この記事では、列車種別を英語に訳すための英語表現をまとめています。
営業列車
基本表現
local train「普通電車、各駅停車」
各駅に停まることを強調するため、ロンドン地下鉄や韓国など一部の国、地域では"all stop service"もしくは"all-stations"「全駅に停まる列車=各駅停車」と意訳されることも。
rapid train, rapid service「快速電車」
express「急行」
limited express「特急」
overnight train, through night train, night train「夜行列車」
それぞれ頭につけると意味を変えるもの一覧↓
"semi-", "sub-"「準」
semi-express train「準急電車」
sub-express train「準急電車」
☑ハイフンを忘れずに。
"section", "regional", "suburban"「区間」
regional rapid service「区間快速」(JR西日本)
suburban semi-express「区間準急」(近鉄)
"section"は単純に「区間」と言う意味。"regional"は「特定地区の」、"suburban"は「近郊区間の」。列車の運行形態によって使い分けたいですね。
"commuter"「通勤」
commuter rapid service「通勤快速」
*"commuter"は正確には「通勤者の」という意味
"special"「特別」
special rapid service「特別快速」
*JR西日本の「新快速」も"special rapid service"と案内されています。
そもそも「新快速」の「新」とは、もともと設定されていたふつうの快速と比べた「新」であったわけですが、すでに新快速が「新しい快速列車」としてではなく最速達列車としての知名度を得ているため、普通の快速ではないと意訳して「特別快速」としていると考えられます。
"sleeper" "sleeping"「寝台」
sleeper limited express「寝台特急」
sleeping limited express「寝るための特急=寝台特急」
"special" "extra"「臨時の」
extra rapid service「臨時快速」
special express「臨時急行」
specialは「普通のものではない」=「特別」という意味を持ちます。臨時列車は定期列車ではないことから、specialを用いても臨時列車であると表すことができます。
extraは「余分の」とか「追加の」という意味を表します。「増便」的な意味合いだとextraの方が向いていると言えます。
【コラム】"train"と"service"の違いは?
JR西日本・JR北海道では、普通電車は"local train"、快速電車は"rapid service"と訳しています。"train"と"service"を区別しているように見えますね。
JR東日本は普通電車を"local train"、快速電車は車内放送では"rapid service train"、駅放送では"rapid train"としており、どれも"train"で終わるように案内。
JR東海は(名古屋駅の放送しか確認していませんが)普通電車をほかのJR各社と同じく"local train"と流すのに対し、快速はtrainもserviceも付けず"rapid"単体で案内します。
JR東日本以外の用例を見る限りtrainとserviceに区別があるように見えますが、実はほぼありません。
ニュアンスを含めて訳すと、trainは「電車」、serviceは「便」という意味。つまりrapid serviceは「速達便」という意味であり、rapid trainとしても「速達電車」となるだけですから問題ありません。
(そもそも「快速」とは日本語固有の表現であり、キチっと当てはまる英訳は存在しないので、意訳するしかないのです)
これを含めて各社の案内を振り返ってみましょう。
JR西日本や北海道は"rapid service"という国鉄時代からの表現を引き続き採用しているだけで、別に普通電車だから"train"、快速だから"service"と区別しているわけではないことがわかります。
JR東日本の車内放送で聞くことができる"rapid service train"とは「速達便電車」という意味になってしまうことから、少しまどろっこしく感じられますね。
JR東海は快速を「速達の」としか言っていない状態であり、意味は分かるにしても文法的には誤りと言えます。
ワンマン列車
ワンマン列車は単純に"one-man train"でO.K.
「運転士しかいない」ことを強調するなら↓のような表現を使いましょう。
"driver-only train", "operator-only train"「運転士だけの列車」
"conductorless train"「車掌のいない列車」(JR西日本)
文章で言いたい時は次のように言います。
This train has no conductor.「この電車に車掌は居ません」(JR西日本)
「この電車は奈良行きワンマン運転の普通電車です」のように、一文で種別に加えて「ワンマンの」と言いたいときは"one-man-operated"を種別の前に付けると分かりやすいですね。
This is a one-man-operated special rapid service bound for Maibara.
