こんなよくある作り話のような話、信用されないかもしれませんが、これから話す出来事はすべて実話です。
「どうせ作り話だろ」みたいなノリで読んでいただいてもかまいません。自分もすこし逃げているといえば逃げていることですから…
事件が起こったのは7月7日。七夕の日でした。7時半ごろに、小学校のころからの友人からかかってきた電話から事件は始まりました。
「なぁ、ちょっと新大阪きてくれへん?」と、わけのわからない呼び出しが。ちょうどその時はとある動画(これ)の編集作業中だったので、きっぱりと「無理」と返答。するとしつこく「なぁ、たのむから」とどうしても新大阪へ来いと言い張ります。
今まで何度か呼び出しは食らったことはありますが、ここまで執拗(しつよう)だったことは無く、とりあえず事情を聴いてみることに。
すると、「インターネット上で知り合った子がお金が足りないから帰れない。なんとかお金を貸してあげれないだろうか」というものでした。
「で、どこまで?」
「東京の大宮」
…は?
なんとか「電車で帰りたい」というので、とりあえず調べてみることに。
イチかバチかで席をとるように指示しましたが、どうも埋まってしまっている様子。
時刻は8時。すでに高速バスの予約も終わっています。そんな状況で「予算は1万円まで」というのを聞かされ愕然。いや、最初からほぼ「詰んでる」じゃん…
すると何を狂ったか友人「矢田に一回帰るわ!」と言い出しました。
「俺の家泊めると来ないぞww」とゆるく断りましたが、本当に帰ってきそうな様子。
念のためで携帯を肌身離さず持つようにしましたが、案の定それから3時間ほど経った23時過ぎに電話がかかってきました。
風呂に入ろうかという直前で「もうすぐお前の家やから」とわけのわからない宣言が。
とりあえず風呂に入り、出てみるとどうも家の外で出待ちしている様子です。窓からのぞくとそこには携帯画面をのぞきこむ2人が、片方は自転車に乗って家の前にいます。
「なんでお金もってけえへんかったん」(=訳:なぜお金を持ってこなかったの?)などゆるく聞いていき、最後に本心にせまろうかとまずは笑い話から始めていきます。
友人はなぜかお泊り会気分です。「朝までナイトフィーバーしようぜ!」とわけのわからないことを言い出します。
「いや、明日は学校あるからむりやし」
「ええやん!俺は夜間学校やから!」
「それはお前だけやろ?俺は朝早いから。」
なんて笑い話をしつつ、邪魔な友人を排除し、問題の子とどういった事情でこうなっているのかを聞きます。
しかし、相手は何を言っても言葉を濁らせて途中で答えを切り、「泊まらせてほしい」と執拗にせまってきます。おそらく何か隠していることがあるのでしょうか。
仕方ないので友人に変わらせようかとした途端、話が急に変わり、その子の家庭事情の話に。
…どうも話を聞いてると、自分のかかわってはいけない世界の住人のようでした。
両親がお金を借りていること。それを自分が働いて返さなければならないこと。返せなければ近々、人身売買されるということ。明日からは名古屋の知人宅に身を隠そうかと検討してること。
あきれるほど作り話のような内容が、真剣な口調で淡々と話されます。
あまりに衝撃的な内容だったためか、よくは覚えていませんが、おそらくともその時友人も「初めて聞かされた」事実に、唖然としていたはずです。
いきなり聞かされるにしては、高校生には荷の重すぎる話。
「そんな話、高校生の俺に言われてもなぁ…」
「なんとかお願いできませんか?」
そういった会話が20分ほど続きます。
最初から泊める気などなかったのもありますが、万が一その内容が事実だとしたら…
こちらも重々しい話で説得した気がします。友人からしたら、急に聞かされた重々しい話とこちらの「責任を負えない」といった会話でいっぱいいっぱいだったのでしょうか。終始「うん…」「そうやな…」と特に意見のないまま説得が続きます。
最終的に、もしもの場合を考えて友人には「何かあった時に、自分じゃ責任を負えない」といい、5分ほど説得させたところで「じゃあ「親に交渉してもムダやった」って言って納得させるわ。…ごめんな。迷惑かけて」と言い、電話を切りました。
それが7月7日 23時半をまわったころの出来事でした。
──それ以来、その友人は音信不通になりました。
友人の姿を見たという話も聞きません。
あの夜、友人に何があったのかは、このまま知らされないのでしょうか…