioned cars are indicated by stickers both inside and outside of the cars. Please choose the type of car you prefer.

弱冷房車両は、車内・車外両方にステッカーで示しています。お好みの車両をお選びください。

 

さて、弱冷車の放送2度目の登場です。実は↑の文章には、関係代名詞が2つ存在します。先ほど紹介した主格のwhoのほかに、関係代名詞が省略されている文が1つだけ存在します。どれかわかりますか?

 

 

 

 

 

 

 

答えはここ。

 

Please choose the type of car you prefer.

 

あれれ~~? おかしいですね。名詞句"the type of car"の後ろに名詞"you"が続いて出てきています。

これこそが目的格の関係代名詞省略です。

 

省略せずに表記した場合と、分解は次のようになります。

 

Please choose the type of car that(which) you prefer.

お好みの車両をお選びください。

 

Please choose the type of car.

車両のタイプをお選びください。

 

You prefer the type of car (to the other).

(もう一方よりも)あなたがより好む車両タイプ。

 

補足:摂氏と華氏

a temperature one or two degrees Celsius higher than other cars

他の車両よりも摂氏1~2度高い温度

 

この表現がちょっとおもしろいなと思ったので触れておきます。

 

温度の単位は、ほぼ全世界共通で「摂氏」という単位が使われています。水を基準にし、凍り始める温度を0℃、沸騰し始める温度を100℃とした、理科で習うアレです。

ところが例外になる国がいくつか存在します。その筆頭が独自単位が大好きなアメリカです。アメリカを中心とした欧米の一部の国では「華氏」という単位を使っており、華氏では、水が凍り始めるのは32℉、沸騰する温度は212℉となっています。

 

摂氏と華氏では温度の開きがあるため、JR西日本のこの放送では、わざわざ「摂氏」1~2℃違うよ、と単位を明確に放送しています。

 

関係代名詞"whose" / 近鉄特急 喫煙車両の案内(2020年1月で放送使用停止)

youtu.be

The smoking cars are cars number 1 and 5. For passengers whose seats are in car number 5, when smoking, please do so in the designated smoking room.

喫煙車は1号車と5号車です。座席が5号車にあるお客様につきましては、喫煙の際、指定された喫煙ルームでお吸いください。

designate(d) ... 指定する。ここでは「指定された」

 

 

分解すると、次の2つの文が繋がっていることになります。

 

For passengers, when smoking, please do so in the designated smoking room.

お客様に置かれましては、喫煙の際、指定された喫煙ルームでお吸いください。

 

Their seats are in car number 5.

お客様の座席は5号車にある。

 

これは所有代名詞「~の」が消えた形です。

「(一部の)お客様は、指定された喫煙ルームでお吸いください」
「座席が5号車にあるお客様」

→「座席が5号車にあるお客様は、指定された喫煙ルームでお吸いください」

 

ちなみにこの放送は、近鉄特急に喫煙車(座席でタバコが吸える車両)が残っていた当時に流れていた放送で、現在は喫煙車自体が廃止されてしまったため、聞くことができなくなりました。

 

関係副詞"where" / 近鉄 平城宮跡の観光案内

youtu.be

We highly recommend visiting the Heijo Palase Site where you will be able to feel the atmosphere of the Nara period.

奈良時代の雰囲気を感じられる平城宮跡への来訪を強くお勧めします。

atmosphere ... 空気

 

場所を表す関係副詞whereを用いた例文です。分解すると、次の2つの文が繋がっていることが分かります。

 

 

We highly recommend visiting the Heijo Palase Site.

平城宮跡の来訪を強くお勧めします。

 

You will be able to feel the atmosphere of the Nara period at Heijo Parase Site.

平城宮跡奈良時代の空気を感じることができます。

 

関係副詞は前置詞+名詞の句をセットで消します。ここでもきれいにS, V, O, Cがそのまま残り、前置詞句が消えていますね。

 

関係副詞"where"と、関係代名詞"that"の混合文 / 近鉄特急 青の交響曲

この記事の最後。関係副詞と関係代名詞が両方入った文です。

 

 

youtu.be

A lounge where you can freely enjoy refreshments and the bar counter that sells sweets, drinks and original goods are located in car number 2.

軽食を自由に楽しめるラウンジと、スイーツ・お飲み物・オリジナルグッズを販売するバーカウンターは、2号車にあります。

*動画内字幕ミスがあります(feel→freely)

 

分解すると、次の3つの文が繋がっていることになります。

 

主になる文

A lounge and the bar counter are located in car number 2.

ラウンジとバーカウンターは2号車にあります。

 

"a lounge"を修飾する節

You can freely enjoy refreshments at the lounge.

ラウンジでは、軽食を自由に楽しめます。

→S, V, Oはそのまま、前置詞+名詞が消えているので関係副詞

 

"the bar counter"を修飾する節

The bar counter sells sweets, drinks, and original goods.

バーカウンターはスイーツ・お飲み物・オリジナルグッズを販売しています。

→主語が消えているので関係代名詞

 

関係詞の基礎がつかめなかったら、まず覚えてほしい例文がこれ。文をつなげる時に消えている単語がどこなのかをつかむのにぴったりです。

 

練習問題

それでは最後に練習問題です。カッコ内に適切な関係詞を入れましょう。

 

For passengers using a smoking room: as the train has passed through the section (   1   ) the use of smoking room is prohibited, the closing ropes have been removed, and smoking rooms are now available for those (   2   ) wish to smoke.

近鉄 伊勢志摩ライナー 車内放送 一部改変)

 

 

 

 

和訳を知りたい方はこちら↓

 

 

喫煙室をご利用のお客様へ:電車が喫煙室の利用が禁止されている区間を通り過ぎましたので、閉鎖していたロープが取り除かれ、喫煙したいお客様が喫煙室を利用できるようになりました。

 

 

 

 

 

答えは以下です↓

 

1. where

関係副詞のwhereが入ります。

 

as the train has passed through the section
the use of smoking room is prohibited in the section.

→as the train has passed through the section where the use of smoking room is prohibited

 

先行詞は場所を指すthe section「区間」、そこに「喫煙室の利用が禁止されている」というS, V, O, Cの欠けがない文章が入っていることから、省略されている単語は前置詞+名詞のセットであると推測できます。

 

2. who

関係代名詞主格のwhoが入ります。

 

smoking rooms are now available for those
those wish to smoke.

→smoking rooms are now available for those who wish to smoke.

 

thoseは不特定多数の人を指す単語で、関係詞や分詞修飾では頻出です。

 

この問題のポイントは、かっこのあとに動詞が続いていることでした。英語の文は主語、動詞の順に単語が来ることから、主語にあたる部分が欠けていると考えられるので、関係代名詞一択です。

 

今回はここまで。それではまた。

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