非営業列車
not in service, out of service, deadheading train, not taking passengers「回送電車」
not in service=「非営業」
out of service=「営業外」
deadheading train=「回送中」
not taking passengers=「お客様を載せない(列車)」
と言う意味。
「回送」を直訳すると"deadheading train"となります。ただ、それよりも「乗られへんで」(not taking passsengers)とか「営業外やで」(our of service)と言った方が伝わりやすいので、控えるべきとは言いませんがほかの選択肢を考慮した方が吉です。
Osaka Metroでは、当駅止まりの電車は「ドアを開けるが乗れない」ので"not taking passengers"、単純な回送はドアを開けないので"out of service"と区別しています。単純で分かりやすく、かつ面白い取り組みで好きです。
freight train「貨物列車」
shunter, switcher「入換のための機関車」
reserved train, chartered train「団体貸切列車」
駅の表示では"group"や"party"などの表記で案内されていることもありますが、あまり適切ではありません。
*ちなみにJR西日本は、駅表示では"group"という案内を使いますが、案内放送では"(the train is) reserved for special group travel."「グループ旅行のために貸し切られている電車」と流していたり。
test run, trial run「試運転」
test runは「性能を試すための試運転」、trial runは「実験的な試運転」とちょっとだけニュアンスが違います。でもそんな区別どっちでもいいので好きな方を使ってください。
training train「訓練列車」
体を鍛えることを「トレーニング」(training)というように、訓練することは英語で"train"という動詞を使います。
breakdown train, accident relief train, wrecking train「救援列車」
ただし、動力が故障したために動けなくなった列車を後ろから押すための列車と言うよりは、脱線事故現場などに向って、車両の撤去や線路の補修をするためのクレーンなどを積んだ特殊車両を指す意味合いの方が強い。
construction train「工事列車」
線路の補修などを行う列車のこと。
当駅止まり
(駅名) is the final destination for this train.「(駅名)がこの電車の終点です」(駅名には当駅の名前を挿入)
A train terminating at this station「この駅止まりの電車」(JR名古屋駅)
実際に流れている放送文ではこの2つと、「回送」の項目で紹介したOsaka Metroの"not taking passengers"などがあります。
個人的には"not taking passengers"推しです。
電光掲示板に表示する際には"Terminating here"(ここ止まり)などが良いのではないでしょうか。
海外の事例を見てみよう
海外では、鉄道は基本的に長距離列車が中心であり、日本のように1つの都市圏内を結ぶ短距離輸送は、地下鉄路線などが担っていることが多いです。
ここでは、性質が似た海外の地下鉄路線でどういった種別案内が行われているかを紹介します。
アメリカ・ニューヨーク市営地下鉄
▲公式の路線図
▲「Service variants」の項を参照
▲急行電車の車内放送例
▲急行の上位種別である「超急行」"Super Express"。臨時で運転される列車。
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24時間運転を行っていることで有名なニューヨーク市営地下鉄では、一部路線において急行運転を行う列車があります。
急行運転を行っている路線では、普通電車は "local train" もしくは "local service" 、急行電車は "express train" もしくは "express service" と区別されています。日本の種別訳とかなり近いですね。
発車標では、枠の都合上3文字しか表示できない場合、普通電車は ”LCL” 、急行電車は "EXP" と案内されます。
また、臨時で運転される7系統の急行列車で、一部急行が停まる駅を通過する場合、種別が超急行 "super express train" となります。
ちなみに "super express" という単語は、日本では「超特急」としばしば訳されることがあり、新幹線の車内放送でも聞くことができる表現です。
一部区間のみを折り返し運転を行う電車は、 "shuttle train" 「シャトル」と案内されます。
イギリス・ロンドン地下鉄メトロポリタン線
▲「Service」の項を参照
▲「Semi-fast」(準急・準快速)電車の車内環境音。00:23ごろから始まる放送で、"This is the semi-fast Metropolitan Line service to Watford." 「この電車はメトロポリタン線のワトフォード行き準急です」と言うアナウンスが流れます。
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メトロポリタン線では、日本語の各駅停車に当たる "all-stations service" 、準急・準快速に当たる "semi-fast service" 、急行・快速に当たる "fast service" の3種別が運転されています。
各駅に停まる電車を各駅停車と訳しているところに注目です。
韓国・ソウルメトロ9号線
▲「運行」の項を参照
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韓国の地下鉄でも、一部の路線で急行運転を行っているところがあります。
普通電車は "all-stop train" 、イギリスと同じく「各駅停車」と訳す方式です。急行は "express train" と訳されています。
台湾・台鉄(台湾鉄路管理局、台湾の国鉄)
▲「Services」の項を参照。
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台湾では日本同様に、地下鉄ではない一般的な鉄道路線で、遠近分離を目的とした種別分けを行っています。
普通電車は "local" 、快速電車に当たる電車は "local express" と案内されています。
快速電車は列車ごとに停車駅が違います。東海道新幹線の「ひかり」に近いイメージです。
それより上位の優等列車は種別が全て "express" で、列車名がついています。基本的には "express" ですが、一部優劣をわかりやすくするために、"semi express" や "limited express" のように案内される場合もあります。
たとえば "Puyuma Express"「(急行)普悠瑪号」、"Tze-chiang limited express"「(特急)自強號」のような形です。
海外事例をみて
海外の事例からわかるように、日本のように複雑な種別体系をしているところは皆無で、種別を2,3個に抑えていることが分かります。
ただしこの差は、日本と海外で種別の考え方が違うために起きているものです。
実は、単純な種別分けに加えて、名鉄よろしく時間帯によって特別停車・特別通過を行う事例が山ほどあり、特にニューヨーク市営地下鉄は顕著です。
また先に触れた通り、台鉄の快速に当たる "local express" も、列車により停車駅が違うという曲者です。
"local express"については、単に「全車自由席の"local"より速い電車」としか認識されておらず、日本のように「この種別だから停車駅はここだ」という認識は薄いようです。
京阪電車のように1駅程度の停車駅の違いでも種別を分けて、6つも7つも列車を区別するか、多少の違いは誤差として時間帯による停車・通過で案内するかは、悩ましいところです。
大切なのは「直訳すること」ではなく「伝える」こと。
ここまでさまざまな訳語をご紹介しました。架空鉄道の表示を作るために訪れる方も多いでしょうから、そういった方向けにアドバイスを残しておきます。
種別の英語表記を考えるうえで大切なのは「相手に伝える」ことです。
たとえば電光掲示板に「wrecking train」(救援列車)と表示されていて、意味が分かりますかということです。結局乗れないのでしたら「Not in Service」と表示していても同じですよね。
区間急行を「regional express」(近郊区間の急行)と案内するよりも、急行より下級の種別だからと「sub-express」(準急)と案内した方が、わかりやすい場合もあります。
いくら正確な訳が提示できても、大多数の人に伝わらなければ意味がないのです。架空の表示や案内を考える際には、そういう伝えるための配慮を踏まえて、英訳を考えてみてください。